知人の息子がギャンブル依存症だ。自分の稼ぎだけでは足らずに、妹の結婚資金を始め、家族の預貯金まで手を出してしまう。競馬で一度だけ大当たりをしたのが不幸の始まりだった。「あの快感をもう一度!」……ギャンブルはしかし繰り返せば繰り返すほど負けがこむのである。保険もそうだが、確率の計算に長けた連中が巧妙に仕組んでいる商売なのだから仕方ない。知人はどうしたものかと悲嘆に暮れていた。「もう二度としません」、息子は破綻するたびに誓うのだが、またすぐにもとに戻ってしまう。「まさか一日中監視しているわけにもいかないし……」
ギャンブル法案が成立しそうである。安部首相言うことには「成長戦略の目玉」だとか。そこには「ギャンブルに溺れる奴が悪いのであって、ほどほどに楽しむ範囲であれば何ら問題は生じない、ギャンブル自体が悪いということにはならない」そんな認識があるのだろう。庶民感覚ではそうかもしれない。自分も浪人時代はパチンコをやっていたし、競馬をやったこともある。因果に追われる生活の中で、つまり努力すれば報われ、しなければ取り残されるという退屈な世界にあって、偶然に身をまかせるというのはある種の開放感を与えてくれる。必然はうんざりなのだ。偶然万歳である。じゃあ、法案も通っていいじゃないかと思われるようなものだが、道徳云々ではなくてそこに嗅ぎ取られる腐臭がたまらなく嫌なのだ。若者の退廃は未来へつながる香りがするが、老人の退廃には死臭がつきまとうばかりだ。
議員立法だそうだが、どうせこんな会話から始まっているに決まっている。
A議員「いやぁ、先日はベガスのカジノで大枚はたいてしまったよ。スロットマシンで3本、ブラックジャックで5本、バカラで4本、いやー負けに負けたね。まいったよ。」
B議員「都合120万負けたんですか。豪遊なさいましたねぇ。」
A議員の秘書「先生、単位が違いますよ。」
B議員「えー、1200万ですか……。」
A議員「まあ、大きな声では言えんがね。マスコミにでも知られたら大騒ぎだわい。しかし、日本にもあんな場所があったら楽しめるのになあ。」
B議員「先生、それは是非実現すべきですよ。大体、ウジ虫みたいな奴らが千円、二千円のベースアップであれこれ言う世の中で、先生みたいに1000万をあっさり賭ける男気は英雄のそれですよ。私たちは爺婆の福祉予算をどうのこうのと、いい加減疲れているんですから、ここらでひとつパァっとぶちあげましょうよ。賛同してくれる財界人もたくさんいると思いますよ。」
A議員「そうか。君もそう思うか。日本にカジノ、これまで誰も言い出せなかったことだしね。」
秘書「先生、やはり先生はすごいお人です。ホント、日本の歴史に残る方です。」
……こんな奴らが日本を動かしている。
ギャンブル法案が成立しそうである。安部首相言うことには「成長戦略の目玉」だとか。そこには「ギャンブルに溺れる奴が悪いのであって、ほどほどに楽しむ範囲であれば何ら問題は生じない、ギャンブル自体が悪いということにはならない」そんな認識があるのだろう。庶民感覚ではそうかもしれない。自分も浪人時代はパチンコをやっていたし、競馬をやったこともある。因果に追われる生活の中で、つまり努力すれば報われ、しなければ取り残されるという退屈な世界にあって、偶然に身をまかせるというのはある種の開放感を与えてくれる。必然はうんざりなのだ。偶然万歳である。じゃあ、法案も通っていいじゃないかと思われるようなものだが、道徳云々ではなくてそこに嗅ぎ取られる腐臭がたまらなく嫌なのだ。若者の退廃は未来へつながる香りがするが、老人の退廃には死臭がつきまとうばかりだ。
議員立法だそうだが、どうせこんな会話から始まっているに決まっている。
A議員「いやぁ、先日はベガスのカジノで大枚はたいてしまったよ。スロットマシンで3本、ブラックジャックで5本、バカラで4本、いやー負けに負けたね。まいったよ。」
B議員「都合120万負けたんですか。豪遊なさいましたねぇ。」
A議員の秘書「先生、単位が違いますよ。」
B議員「えー、1200万ですか……。」
A議員「まあ、大きな声では言えんがね。マスコミにでも知られたら大騒ぎだわい。しかし、日本にもあんな場所があったら楽しめるのになあ。」
B議員「先生、それは是非実現すべきですよ。大体、ウジ虫みたいな奴らが千円、二千円のベースアップであれこれ言う世の中で、先生みたいに1000万をあっさり賭ける男気は英雄のそれですよ。私たちは爺婆の福祉予算をどうのこうのと、いい加減疲れているんですから、ここらでひとつパァっとぶちあげましょうよ。賛同してくれる財界人もたくさんいると思いますよ。」
A議員「そうか。君もそう思うか。日本にカジノ、これまで誰も言い出せなかったことだしね。」
秘書「先生、やはり先生はすごいお人です。ホント、日本の歴史に残る方です。」
……こんな奴らが日本を動かしている。