yuzuの記

優しい風に誘われて

少年のおまじない

2017-09-27 09:20:48 | つれづれ

 

 

覚えておられる方もあるでしょうが

彼の始まりから最後まで関わった K君・・・

17歳の時に 体育の授業中貧血を起こして 

先生に付き添われて受診したのが始まりでした。

検査の結果、末血に幼若細胞が見つかって すぐさま骨髄穿刺になり

急性リンパ性白血病が強く疑われ

そのまま入院に・・・

もう昔とは違って 医師は本人にもはっきりと告知します。

「いやあ しゃれにならんわ~ 」

印象に残るK君の第一声でした。

なんでしょうね、K君はおおらかと言うかなつっこいというか

見た目のチャラさとは違って 芯の強い子でしたね。

それから5年生存を目指して 過酷な治療が施され

入退院を繰り返しながら 悲壮感も凹みも見せず

M先生や看護師さんをいじる 明るくお茶目な少年でした。

定期的に行われる骨髄穿刺に 技師として私も毎回部屋に行くのですが

長くなると 気をつけていても自然馴染みになるのですね。

その日も検査の為に部屋に行くと Drが少し遅れて

いつものようにK君が

「なあ OOさん、デートしたことあるん??」

「ん? どして??」

「俺さぁ 自慢じゃないけど まだ1回もしたことないねん」

「そかあ まだまだ若いからこれからよ」

「今年はね 親父が誕生日に1万円くれたんよ。好きなもの買えって」

「そーなんだ、で 何買うの?」

「迷ったけど USJ の入場券2枚買うことにしたよ。小遣い足してね」

「いつか病気が治ったらそれでデートするで~ 」

「そっかあ じゃ目的が出来たからしっかり治さなくちゃね」

「うん これ俺のおまじないなんよ」

その後も繰り返す入退院の中で K君がそのチケットを

使えたかどうかは分からないのですが・・・

 

目標の5年が過ぎて 「やったあ~ ピースやで~ 」

外来受診の時にやってきて得意げでしたね。

あの無邪気でおおらかな少年は その時はもう22歳の立派な若者です。

でも、

6年目に入る前に 彼の闘いは突然終わってしまいました。

 

K君の言葉は いろんな形で私の心にも残りましたが

17歳の少年に教えられた気がしています。

最近、私も来年の誕生日の自分に向けて 手紙を書いてみたりしています。

うかっとしていれば無為に過ごしてしまうけれど

 怠惰な生活にならないよう おまじないです。

 

K君のおまじないは 信じていれば強くいられる と

そういったことだったんだろうな・・と思いつつ。

コメント (4)
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