僕の細道

【となりの山劇】第66話

<樽見鉄道に乗った の巻、その5>

 そういえば先程から車内をカメラを持ってウロウロしている人がいる。あれはおそらくマニアだな。こんな閑散期を狙ってやってくる所がいかにもっていう感じがする。(自分の事は厳重に梱包して棚の上に放置しておきます)

 この列車の扱いは快速なので、本当に小さな駅は通過してしまうが、停車する駅はもともと2両編成程度の長さしかない。だから駅によっては前2両から降りて下さいとか、後寄りの2両から降りて下さいとかいう車内アナウンスがある。その度に通常の乗客は移動を余儀なくされる。

 しかも、一部の車両から降りる時の扉は半自動になっているようで、車外に出る際は自分で開けるのである。話には聞いていたが、自分で扉を開けなくてはいけない。面白がったのは子供達である。駅についてはドアを開けては喜んでいた。ただし、車両全部がホームに収まる場合は、扉は自動で開く。

 機関車に牽引された列車は根尾川に沿って根尾谷の深い山間部を快走してい
く。ここらは鉄橋とトンネルが連続して続き、美しい渓谷を真上から眺めるこ
とができる。車窓の眺めの点では車で走るより断然こちらのほうが上だ。

 根尾谷断層地下観測館がある水鳥駅を過ぎると最後のトンネルがあり、トンネルを抜けるとそこが終点の樽見駅である。その列車は樽見駅で折り返しになり、そのまま名古屋行きとなる。次の発車時間まで1時間弱。特に何処にも行かないで駅周辺を散歩して時間を潰す事にする。子供達は放し飼いである。

 1時間余りの待ち時間で普段は行った事が無い樽見町の集落へ行ってみた。町は桜のシーズンが終了したせいか、やたら閑さんとしているが、時たま古い造りの商店があったりしてなかなか面白い。

 帰りの列車は、結局昨日ここで見た時刻と全く同じ列車だった。乗り込んだのはばらばらと数人。それと、先程のカメラを手にしたマニア君も乗りこんできた。客車の中は相変わらずガラガラだ。

 出発までの時間の間に機関車を付け替えた列車は時刻通りに発車し、同じ線路を今度は大垣方面に走り出した。私はハイライト部分の谷汲口までは意地で起きていたが、その先は不覚にも眠ってしまった。ノロノロ走る列車の適度な振動がなかなか気持ちいいのだ。

次号に続く


copyright by<山ひげ>無断転載掲載を禁じます
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「胃次元」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
1998年
1997年
1996年
人気記事