たぬきの美術研究室

たぬきによるたぬきのための、美術の考察だったり好きなものを紹介したり日常についてつらつら語るための場所。

森村泰昌「まねぶ美術史」展レポート

2011-05-20 | 展覧会

ご無沙汰してました(今後何回も言うであろう台詞・・・)。

今回は初の展覧会レポートをしたいと思います。

 

行ってきたのはタイトルにもありました、「まねぶ美術史」展です。

「まねぶ」とは、本展覧会の主役である現代美術家の森村泰昌氏が作った言葉。

「学ぶ」と「真似る」を合わせた言葉です。“真似るを通じて学ぶ”ことを「まねぶ」と表現しています。

展覧会のキャッチコピーは、「美術をこころざす少年、必見!」。

その言葉通り、かつて美術部に所属していた人、または今まさに所属している人は

この展覧会をみたら、懐かしさや、彼に対しての親近感がわいてくるのではないかと思いました。

 

というのも、展示されている作品の多くは、森村氏が美術をこころざす学生だった頃の作品なのです。

リングノートをちぎった紙や、小さな紙の切れ端、プラスチックの下敷きに描かれた

国内外の名画を「まねた」、でも本物とは何かが違うオリジナル作品たち。

そして、その横に見比べるように展示された「お手本」になった名画の数々。

当時、彼がどの作家のどんな作品に影響されていたのかがはっきり読み取れるような展覧会になってました。

そして、美術に真正面から向き合っていた頃の思い出を語るように、作品タイトルの横に示されたコメントが、なんだか良い。

 

下敷にマーカーで描かれた線画である

下敷は最初から汚れていた

 

そこがよかった

 

(森村泰昌著、「まねぶ美術史」(赤々舎)より抜粋)

 

添えられた言葉のひとつひとつがとても素敵だったので、図録も買ったんですが

「森村泰昌」が美術家として誕生してから現在に至るまでを綴った「記録史」のように感じました。

現代美術家って何考えてるのかよくわからない・・・って方は、

森村氏の作品に触れてみることをオススメします。

彼の作品や、彼の言葉に耳を傾けてみると、なんとなく分かってくる、かも。

 

ちなみにその展覧会で図録と一緒に買った『踏みはずす美術史』(講談社現代新書)も、

森村氏が何を思って作品に挑んでいるのかがよく分かるので、彼の作品を見てから読むことをものすごくオススメします。

 

「まねぶ美術史」展は、現在ふくやま美術館で開催中です。

この展覧会は各地を巡回しているようで、昨年高松市美術館からスタートし、岩手県立美術館、高岡市美術館を経て北九州市立美術館分館への展示を予定しているようです。

今後の巡回予定が思うように調べられなかったのですが、

少なくとも北九州市立美術館での展覧会はまだ行ってないようですので

お近くの方は見かけたら是非足を運んでみてくださいね。

 

 

 

<たぬき>