電子書籍作家 夢野美鈴のブログ

美鈴の日常や思ったことを書いて行きます。

歴史に残る大長編ドラマ

2015年09月23日 20時04分22秒 | 日記
レンタル屋さんで借りて全部を視聴するのは大変な時間が掛かりますが、名作を観る時の参考になればと思います。
ドラマの批評については、拙著『物語の創作バイブル』の視点から眺めてしまう癖があることを御了解下さいませ。


 男はつらいよ


通称「寅さん」と言われますが、「男はつらいよ」のシリーズという言い方をする人は誰もいません。
「ノッポさん」を「できるかな」という番組名で言わないのとどこか似てます。
キャラクターが強いとタイトルを食うのでしょうか。
寅さんは典型的な営業向きのB型で、的屋稼業で全国を渡り歩きながら、誰とでも調子良く話を合わせます。
でも尊敬できる点は、老人に対してとても温かいことです。
女性に対しては中身がないせいか、深く付き合うことができません。
だから毎回マドンナとは当たらず触らずの関係で別れて行きます。
本当に寅さんに心から惚れていたのはリリーだけでした。
シナリオも兼任している山田洋次監督は、女性の心理を描くことに長けていると思いました。
寅さんのシリーズは日常と非日常のバランスがとてもいいです。
葛飾柴又という帰るべき日常がありながら、007やルパン三世のような自由な旅気分も味あわせてくれます。
帰って来ると「やあ、労働者諸君!」と言って真面目に働いている人を馬鹿にします。
それでいていつもお金を借りるのは、工場で真面目に働く義弟の博です。
空間的な広がりだけでなく、1969年~1995年という日本の黄金期の移り変わりも感じさせてくれます。


 おしん


おしんで目立つのは、悪党の描き方のうまさです。
登場人物は、本当に日常生活のどこにでもいそうな人達ばかりです。
おしんの父も夫も、どうしようもないロクデナシでした。
田中裕子が日本女性の鏡を見事に演じていますが、佐賀の夫の実家へむりやり連れて行かれ、そこで姑から大変な苛めを受けます。
夫に殴られて右腕が使えなくなり、まともにご飯を食べさせて貰えない栄養失調と、出産時に豪雨の中で放置された事が原因で子供は流産します。
この辺りの苛めの凄さが、視聴率高騰に繋がったのでしょう。
命からがら佐賀を出てからのおしんはちょっと褒められません。
よほど佐賀での洗脳が効いたのか人間性が歪んでしまい、晩年には佐賀の姑と同じタイプの人間へと変貌して行きます。
悪い人間ばかり庇って善人には厳しいという、欧米人には理解し難い日本人独特の精神構造を形成して行きます。
この辺りの過程は、狙って描いているのか非常にうまいです。
おしんを観てつくづく思うのは、苦労というのは本人が好き好んでしている事だということです。
人間、バカバカしいことは拒否しなければなりません。
苦労したと昔話ばかりする人は、苦労を避ける知恵がなかったということで、本来軽蔑されなければならないのです。
「貧乏は人を変える」というセリフが頻繁に出て来ますが、苦労も人を変えます。
主人公のおしん自身がその原則に倣っているところが一番悲しいですね。
でもラストが清々しくて大変良かったので、全て良しというとこでしょうか。
幼年期のおしんでは、中村雅俊がなかなかの好演でした。


 北の国から


1981年から2002年という長い年月に亘り、配役を一切変えず同じキャストのままで、物語の中と現実の時間が同時進行で撮り続けたという点では、これも長編の一つに入るでしょう。
最初は「大草原の小さな家」の日本版を作ろうという魂胆が見え見えでスタートします。
ドラマが終了してからのスペシャル版では、毎回シナリオを書く人が違うのか、ドラマの出来にムラがあります。
全体として展開にリアリティがなく、頭で考えたような筋書きが目立ち、おしんとは見応えも迫力も劣ります。
常に手紙という形式にしないとナレーションも成り立たず、シナリオの手法が素人臭いですね。
それと言葉に脚本家独特の癖があり、それが登場人物みんなに出てしまうのは考え物です。
正直、私はこのドラマを高評価する人がちょっと理解できません。
観始めると何となくそのまま観てしまう、という程度でしょうか。
基本的にシナリオが粗いです。
細かな矛盾はともかく、大筋で面白ければいいだろうという方針のようです。
でも単純に不幸さえ起こせばドラマは面白くなると考えている姿勢は頂けませんね。
作中では農家の数がどんどん減って行き、不幸にする人の数が足りなってしまいそうです。
これを格闘マンガの強さのインフレと同様、不幸のインフレと言うのでしょうか。
主人公、田中邦衛の代表作です。


 デスパレートな妻たち


全8シーズン、180話という大長編です。
このドラマは面白かったです。
基本的には主人公の主婦4人が繰り広げるコメディです。
性格の悪い4人が、時には力を合わせたり、時には敵対して知恵比べをしたりします。
不思議なことに主人公の4人が一番性格が悪く、主人公グループと敵対する他のレギュラーは、それほど憎むべきキャラではないという特徴がありました。
特に、イーディの優しさは印象に残ります。
見所の一つとしては、当初は良妻賢母の鏡だったブリー(写真左上)が、スーザンの元夫カールとアナルセックスをして以降、誰とでも行きずりのセックスを楽しむ女に堕ちて行く転落ぶりが衝撃的です。
また、活々としたウィットやジョークに富んだセリフが大変素晴らしいです。
アメリカのTVドラマはいつも「この人がこんなことをするわけないだろう」というキャラクターのブレが非常に目立ちますが、それを差し引いてもTVドラマ史上に残る名作だと思います。


 大草原の小さな家


毎回一話完結のお話ですが、それでも通して見ると時間はどんどん進んで行きます。
配役を変えないところは「北の国から」と同じです。
子供達は成長し、お父さんは街に住んだり元の場所に帰ったり、設定が変わって行きます。
ウォールナットグローブという小さな田舎町を舞台に、古今東西の定型化された物語をその設定に組み込んで話を作っている感じです。
そういう意味では、シナリオの教科書としてふさわしいと思います。
定住できる場所を探して旅をし、何もない所から家を建てて土地を耕し、ゼロから生活を築き上げる開拓者精神と自然の美しさに圧倒されます。
でも突然役人が現れ、まるで詐欺のように高い税金を吹っかけたりします。
最後は町の人全員が力を合わせ、自分達が築き上げた町を自らの手でぶっ壊し、廃墟にして去ることで、法律を悪用して人の稼ぎをピンハネする連中に一泡吹かせてやります。
国民みんなが団結して税金の支払いを拒否すれば、国や権力者を動かせるのではないかとの示唆を与える壮大なラストでした。
表沙汰にこそなりませんが、日本でもデモ主催者は問答無用で刑務所にブチ込まれるのが日常茶飯事、権力者側から見ると庶民の団結が一番怖いんでしょうね。


 アボンリーへの道


全7シーズンで91話の長編です。
基本的には「大草原の小さな家」と同じで、「赤毛のアン」の舞台になったプリンスエドワード島での日常を舞台に、既に完成された様々な物語のパターンを組み込んで話を作っている感じです。
だから「大草原の小さな家」を観終わった人が、このドラマへ流れて行くパターンが多いです。
「大草原の小さな家」ほど生活は貧しくなく、プリンスエドワード島の人はもう少し裕福で、イギリスの文化を堪能した上品な暮らしをしているようです。
カナダの自然はアメリカより美しいのですが、雪に埋もれている期間が長いのが目立ちます。

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