071:「褪」 冬ざれた 陽だまりの中 空蝉の 如く花立つ 褪せた紫陽花
072:「コップ」 湯上りの コップの水の ひとくち分 脇役サボテン あげて乾杯
073:「弁」 きのこ狩り 籠いっぱいの 馳走より 君と二人の 弁当は楽し
074:「あとがき」 あとがきは 十六夜の月 見届けて 首をよじれば 本題の君
075:「微」 久方の 連弾の椅子 君と僕 譜台に映る 微笑重ね
076:「スーパー」 激震の 地下トロッコで ニュートリノ スーパーカミオカンデの旅路
077:「対」 初対面 たまにはそんな 振りをして 軽く誘って みてもいいかな
078:「指紋」 凍てついた 薔薇の花びら 溶けぬまま 指紋模様の 冬のアリバイ
079:「第」 何気なく 入った店の ピアノ曲 ラフマニロフの 第二番だった
080:「夜」 当直は 君の寝息が 恋しくて デスクをピアノ 見立て弾く夜