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辻元清美に何ができるねん!

辻元清美が有罪判決を受けた身であるにもかかわらず、議員として復活したことに疑問を抱く有志のメンバーで運営しています。

辻元清美判決文全文①

2009-06-09 05:48:38 | 辻元判決文
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1事件番号  :平成15年刑(わ)第2860号
事件名   :詐欺被告
裁判年月日 :H16. 2.12
裁判所名  :東京地方裁判所
部     :刑事第2部

判示事項の要旨:

現職の衆議院議員であった被告人A及び別の衆議院議員の政策担当秘書であった被告人Bが,いわゆる名義貸しの方法により政策担当秘書を採用したかのように装い,その給与支給を受けたという詐欺の事案において,被告人両名に対して執行猶予付きの判決が言い渡された事例

平成16年2月12日宣告 東京地方裁判所平成15年刑(わ)第2860号詐欺被告事件

判決
主文
被告人Aを懲役2年に,被告人Bを懲役1年6月にそれぞれ処する。
この裁判確定の日から,被告人Aに対し5年間,被告人Bに対し4年間,それぞれその刑の執行を猶予する。
訴訟費用はすべて被告人Aの負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人Aは,衆議院議員であった者,被告人Bは,別の衆議院議員の政策担当秘書であった者であるが,
第1 被告人両名は,被告人Aの公設第二秘書であったC及び国会議員政策担当秘書選考採用審査認定者登録簿に登載されていたDと共謀の上,平成8年11月18日ころ,東京都千代田区a町b丁目c番d号所在の衆議院事務局において,同事務局庶務部議員課課長補佐Eらに対し,真実は,単に名義を借用するにすぎず,被告人Aにおいて上記Dを自己の政策担当秘書に採用する意思も採用した事実もないのに,これらがあるように装い,同年10月31日付けで上記Dを被告人Aの政策担当秘書に採用した旨の内容虚偽の衆議院議長あて議員秘書採用同意申請書,議員秘書採用届,履歴書等を提出し,上記Eらをして,その旨誤信させ,よって,別表1記載のとおり,同年11月29日から平成9年3月14日までの間,前後9回にわたり,衆議院から,上記Dの給与支給の名目で,合計448万9304円を同所所在の当時の株式会社F銀行衆議院支店に開設され上記Cらが管理する上記D名義の普通預金口座に振込送金させ,もって,人を欺いて財物を交付させた。
第2 被告人両名は,被告人Aの公設第一秘書であった上記C及び国会議員政策担当秘書選考採用審査認定者登録簿に登載されていたGと共謀の上,平成9年4月10日ころ,上記衆議院事務局において,上記Eらに対し,真実は,単に名義を借用するにすぎず,被告人Aにおいて上記Gを自己の政策担当秘書に採用する意思も採用した事実もないのに,これらがあるように装い,同月10日付けで上記Gを被告人Aの政策担当秘書に採用した旨の内容虚偽の衆議院議長あて議員秘書採用同意申請書,議員秘書採用届,履歴書等を提出し,上記Eらをして,その旨誤信させ,よって,別表2記載のとおり,同月25日から平成10年12月10日までの間,前後27回にわたり,衆議院から,上記Gの給与支給の名目で,合計1425万1222円をF銀行衆議院支店に開設され上記Cらが管理するG名義の普通預金口座に振込送金させ,もって,人を欺いて財物を交付させた。
(量刑の理由)
 1 事案の概要
 本件は,現職の衆議院議員であった被告人A及び別の衆議院議員の政策担当秘書であった被告人Bが,被告人Aの公設秘書であったC及び政策担当秘書選考採用審査認定者登録簿に登載されていたD又はGと共謀の上,上記各認定者の名義を借りる方法により,実際は被告人Aの政策担当秘書として採用する意思も採用した事実もないのに,これらがあるように装い,政策担当秘書の給与受給の名目で,2年余りの間に衆議院から合計1874万円余もの公金を詐取したという詐欺の事案である。
 2 犯行態様の悪質性,結果の重大性について
 (1) 政策担当秘書制度の趣旨及び制度創設に至る経緯
 ア 国会議員政策担当秘書制度は,公設秘書2名のほかに,主として国会議員の政策立案及び立法調査活動を補佐するための秘書として,平成5年5月施行の国会法の改正により創設されたものである。
 イ 上記制度の創設に至る経緯をみると,その背景には,国会議員から,公設秘書を2名から更に増員すべきであるとの要望があったものではあるが,公設秘書の給与は国費で賄われ,それだけ国の財政負担を増大させることから,その増員には国民の理解を得る必要のあることが当然の前提とされており,また,衆議院では,秘書の採用や服務が適正に行われるべきことが議院運営委員会において確認されていた。
 平成3年5月,衆議院議長の私的諮問機関として「国会議員の秘書に関する調査会」が設置され,その審議の結果,国の財政事情が逼迫している状況下において,安易に公設秘書を増員することは相当でないが,議員の政策立案・立法調査機能を高めるために,議員の政策活動を直接補佐する秘書として,政策秘書制度を新たに創設し,秘書体制の質的向上及び議員の政策活動の充実強化を図り,もって,国会審議を活性化し,政治に対する国民の信頼を回復すること,政策秘書は,国会議員の立法準備作業を補佐するため創設されるわけであるから,議員の政策活動を十分に補佐し得る能力と適性を備えた者でなければならず,高度な資格試験に合格した者及び豊富な学識経験を有する者を採用すべきであることが提言された。
 これを受けて,衆議院において,議院運営委員会に秘書問題協議会が設置されたが,そこでは,実態として秘書の仕事を行っておらず,給与を取るだけの名義貸しはいけないということが確認された。
 上記協議会における検討を経て,平成5年4月,衆議院議院運営委員会において,政策担当秘書制度の創設及びその給与に関する国会法等関連2法の改正案が法律案として決定されたが,その際,選考審査による政策担当秘書の採用は,いやしくも国民の信頼にもとることのないよう厳正に行うこととする旨の申し合わせがされている。そして,上記各法案はいずれも同月中に両院の議決を経て成立し,同年5月から施行されたことにより,政策担当秘書制度が創設されたものである。
 ウ かくして,政策担当秘書は,公設秘書の場合とは異なり,国会に設置された政策担当秘書資格試験委員会の実施する資格試験に合格するか,又は各議院に設置された政策担当秘書選考採用審査認定委員会による選考採用審査認定を受けることにより,能力,経験,資格等について一定の社会的評価を受けており政策担当秘書として採用するにふさわしいと判定されて,所定の登録簿に登載された者の中から,採用することとされている。さらに,政策担当秘書の給与は,このように非常に厳しい資格要件が設けられていることに応じて,公設秘書よりも高い給与水準が設定されているのである。
 (2) 犯行態様の悪質性
 ア ところが,被告人両名は,政策担当秘書制度の検討段階から懸念されていたところの,勤務実態の全くない名義貸しという最も悪質な手法を用いて,公設秘書よりも高額な政策担当秘書給与をあえて詐取したものであり,このような犯行は,同制度が国民の信頼を裏切ることのないようにと様々に配慮されて創設されたという前記のような経緯,あるいは議員の政策立案や立法調査作業を直接補佐させるという制度の趣旨を全くないがしろにするものである。
 イ また,政策担当秘書の採用に当たっては,当該議員が所属する議院の議長の同意が要件とされているところ,国民の代表である国会議員が議長あてに内容虚偽の書面を提出することなどあり得ないという信頼の下に,衆議院では,議員秘書の採用事務を担当する事務局庶務部議員課において,原則として書面審査のみを行い,形式上の不備がない限りは,その稼働実態を問わずに受理する扱いとなっていたが,被告人両名は,このような国会議員に対する厚い信頼をも悪用し,平然と内容虚偽の書面を提出することにより本件各犯行に及んだものである。
 ウ したがって,本件の犯行態様は,いずれの点からも,国民の負託ないし信頼に真っ向から背く背信行為であって,悪質というほかない。
 (3) 結果の重大性
 また,被告人両名は,名義を借りる対象を必要に応じて替えながら,2年余りという長期にわたって,合計1874万円余もの多額の公金を詐取したものであり,本件各犯行による財産的被害は甚大である。しかも,被告人Aは現職の国会議員,被告人Bは別の著名な現職の国会議員の政策担当秘書として,いずれも社会的に注目される立場にあったのに,両名が共謀して,本件のような悪質な詐欺事件を敢行し,しかも,その犯行後には,被告人Aが,後にみるように,虚偽内容の弁解をるる強弁するという国会議員としてあるまじき無責任な対応をしたため,国民に強い政治不信を招いたこともうかがわれるのであり,本件各犯行が社会に及ぼした悪影響も深刻なものがあるというべきである。
 3 本件各犯行の目的及び本件詐取金の使途について
 (1) 弁護人らの主張
 ア 被告人Aの弁護人は,本件各犯行当時,被告人Aは,個々の行為の意味は認識していたから,法律的には詐欺の故意があったと評価されてもやむを得ないが,その犯意の内容及び程度を考慮する必要があるとした上,被告人Aには,確定的な詐欺の故意があったものではなく,騙し取るという気持ちは実際のところは全くなかったと思われる,詐欺罪に当たると当初から分かっていたら,するはずもなかったなどと主張する。
 また,被告人Bの弁護人も,被告人Bは,社会的事実関係としては,本件各犯行が,政策担当秘書制度の本来の趣旨に反して許されないものであると当初から認識していたが,国家を騙して金を取るという認識までは抱いていなかったなどと主張している。
 イ そして,これらの主張は,要するに,被告人両名には,政策担当秘書給与を私的に流用する意図がなく,被告人Aは,政策立案のための専門課題に応じた政策スタッフを必要としており,実際に本件詐取金をその人件費に充てていたから,本件詐取金は,結果的に政策担当秘書制度の趣旨と合致する目的に充てられていたとか,当時の被告人両名の認識としては,本件各犯行が不正行為であることは分かっていたが,詐欺罪という刑法犯にまで該当するとの認識はなかったから,本件各犯行の悪質さは低い,などという趣旨と解される。
 ウ そこで,以下,これらの主張の当否について検討する。
 (2) 本件各犯行の目的
 ア 本件各犯行の目的について,被告人両名は,おおむね以下のように主張している。すなわち,
 (ア) 被告人Aは,平成8年10月に衆議院議員に初当選した後,それまで従事してきた市民活動を通じて知り合った政策課題に詳しい者を自らの政策スタッフとすることにより,共に政策立案に当たることにしたが,政策課題は複数あり,価値観の違いが絡み,専門的知識や技術,実地調査の分担等も必要であって,これらを1人でこなせる人などいない状況であった。また,当時の政策スタッフの中には,政策担当秘書の資格要件を有する者がいなかった。そのため,被告人Aは,政策担当秘書を採用できないまま,当選時にさかのぼって秘書給与が支払われる採用期限の同年11月20日が迫っていた。
 (イ) 他方,被告人Bは,被告人Aに総選挙への出馬を要請した手前もあり,被告人Aの政策担当秘書を見付けてあげようとしたが,知り合いの有資格者からは断られてしまった。また,被告人Bは,資金力も組織の支援もない被告人Aの事務所でも,備品代や事務所に出入りする人たちの食事代等の経費がかかるから,少しでも資金を集めるために,政策担当秘書の給与を事務所に入れることが必要であると考えた。そのため,被告人Bは,被告人Aの政策スタッフの中から政策担当秘書の資格を取得する者が出るまでのつなぎとして,有資格者の名義を活用させてもらい,その給与を被告人Aの政策スタッフの活動費として使い,当面を乗り切ろうと考えた。
 (ウ) そこで,被告人Bは,被告人Aに対し,政策担当秘書を空白のままにしておくよりも,その資格を有する者から名義を借りて,政策担当秘書の給与を事務所に入れ,政策スタッフのための活動費として使うことを勧めた。他方,被告人Aは,政策スタッフの人件費等の捻出方法について,皆で工面しようとか,金が無いなら無いなりにやろうなどと考えてはいたが,政策担当秘書給与を政策スタッフの人件費に充てることができるのであれば,本当に助かると思って,被告人Bの提案を受け入れた。
 イ しかしながら,本件犯行に至る経緯ないしその際の被告人両名の認識内容が,仮に,被告人両名の述べるようなものであったとしても,被告人両名は,政策担当秘書の有資格者に対価を支払ってその名義のみを借り,その秘書給与受給の名目で衆議院から多額の公金を詐取した上,本来は自らの政治資金によって賄うべき私設秘書や私的な政策スタッフの人件費に充てようとしたにすぎないのである。したがって,本件が,前判示のような政策担当秘書制度の趣旨に真っ向から背き,政策担当秘書の給与を自己が必要な資金を調達するための単なる手段としてのみとらえるような発想から行われた極めて安易で自己中心的な犯行であることに変わりはなく,酌量の余地は乏しいというべきである。
 ウ(ア) この点,政策担当秘書制度については,当公判廷において,衆議院議員で,衆議院副議長の経験もある証人Hが,当選回数の少ない議員は,一番頼りにしている秘書でも,資格要件を満たさないということで政策担当秘書にできないという問題があるなどと供述し,政治学者の証人Iも,この制度と現実との間には大きな乖離があり,実態は議員の日常の政治活動を支えている第3の公設秘書にすぎない上,公設秘書全般についても,多くの議員が親族を秘書として届け出ているなどと供述し,被告人Bの弁護人は,政策担当秘書制度について,公設秘書の増員問題が世間の支持を得られないため,ある種の目くらましを使い創設されたものである旨主張している。
 (イ) しかしながら,政策担当秘書制度は,前判示のとおり,単に第3の公設秘書を設けるというだけでは国民の理解が得られないために,国会議員の政策立案及び立法調査活動を補佐する秘書として,一定の資格要件が要求されることとなったものである。したがって,資格要件は,この制度の必須の前提というべきであり,これをもって制度の問題点とすることは,制度の趣旨を正解しないものであり,まして,この制度を国民に対する目くらましにすぎないというのは,何らの裏付けをも欠く主張で,論外というほかない。
 また,被告人両名は,被告人Aの政治活動に全く関与していない者の名義のみを借りて,政策担当秘書の給与受給の名目で公金を詐取したものであるから,仮に,政策担当秘書の中には議員の日常の政治活動を支えるにすぎない者もいるという実態があるとしても,そのことをもって,被告人両名の責任が軽減されることにはならないし,親族秘書には秘書としての勤務実態がないとする根拠も薄弱というべきである。
 (ウ) そうすると,上記証人両名が指摘する点も,被告人両名の犯情に影響を与えるものとはいえないのである。
 エ(ア) 次いで,被告人Aの弁護人は,被告人Aには,政策スタッフを充実させて,議員立法を成立させたり,政策を実現したいという目的意識が強く,また,被告人Aが慣れ親しんでいた市民活動においては,それぞれの目的意識に従って集まってきた仲間が対等の関係でつながって活動し,その活動のために必要な経費は活動の参加者が自ら負担し,組織に専従者を置くようになっても,専従者に支払われるのは生活給にすぎず,組織の構成員が個人として受託した業務等によって得た金銭も拠出して組織に帰属させ,あるいは構成員全員で分かち合うということが一般的であったから,被告人Aは,その流儀を,事務所の政策スタッフの人件費にも踏襲しようとしたものであるとも主張する。
 (イ) しかし,本件で問題とされているのは,特別職の国家公務員である政策担当秘書に対する給与であり,もとより国民の税金によって賄われるものであるから,受給者に使途を委ねられた市民活動におけるカンパや民間の団体に対する拠出金等とは到底同視し得るものではない。ましてや,被告人両名が名義を借りた有資格者らには被告人Aの政策担当秘書としての勤務実態が全くなかった以上,同人らがその給与を事務所やそのスタッフ全員のために拠出したなどと評価すべき余地などないことも明らかである。したがって,上記主張も,被告人Aの犯情に影響を及ぼすものとはいえない。
 オ そして,被告人両名は,政策担当秘書には有資格者しか採用できないこと,政策担当秘書は主として国会議員の政策立案及び立法調査活動を補佐しなけらればならないものであること,DやGを被告人Aの政策担当秘書として採用した旨の届出をする際に,両名に対し上記のような政策担当秘書としての勤務を行わせるつもりは全くなかったこと,にもかかわらず,衆議院事務局に対しては,DやGを被告人Aの政策担当秘書として採用した旨の虚偽の届出をしたこと,そのため,衆議院事務局は,D及びGが被告人Aの政策担当秘書である旨誤信して,その給与として被告人Aに判示の金員を支払っていたこと,政策担当秘書給与として支給された本件詐取金は,DやGに支払われた名義借り料を除き,その全額が被告人Aの事務所に入り,同事務所の管理下に置かれたこと,実際に,DやGが被告人Aの政策担当秘書として勤務した実態の全くなかったことのすべてについて,本件各犯行当時から,十分に認識していたと認められるから,被告人両名には政策担当秘書の給与受給の名目で公金を騙し取るとの犯意があったことについて疑う余地はないというべきである。
 かえって,このように明確な詐欺の故意が認められる事案でありながら,詐欺罪に該当するという認識がなかったなどと弁解するのは,正に,被告人両名の思慮の足りなさ,自らの責任や社会的立場,自ら犯罪行為を行っていることに対する自覚の乏しさを表しているにすぎないものとみるほかなく,もとより被告人両名の責任を軽減し得るようなものではない。
 カ(ア) なお,被告人Aの弁護人は,本件当時,国会議員の間では,本件各犯行のような政策担当秘書の名義借りが相当に存在していたものであり,被告人Aの責任を考えるに当たっては,そのような事情も勘案すべきである旨主張しており,本件以外にも後にみる同種の事件等で国会議員が処罰された事例の存在することは,公知の事実である。
 しかし,仮に,本件当時,弁護人の主張のような実態があったとしても,それは,本来,国会の自浄作用によって自ら是正されるべき事柄であり,1人1人が高い倫理性と廉潔性を要求されている国会議員が,他の議員も同様の不正をしているなどと主張して,自らの不正に対する責任軽減を訴えるなどということは許されないというべきである。
 (イ) また,被告人Bの弁護人は,本件各犯行によって,名義を貸した側にも,政策担当秘書としての勤務継続という外観を作出することができ,その結果,他の議員の政策担当秘書として再就職できたとも指摘する。しかし,このような事実は,本件各犯行によって共犯者らも不正な利得を得たということにすぎないのであり,被告人両名にとって何ら酌むべき事情とはいえない。
 (3) 本件詐取金の使途
 ア 本件詐取金の使途状況等
 (ア) 平成9年1月初めから被告人Aの秘書を務め,その事務所(以下「A事務所」という。)の会計経理全般を担当していたJの供述調書等及び捜査官作成の捜査報告書を中心とする関係各証拠によれば,A事務所における本件詐取金を含む資金の流れ及びその使途状況として,以下の事実が認められる。すなわち,
 a 被告人両名が詐取した金員は,まず,A事務所で管理していたD又はG名義の判示の各銀行口座に振り込まれ,同口座からD又はGに対して1か月当たり7万7000円ないし5万円の名義借り料が送金された後,その残額が同じくA事務所が管理していた別の銀行口座,すなわち,当初はF銀行衆議院支店のK名義の普通預金口座,平成10年1月27日以降は同支店のL名義の普通預金口座(以下,併せて「プール口座」という。)に振り込まれていた。
 なお,プール口座には,政策担当秘書給与である本件詐取金に加え,被告人Aの公設第一秘書及び公設第二秘書の各給与等も入金されていた。
 b プール口座からは,一部の資金が,同じくA事務所が管理し,平成9年1月に開設された,F銀行衆議院支店のK名義の金銭信託口座に回されており,その貯蓄残高は同年末時点で580万円余に及んでいた。
 この資金は,平成10年1月以降,同じくA事務所が管理する同支店のL名義の金銭信託口座及び貯蓄預金口座(以下,これら2口の口座に上記K名義の金銭信託口座も併せて「貯蓄用口座」という。)に移された。
 その後も,プール口座から貯蓄用口座に資金が順次回されるなどして,平成10年末の時点で同口座の貯蓄残高は合計1132万円余に及んだが,そのうち732万円余が,プール口座からの入金であった。
 c 他方,プール口座からは,A事務所のスタッフの給与等の人件費が支出されていたが,平成10年3月までは,議員会館にある東京事務所のスタッフの人員が少なかったことから,人件費も比較的少額に抑えられ,余剰金は順次貯蓄用口座に貯蓄されていた。しかし,同年4月からは,被告人Aの大阪事務所(以下「大阪事務所」という。)の開設に伴って,同事務所に多額の人件費を要するようになり,プール口座に入金されてくる秘書給与のみでは賄い切れず,貯蓄用口座からも随時人件費等として必要な資金が引き出され,プール口座を介して,大阪事務所の経費を処理するために設けられたF銀行衆議院支店のA大阪事務所代表A名義の普通預金口座(以下「大阪事務所口座」という。)に入金されていた。
 なお,プール口座から大阪事務所口座に出金されていた資金は,大阪事務所スタッフのアルバイト代のほか,同じ所属政党の参議院議員候補者の選挙の手伝い,資金集めパーティや出版記念パーティの準備の手伝い等のアルバイト代として,さらに,平成11年以降は,同じ政党の大阪府議会議員候補者の選挙の手伝いのアルバイト代,大阪事務所の家賃,印刷代,ビデオ制作費,更には,被告人Aの選挙事務所の諸費用等にも費消されるなど,政策立案のためのスタッフの人件費とはいえない支出も多く含まれていた。
 d ところで,A事務所では,主にガス代や印刷代等の事務所経費支払のために,F銀行衆議院支店A名義の普通預金口座(以下「事務所経費口座」という。)も管理していたが,この口座には,被告人Aの議員歳費や文書通信交通滞在費手当等が直接入金されていたほか,別の口座を経由して,所属政党からの立法事務費,政党交付金,後援会からの後援会費,寄付金等も入金されていた。
 事務所経費口座からは,被告人A個人が管理する銀行口座に被告人Aの給与の名目で出金されたほか,事務所経費等を支出した後の残金が,平成9年4月から,当時のM銀行株式会社本店のA名義の総合口座(以下「M口座」という。)に回されるようになり,平成10年12月末時点で,M口座の貯蓄残高は550万円に及び,この貯蓄残高は,平成14年当時まで維持されていた。
 e このほか,A事務所の経理責任者であったJは,事務所経費口座の余剰金の一部について,大阪事務所のための急なまとまった出金に対処するため,同人名義のF銀行衆議院支店の普通預金口座(以下「J名義口座」という。)に順次移動させていたが,この金額は平成10年12月末時点で約150万円となっていた。
 (イ) また,Jは,A事務所で余剰金の貯蓄を始めた目的等について,その供述調書において,平成9年1月ころ,当時A事務所のスタッフであったKから,「地元に事務所を出す前でないと,金は貯まらない。事務所を出すと,金があっという間になくなる。」などと言われたことがそのきっかけであり,将来の大阪事務所の開設及び被告人Aの衆議院議員選挙の際の出費に備えようとしたものであるが,Jとしては,貯蓄用口座は,将来の選挙に向けた,大阪事務所の開設資金として貯蓄を始めたものであり,M口座は,被告人Aの将来の選挙資金,更には万一落選した場合の被告人Aの住民税や当面の生活費,その後の活動費に充てるために貯蓄していたものであるなどと述べている。
 (ウ) そして,このようなJの供述内容は,J自身が管理していた各銀行口座の通帳等の証拠によって客観的に裏付けられており,その正確性が担保されている。また,Jは,被告人Aが「P」という非営利活動団体(NPO)の専従として活動していたころから,同団体で活動を共にし,被告人Aが国会議員に当選した直後に,本人から特に請われてそれまでの司法書士の職を捨てて秘書となり,当初は私設秘書,後には公設第二秘書としてA事務所の運営等に深く関わってきた者であり,その供述内容に照らしても,あえて被告人Aに不利益な供述をするような事情は全くうかがわれないのである。そうすると,Jの上記供述の信用性は十分に肯定することができる。
 イ 被告人Aの関与ないし認識
 次いで,以上認定してきたようなA事務所における資金の流れないしその使途への被告人Aの関与ないし認識について検討する。
 (ア) この点に関し,Jは,①被告人Aも,Kから,地元の大阪に事務所を開設する前に貯蓄をしておかねばならないという話を聞いており,選挙のための資金を貯蓄する必要があることは分かっていたはずである,②平成9年2月中旬ころ,被告人Aも参加した事務所内のミーティングで,Jが,事務所経費から月額40万円,秘書給与からも年間100万円弱を選挙に向けた資金として貯める旨宣言したことがあり,大阪事務所を立ち上げる前にできるだけ資金を貯めようとしていることは,被告人AもJの話を聞いて分かっていたはずである,③Jが同年3月開催の出版記念パーティーで赤字が出たことを報告した際に,被告人Aは,「厳しいなあ。けちっていかなあかんな。」と言っており,経費の支出を絞らなければ,資金が貯まらないことは分かっていたはずである,④同年4月にM口座を開設して間もなく,被告人Aから,議員宿舎に届いたカードについて尋ねられたので,Jが,新たに口座を開設して貯蓄に用いることを被告人Aに説明したが,その後,被告人Aは,M銀行の担当者に,「がんばって増やしてや。」などと声を掛けたことがあった,⑤平成10年4月,Jが,被告人Aに対し,大阪事務所の開設資金として2000万円強の蓄えはあるが,大阪事務所の経費は月200万円くらいかかるなどと説明した,⑥同年12月初めころ,被告人Aから,「400万円すぐ用意できるかな。」と言われ,Jが貯蓄用口座から400万円を出金したことがある,などと供述しており,これらの供述の信用性についても,疑問の余地がない。
 (イ) 以上のJの供述に,前認定のようなA事務所における資金の流れないしその使途状況等を総合すると,本件詐取金を含む被告人Aの収入は,同事務所の会計責任者であったJが,その独自の判断によって,自ら管理する複数の口座を駆使しながら事務所経費や人件費等をやりくりした上,その余剰金を更に別の口座に貯蓄するなどしていたものであって,本件詐取金が被告人A個人の口座に流れたり,その使途について,被告人Aが具体的な指示を与えることはなかったことが認められる。しかも,Jが,M口座の550万円に及ぶ資金を,被告人Aの将来の選挙資金としてだけでなく,万一落選した場合の被告人Aの住民税や当面の生活費,その後の活動費に充てるという目的で貯蓄していたという事実についてまで,被告人A本人が認識していたことをうかがわせる事情は存在しない。
 しかしながら,Jの供述によると,Jは,事あるごとに被告人Aに対して事務所の財政事情や貯蓄の状況についても報告していたというのである。しかも,その述べるような前記(ア)の事実,とりわけ,A事務所の厳しい財政事情の中から,平成10年4月までに,大阪事務所の開設資金として2000万円強という多額の資金を貯蓄することができたとの報告を受けており,同年12月には,自己の求めに応じて,直ちに400万円もの大金が用意されたという事実からすると,被告人Aとしても,Jが,事務所経費等をやりくりする中で,大阪事務所の開設資金ないし運営資金,将来の選挙資金等にも使用できる多額の金員を貯蓄していることを十分認識していたことは明らかであり,それが可能になった一因として本件詐欺による政策担当秘書給与の詐取があったことを容易に推察できたことも優に認められるのである。
 (ウ) この点,被告人Aは,捜査公判を通じ,本件詐取金はすべて政策スタッフの人件費に充てられていると思っていた旨弁解する。
 しかしながら,被告人Aが,Jに対し,本件詐取金の使途を政策スタッフの人件費に限定するような特段の指示をしていたことをうかがわせる証拠は全く存在しない。しかも,関係各証拠によれば,本件犯行を開始した平成8年11月当時の政策スタッフのうち,Oは平成9年5月,Kは同年12月末に相次いで事務所を離れるなどして,A事務所では,公設秘書給与を取得するC及びJ以外に常駐のスタッフがいなくなる時期もあったことが認められる。さらに,Jは,被告人Aには,ボーナスを誰に幾ら支給するかも報告していたので,被告人Aも,人件費の支出が減ったため資金に余裕ができ,その資金を貯めていることは,分かっていたはずであると述べていることをも考慮すると,被告人Aの上記弁解はたやすく信用できるものではない。
 ウ まとめ
 以上判示してきたとおり,本件詐取金は,A事務所の人件費として使用されただけでなく,同じ所属政党の参議院議員候補者や大阪府議会議員候補者の選挙の手伝い,各種パーティの準備の手伝い等のアルバイト代,大阪事務所の家賃,印刷代,ビデオ制作費,更には,被告人Aの選挙事務所の諸費用等にも費消されるなど,被告人Aが主張するような,政策スタッフの人件費のみに充てられていたものではなかったものと認められる。しかも,M口座及びJ名義口座には,被告人Aの将来の選挙資金等として,事務所経費の余剰金が貯蓄されていたところ,本件詐取金が最後に振り込まれた平成10年12月末現在において,本件詐取金のうち名義借り料を除く被告人A自身が取得した金員は合計1614万円余であったのに対し,貯蓄用口座,M口座及びJ名義口座の残高合計は1832万円余であった。したがって,被告人Aがこのように多額の政治資金を蓄財できたのは,本件詐取金に負うところが大きかったものと認められる。
 そして,被告人Aとしても,A事務所において多額の政治資金が貯蓄されており,それには本件各犯行も大きく寄与していることを容易に推察できたものであるから,本件詐取金が,自らの政治資金として広い用途に使用されて,一部は貯蓄に回されているという限度においては,十分に認識していたものと推認することができる。
 以上のとおり,被告人Aは,政策担当秘書給与として詐取した本件詐取金を,自らの国会議員としての政治資金として広く使用していたものと認められるのであり,政治活動とは全く無縁の私的流用と比べれば,その悪質さは幾分劣るとはいえ,秘書の給与という趣旨を大きく逸脱し,広く自己の政治資金として自由に使用していたことからすると,本件各犯行が悪質であることに変わりはないのである。


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岡田克也は社民党の辻本清美の選挙区で辻本の街頭... (民主党は日教組と在日の政党)
2009-08-19 17:48:41
岡田克也は社民党の辻本清美の選挙区で辻本の街頭応援演説を行った。
民主党と社民党には社会主義政党などの共通項が多い。
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「民主党は日教組・・・」さん、まったくその通り... (yukiro)
2009-08-24 05:59:39
「民主党は日教組・・・」さん、まったくその通りです。民主党の7割は、もともと社会党出身者。
「民主党の正体」という民主党を離党した都議会議員が暴露しているHPです。
ご参考に。

http://www35.atwiki.jp/kolia/pages/159.html#id_8cfa9dac
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辻元さんは離党の意向を示しているらしいですが、... (経費節減)
2010-07-27 09:28:46
辻元さんは離党の意向を示しているらしいですが、罪を犯したということを理解した動きをしてほしいと思います。罪をおかしても大臣のポストでも狙っているのでしょうか?
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