炭鉱遺産と今

北海道炭鉱遺産の現状と思い出をエッセィ風に記述

三弦橋

2009-03-25 21:15:33 | Weblog
「わっ、きれいな景色!」
「ほんと、行ってみたいね」
3月の総会時、展示した一枚の写真を見て二人連れの女性が感銘を受けたように見入っていた。
昨年、私たちの団体で実施したコンテストの入賞作品、夕張の「三弦橋」を撮ったものだ。断面が三角形、四角錘を連ねた桁橋で、トラス工法という独特の作りだ。その幾何学模様が朝霧のシューパロ湖で幻想的な光景を醸し出し、実に美しい。
「きれい!」という言葉に触発されて、昔、勤めていた炭鉱の社内誌の記事を思い出した。
「幾何学的につくられた坑道は美しく強い」という内容だった。
坑内では盤圧によって鋼鉄の枠が押しつぶされることがよくある。坑道を掘り進んでいくときは、半円形の鉄枠で天磐を支えるが、立て付けが悪かったり変形した枠を使用すると、弱い部分から捻じ曲げられ坑道そのものが潰れてしまう。そのため、坑道掘削と鉄枠布設にあたっては、圧力を分散するようにしなければならない。同じ大きさ、同じ間隔で一直線に枠を並べていく。同時に、同じ太さの矢木(鉄枠と岩盤との間に隙間を埋めるために籠められる細い木材)を差し込んでいく。これがなかなか難しい技術だ。しかし、そうしてつくられた坑道は惚れ惚れするほどの美しさがあり、その美しさが力を均等に吸収して坑道を支えてくれる。
社内報の記事は、美しいと思える仕事をすることが大事と教えていた。
炭鉱は汚くごつごつしたものというイメージが強いかも知れない。しかし、いたるところで美的感性が生かされている。立坑櫓に見とれてしまうのも、ただ高いからだけではない。整然とした造形美が魅力を高めてくれるからだ。
坑内で使う木材の運搬に使われていた三弦橋をみて、改めて、炭鉱のイメージの一面を見直していた。
 
坑道と電車 稼動時の住友赤平炭鉱  朝霧の三弦橋  撮影玉手恒弘様

炭鉱遺産を登録文化財に

2009-03-08 15:51:13 | Weblog
「星の降る里百年記念館」に勤務する学芸員の長谷山さんは、空知炭鉱遺産の国登録文化財をもっと増やすことが必要だと力説する。
「北海道の炭鉱遺産群は、一昨年、経産省の近代化産業遺産として認定されました。これを機に、日本の経済発展に大きく貢献した炭鉱のことを、広く知らせていくべきだと思うのです」
最盛時の炭鉱施設や坑内写真を指差しながら話す長谷山さんから、歴史を伝える使命感のようなものが伝わってくる。
芦別市の炭山川に架かる「旧三井芦別鉄道炭山川橋梁」は、今年1月8日、正式に登録文化財となった。旧頼城小学校校舎、同屋内体育館に続いて3つ目の登録だ。
芦別市は、札幌から高速を使っても2時間近くかかる。多くの人に訪れてもらうにはそれなりの整備が必要だ。しかし、財政難の折、市から捻出することはできない。
ところが、文科省の登録文化財になれば1件につき年間6万円の特別交付税が出る。多い額とは言えないが、草刈りや看板などの整備に使うことができるだろう。近隣市町の登録がすすむと連携がとれて「国登録文化財見学ルート」をつくることもできるかも知れない。
「申請すれば、登録される建造物はいっぱいあると思いますよ」
そう語る長谷山さんの思いは、空知全体の活性化を願っているようだ。
空知支庁も、炭鉱遺産の活用方策をまとめた。近いうちに、発表フォーラムが開かれる予定だ。こうした動きが相乗効果となって炭鉱遺産が町おこしの核になればいいがと思う。

  
今の炭山川橋梁 撮影鈴木英樹様  平成1年頃のディーゼル機関車 撮影沖義教様