炭鉱遺産と今

北海道炭鉱遺産の現状と思い出をエッセィ風に記述

寒の入り

2013-01-07 13:49:19 | Weblog

1月5日は寒の入り。寒さはそれほどでないが、この時期の積雪としては例年以上だ。2台ある車庫の雪下ろしはすでに3回、70を超えると重労働だ。晴れた日を見計らって休み休み行う。車庫の上は見晴らしがいい。近隣の屋根にも大量の雪が被っていて、軒先に丸く固まっているところもある。それにしてもツララは見なくなった。断熱構造がよくなったせいだろうか。かつての長いツララが懐かしい。

あの頃、炭鉱住宅では正月を過ぎるころから厚く長大なツララが成長していった。表玄関側は通行や見栄えの関係で、時折ツルハシでたたき落とすから目立たないが、裏戸側は雪に覆われて冬の出入りができないため、氷も伸び放題。屋根から垂れる2メートルほどのツララは10軒長屋の端から端まで何十本も連なる。いま思い出すとその様子は壮観だ。

日中、真っ赤に燃える石炭ストーブは部屋全体を暖め、その熱は屋根裏にも伝わる。ゆるやかな傾斜のトタン屋根に降り積もった雪はその熱で溶けて軒先へ下がってくるが、その水滴が冷たい外気に触れて少しずつ微細な氷の塊を結んでいく。ちょうど、鍾乳洞の天井からぶら下がっている鍾乳石のようなものだ。

夜、それぞれの家では、ストーブに大量の石炭を入れて通風口の扉を半開きにしておく。そのため、火力が弱まり炉内の熱が長時間ゆっくり保たれることになる。朝起きたときにすぐ部屋を暖めることができるよう火種を残しておくのだ。が、その分、夜半の室内は冷気に包まれる。厚い布団に入っていても寒さで目が覚めることがしばしば。そんな時には脱ぎ捨てた下着を首筋に詰め込んで、横に寝ている父の足に絡めてまた夢の中に入っていく。きっとそんな夜には、ツララは人知れず下へ下へと手を伸ばしているのだろう。

炭鉱住宅は昭和45年頃からアパート式になっていった。同時にその頃から夜静かに動いていた妖精のようなツララも見られなくなっていった。

 



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1 コメント

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ツララの風景・・・ (J.Suzuki)
2013-01-10 11:26:14
高橋さま、炭鉱ナビの皆さま、本年もよろしくお願い致します。

本当に、ツララは少なくなりましたね。
住宅や暖房器具の変化で、まちの風景も変わりました。
ツララに陽光があたるとキラキラしてきれいですよね。
ススが混じっていたりもしましたが、それも雪国ならではの景色でした。
子どもの頃はそのツララで遊ぶのも好きだったんですけどね(^v^)

雪下ろしの時はお怪我のないように、どうぞお気を付けください。
今年もこちらのブログで綴られる炭鉱の様子や人々の暮らし、町の風景などを
楽しみにしています。
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