YOU企画は昨年、20周年を迎えました。しかしこのコロナ禍で稽古もままならず、2021年6月に予定していました公演「温室の前」はやむなく一旦中止とさせていただきます。
「2019年度から5年連続で、マスターピース<名作>を産み出していきます。」と銘打ったメーテルリンク、ストリンドベリ、岸田國士といった世界の巨人の戯曲に挑んでいくシリーズは休止し、新シリーズを始動します。
「プロジェクトの設立趣旨に立ち返り、企画を進めます」と前シリーズで宣言した通り、劇団のテーゼ(命題)である「そこに在る演劇〜日常の中の非日常〜」から発想した『ソリテュード<孤独>シリーズ』と名付けた一人芝居の連続公演です。
そもそもは、テーゼの逆になってしまっている現状「非日常が日常」を踏まえ、「聡明な人は危険に気付いて身を隠す(聖書の格言)」とある通り安全第一の考えから、複数人による稽古をまず中止することで危険回避しました。(1、物理的に危険を排除)次に一人芝居の台本を複数本クスキユウに書いてもらいました。(2、代替により危険を低減)そして稽古場ではなく自宅でオンライン上で本読み・読み合わせを現在行っています。(3、人を危険から遠ざける)
これから状況を見ながら、俳優1人で稽古場に行き、演出がオンラインで見る方法を試したいと思います。( 4、作業の方法を調整・変更)もちろん、外に出るときのマスク着用や手指の消毒は当たり前のことです。(5、作業者を個人防護する)
これらはいわゆる安全のヒエラルキーコントロール(上から下に効果が下がる)を考えてのことです。
さて、ではなぜソリテュード<孤独>と名付けられたのでしょうか。孤独さを和英辞典で調べてみると、solitudeとlonlinessが出てきます。後者は歌の歌詞にもよくなっており、寂しさ、人恋しさなどを感じさせます。一方シリーズ名となった前者は日本語でソロsoloという時の綴りと関係して、社会的な孤独、物理的な“隔絶”、煩わしい世間から離れた“孤高”をある種意味するものです。前者が「一人でいること」を肯定的に捉え、後者が否定的に捉えているともいえます。
今の世の中、大勢の人が孤独に苦しんでいる事は確かなことだと思う。「私は一人だ」と嘆く人に「君は一人じゃない」と声をかけるのは、・・・多分正解でしょう。でも「あなたは一人だ。そして、私も一人なんだ。」と言う事で見えてくるものがあるんじゃないか、と思ったのです。同質意識や同調圧力、ムラ社会といわれる日本の中で、かつてなく孤独を多くの人々が実感する今、私たちが創れる作品があるのではないか。そんな思いでこの企画を立ち上げます。
企画で扱う“孤独”にはきっとたくさんの種類があります。没個性の中でもがき目指す孤独。干渉されない自由を求めた孤独。抱える問題ゆえに必然的に感じさせられる孤独。それらをソリテュード<solitude>をテーマとして丁寧に紡ぎ上げていくときに、この時代なりの希望が見えてきはしないかと、願うのです。
YOUーPROJECT主宰 松浦友
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