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E:Ecole Phillippe Goulier

本日はEです。今まで英語でしたが、今回だけ仏語です。
Ecole Phillippe Goulier=フィリップ・ゴーリエ国際演劇学校です。

今までフィリップとだけ言ってましたが、実はフィリップ・ゴーリエ氏(フランス人)のことです。
彼の学校がロンドンにあった最後の年、2002年の6月に1ヶ月間だけ通いました。
彼の学校は通年制で、1年目は一ヶ月ごとに「シェイクスピア」とか「クラウン」、「チェーホフ」などを学んでいきます。
そのうちの最後の科目「Writing and Directing」を受講していました。

僕の受講した「Writing and Directing」の内容です。

このページの左端の写真が、僕が学んだロンドンの教会の跡を利用したような学校内部の風景です。

国際演劇学校というだけあって、本当にたくさんの国の人たちと出会いました。
エストニア・イスラエル・スイス・カナダ・オーストラリア・アメリカ・スコットランド・ポルトガル・スペイン・イタリア・フランス、思い出すだけでも本当に大勢の国籍や背景を持つ人たちが居ました。

それだけでも、とても興味深いことでした。
みんな俳優だと言うこともあると思うのですがオープンで打ち解けやすい雰囲気でした。
あのハグして抱き合って両頬にキスをして挨拶するのは、傍で見ていてうらやましかったのですが、僕は最後の方まで素面ではできず、日本社会の人間なんだな、と思いました。
西洋文化だと言ってしまえばそれまでで、そこまで大仰に敵意のないことを示さなくてもいいじゃないか、と言われたらやっぱりそこまでなんですが、
それでもなお、彼らの方が異文化を受け入れやすく、コミュニケーション能力に長けているというのはいえると思います。

ボディコンタクト(身体接触)というのも、本来気持ちいいもので、親や子や兄弟姉妹、恋人や伴侶から触れられるととても気分が安らぎます。
赤ちゃんも母親に触られることによって、様々な身体の機能(免疫などでさえも)を伸ばしていくことが研究により明らかになっています。
余談ですが、コンタクトインプロビゼーションというコンテンポラリーダンスの技法があります。
簡単に言うと、身体の一部を常に接触させながら即興で動きを生み出していく方法です。
未だ時間がなくてワークショップに参加したことがありませんが、これは経験してみたい技法です。

横道にそれましたが、短くとも学んだことはたくさんありました。お金さえあれば通年で受講したかったです。
ロンドンはとてもいい町ですし。(劇場に通いまくりました。詳しくはTheatreを扱う時にでも。)

最初にワークショップ的なことをやる時間があって、それは別の先生が指導します。
次にフィリップが来て授業が始まります。

今回は2エピソードだけ紹介します。

1つ目は1時間目のワークショップ的なところで得たカルチャーショックです。
僕の好きなワーク(俳優たちの練習というかウオームアップのようなものです)に、全員で数を数えていくと言うのがあります。
例えば1から20までを数える場合、ランダムに一つの数字ごとに「1」「2」「3」と誰かが喋っていくのです。
これが結構誰かとぶつかったりしてうまくいかず、場の空気を読んでいく作業になります。
喋りたがり、出たがりの「攻め」の演技が好きな人ばかりだといつまでたっても重なってしまいます。
自分が言おうとした時に他の人も言っていないか、全員でタイミングを計りながら呼吸を合わせて行きます。
これは「受け」の演技の練習にもなるな、と思っていることもあってとても好きです。
何より、もの凄くしーんっとなって、みんな集中するさまが好きです。言葉にならないコミュニケーションが交わされるのです。

でもロンドンでは、みんな我先にと数えていくので、一向に成立しません。
沈黙している“間”がないのです。自己主張強すぎです。
これは日本人の方が得意で、「受け」の演技を西洋の人は意外とできにくいものなんだな、と思いました。
日本なら素人同士でも、5分もたてば、何となくできるんですけどね。

2つ目は、フィリップの演出手法です。
「Writing and Directing」は、受講者の家族にまつわる劇的な話を語り、それを希望者が脚本にして、希望者が演出をして、その人が俳優たちを集めて発表という流れでした。
その中で誰の父親だったか忘れましたが、ナチス政権下で屋根裏に隠れ住んでいた時の話をした人がいて、
その話をやっている時でした。
発表をする人たちは、わざわざ装置のようなものを組み、二階に陣取って発表しました。
でも、フィリップは発表を見るなり、「俳優が活き活きしていない。ここでもう一度やりなさい。」と言って、
掃除用具入れを指差しました。

中の物を取り出して、そこでイタリア人とアメリカ人の大男二人がやる様は非常に滑稽で面白く、俳優たちも大変のってやっていました。

このときから、物理的に俳優の状況を変える、と言う技を見出したのです。
人間はやはりフィジカル(肉体的・物理的)なところと感情面はつながっていて、その部分なくしては“生きる”ということは表現できません。

ということは、振りを気の弱い人のそれ、偉そうな人のそれ、にすればそうなるのではないか、というようなことを考えて、
最初から最後まで舞踊のごとく振付けたり、マグリットの絵からインスパイアされたポーズを、
シーンの中に取り入れて作品を創った時期がありました。

今は、技法の一つと言う感じで考えています。
このようにフィリップには大変強い影響を受けています。
よくルコックシステムの教師として紹介されることがありますが、
本人はルコックよりも格段よい方法を教えている、みたいなことを言ってました。
ルコックについては、本で読んだり聞いただけですが、フィリップの方が断然好きです。
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