駆けろ!好調教馬 駆けろ!吉見幸洋

今週の好調教馬を独自に選定して掲載してマース

競馬の愉しみ(97年11月)

2004年12月08日 14時31分27秒 | ★エッセイ(芸人として)
秋も深まり、紅葉とともに競馬の季節がやって来た。

タイタンで競馬をするのは、主にたくみさんと田中さん、そして私であるが、

実は何を隠そう私はタイタンで3本の指に入る競馬好きである。

競馬歴はかれこれ8年になる。

私は馬とは話せないので専ら本馬場「(ほんばば)…競馬場」か

WINS「(ウインズ)…場外馬券売場」に通っていたが、

数年前、JRAのPAT「(パット)…電話回線を利用する在宅馬券購入システム。

選ばれし勇者のみ手にする事が出来るスペシャルアイテム。チロリン村の北の洞窟にある。」

会員になり、オヤジ馬券師の仲間入りをした。
 
私は某劇団研究生時代にも馬キチと言われ、

公演間近になっても台本を読む時間を惜しんで競馬新聞を読んだものだった。

「顔が馬に似てきたよ」なんて最高の誉め言葉だった。

本当に好きで、一時は真剣に馬になろうと思ったこともあった。

 さて、「サラブレッドは血で走る。」と言われる程で、祖先を遡れば

必ず3頭の牡馬「(ぼば)…雄馬。」に辿り着く。御三家、親戚一同といったところだ。

ある時代ライバルといわれた馬同士の子供達がまたライバルとなったりする。

血とともに受け継がれた宿命、そんなストーリーに引き込まれていく楽しみもあるし、

勝馬予想(馬券購入)の楽しみもあり、まさに「娯楽界の幕の内」といったところだ。

 昔駄菓子屋でくじを引いた時、

「本当に当たりが入ってるのかよぉ」幼心にそう思ったものだ。

その点、競馬はフェアである。

何しろ新聞に載っている出走馬一覧の中に必ず当たりが入っている。

いらぬ心配ご無用だ。

だからパチンコで奥さんに逃げられ、株で家を無くしたような人でさえ安心して楽しめる。

 予想の仕方も様々だ。

2月4日が誕生日だから2-4の馬券(2番と4番のどちらかが1着、もう片方が

2着に来れば当たり)を買う人や質屋の息子だから7-8を買う人もいる。

一週間かけて研究した私の予想も前述の予想にかなわない事も多々ある。

勝馬予想にはハンデはない。素晴らしい限りである。

 たまに気分を変えて本馬場やWINSに繰り出せば、友達100人出来たも同然だ。

気のいいオジさんが初対面にもかかわらず皆陽気に語りかけてくる。

「俺はねえ、この馬が来ると思うぜ。」自分の予想を教えてくれる。

「兄ちゃん、競馬はイカサマ、俺は馬主と知り合いで次のレースで来る馬聞いて

あるんだがそれに乗るかい?乗るんだったらお金くれれば馬券買ってきてやるよ」

予想の手間まで省いて更に馬券まで買ってきてくれる、

信じられない程親切なオジさんもいる。

友達のいない人にはおすすめのスポットだ。

 話は変わるが、今年の天皇賞(秋)は牡馬に混じった唯一頭の牝馬(雌馬)

エアグルーヴが17ぶりに牝馬の天皇賞馬に輝いた。

2着に来た牡馬バブルガムフェロー(以下バブル君)という馬にも感心した。

競馬予想記者の多くは、バブル君が1着になると予想をしていたが。

「馬の心人知らず」とはよく言ったものだ。

今回男の子の中で成績が抜けていたバブル君は去年のこのレースの覇者であり、

また3歳時には3歳チャンピオンの座に輝いたエリート青年だった。

考えてみて下さい。町内会主催運動会で同学年のトップの女の子との徒競走、

しかも自分は去年このメダルをもらっています。

一見負けたら恥ずかしいと思うかもしれないが、女の子を押さえてまで同じメダルを

もらうなんて男の子の、いや紳士としてのプライドが許すはずがない。

レース後、彼は調教師(馬の管理者)達だけに言ったはずです。

「負けてやったんだよ、女だからよ」と。

今度バブル君が出るレースの時、パドック(出走馬のお披露目場)で

たくみさんにバブル君の胸の内をこっそり聞いてもらうのさ・・・。

おっと、そういえば馬と喋れなかったんだよね、あの人・・・。
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黄昏オールナイトシネマ(97年10月)

2004年12月08日 14時29分11秒 | ★エッセイ(芸人として)
 秋の夜風に誘われて、私はオールナイト映画を見に行った。

眠らない街、新宿歌舞伎町。夜の街が大人の気分にさせる。

私は眉間に皺を寄せ、目を細めた。別に粋がっているのではない。ちょっとシブめにきめてみただけだ。

ただ、怖いお兄さんと擦れ違う時は、一瞬にしてあどけない表情に変わる。

絡まれたら大変だ。上映時間に間に合わなくなる。

私は二つの表情を上手に切り替えながら人込みをすり抜け、映画館の前の切符売り場に辿り着いた。

声のトーンを一つ落として私は言った。

私:「大人・・・」 

切符売り:「1900円均一です」

まるでつっこみのお手本にしたくなるような低くさめた声で遮られた。

「やるね、お兄さん」

あくまでもシブくこたえると、またお手本にしたくなるような意味不明な笑みを浮かべた。

思わぬところで勉強になった。切符売りに礼を言い、私は夜の街に背を向けて映画館の中へと消えた。

ロビーには思っていたより多くの人が賑わっていた。

私はポケットからタバコを取出し火を付けた。2、3服したところ、中から客が出て来始めた。

どうやら終わったらしい。

私は慌てて火を消し、中へ駆け込んだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無い!

昼間指定席となる場所の最前列中央、即ち館中央を横切る通路沿いの一等席が埋まっている!

埋まっているのではない、元からいた客が動いていないのだ!。

甘かった・・・・オールナイトだからと甘く見ていた。

仕方なく、私は少し後ろ目の指定席中央あたりに座る事にした。

前の席でカップルがポテトチップスを食べていた。

上演中に食べられたらうるさくて仕方ない。

早く食べ終わるよう手伝おうかと声をかけたが断られた。

その残量から見て始まるまでには終わりそうだったのでそっとしておいてあげた。

開演ベルが鳴り照明が落ちた。余程待遠しかったのだろう。

上手前あたりで「ヒュー!」という声と共に拍手する一人の男。

自分の気持ちをストレートに表現できる。素晴らしい事だ。

CMが始はじまる。その時、3列程前の男の携帯電話が鳴った。

「あっ、俺、ん?あのさ、いや今映画観てんだからよぉ、こんな時にかけてくんなよ、非常識だろ!」

君が一番非常識だ。

すると携帯男の後ろにいた中年男性が皆の期待を一身に背をって一喝した。男は電話を切った様だ。

館内に静けさが戻った矢先、今度は時計の時報が鳴った。


私のG-SHOCKだった・・・中年男性に丁寧に頭を下げた。

ともかく本編が始まった。今度は後ろの女性が感想を述べだした。全く困ったものだ。

「松田洋治の声ってこんなにカッコよかったんだ。」

なんて事だ、主人公『アシタカ』の顔が松田洋治に見えて来た。

私は人さし指を口の前に当て「シー!」と優しく制し、

気を取り直し次第に宮崎ワールドに引き込まれて行った。

色々あったが無事上映も終わり、映画館を後にした。

シャツ一枚では肌寒く感じられる季節になった。

もう秋か・・・私は夜空を見上げながらしみじみ思った。
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お断りの流儀(97年9月)

2004年12月08日 14時27分37秒 | ★エッセイ(芸人として)
 先日、坂田氏と稽古があるため私は新宿西口電気街探索を切り上げ新宿駅へ向かった。

途中、一人の女性に声をかけられた。

「すいません、10分だけアンケートに協力して頂けませんか。」

軽く微笑み、手を横に振りながらお断りをする、これが私のいつものお断りの流儀だ。

しかし、いつもの様にはいかなかった。

彼女は他の人よりはるかに横移動が早く、ぴったりくっついて放れない。

「しつこいな!いい加減にしてくれよ!」

の一言が言えれば幕は下りるのだが、八方美人の私にその持ち駒はない。

「本当に10分だけですから」

~出来ない約束をする人はろくなヤツじゃない~という祖父の教えもあり先を急ごうとしたが、

「地下のロッテリア辺りでジュースでも飲みながら割り勘で」

その言葉に私の足は止められてしまった。

おごってもらっておきながらお誘いをお断りする・・・これは心苦しいことである。

しかし「割り勘で」ときた。

見事だ。その押し付けがましくない態度が私からお断りの言葉を失わせ、

第2ステージのロッテリアへと導いた。

最後にお断りをした時に見せる悲しそうな顔を思い浮かべると少し心苦しかったが、

彼女があまりにも嬉しそうに生き生きと話すので暫く話をさせてあげた。

どうやら能力開発セミナーらしい。

問い掛けに私は、しがないサラリーマンで夢はマイホームを持つ事だと答えた。

「今の自分でその夢は叶う?叶えたいんでしょ。だったら変わらなきゃ!」

どこかで聞いたセリフだ。

ちなみに受講料は11万円との事だ。

11万円と今のMacを下取りに出せば、新しいMacが買える。

Macが買い替えられない私には当然支払えるわけがない。

それはさておき争い事の嫌いな私は、それ以上会話が発展しない、

尚且つ彼女が気分を害さないように言葉を選んで答えた。

人を説得すると言う事は労力のいる事だ。

彼女も、今飲んだジュースがもう汗となって滲み出てきている。

彼女が話疲れて来た様だったので、もうそろそろ他の人を誘いに言った方が、

いや今日は疲れている様だからこれで仕事は終わりにした方がと促したが、

まだ次の人にお誘いをかけなくてはならないとの事だ。

「お疲れだね、大変だ。」

と私は優しく微笑んだ。

時間は既に1時間近くたっていたので、もう行かなくてはならない旨を伝え

「外まで送るよ」と言ってあげたが、

「もう少し休んでいく」と言うので

「元気出せよ!きっといい人見つかるよ!」

と笑顔で声をかけ、別れを告げた。

外に出ると私の顔からも汗が滲み出た。

「ヤバイ!稽古前のセリフを覚える時間が無い!!」

・・・冷や汗であった。
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