マカロンはマカロン /  近藤史恵

2018年10月09日 | か行の作家
コウノトリが運ぶもの
青い果実のタルト
共犯のピエ・ド・コション
追憶のブーダン・ノワール
ムッシュ・パピヨンに伝言を
マカロンはマカロン
タルタルステーキの罠
ヴィンテージワインと友情

「ビストロ・パ・マル」シリーズの三作目です。

小さなフレンチレストラン、ビストロ・パ・マルを舞台にした謎解きの物語です。
食事に訪れる客の誰もがミステリーを抱えている、と言っても良いのかも。
そのミステリーを、フランス料理を間において、ビストロ・パ・マルのスタッフがさらりと解いていきます。
さらりと解いてひとつの物語が淡々と終わるのですが、終わった後もこの客たちのその後がとても気になります。

乳製品アレルギーの安倍さん、食べ歩きのブログを書いている美佐子さん、一人息子を連れての再婚が決まった館野さん、肉料理大好きのカップルの犬飼さんとリンさん、大学教師の西田氏を待つパン屋のジュリーさん、トランスジェンダーの岸部さん、妊娠中の亜子さん、友人関係に悩む嗣麻子さん、彼女たちのその後は、満たされているのでしょうか?

日常全部が満たされていなくても、満たされている部分があるのなら、それはそれで幸せ。
ひとつ何かが解決しても、問題はまた生まれてくるものだと思うし、だからこそ、食べることは大事。

自分の家の手作りの食事も大切だけれど、時には、素敵な肩ひじ張らないあたたかい雰囲気のレストランで食事を楽しむ。
自分へのご褒美として、あるいは誰かのご褒美として。
だから、安倍さんのようにおしゃれをして、「特別」を楽しむことが出来たなら。
と、ジーンズの私に自戒を込めて。

それにしても、三舟シェフのお料理、ひと口でもいいから食べてみたい!!


本文より


そう、たとえば、密封されていたペッコフの香りが蓋を開けられると同時に広がるように、閉じ込められていた愛も、それに気づいた瞬間に心を満たすものなのかもしれない。

「同じ、人間なのにね」


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