トヨタの燃料電池車の特許の公開発表で、世界の携帯電話の規格争いの事例を思い
出した。
1980年代の後半に日本でもアナログで始まった携帯電話サービス。その後、ヨーロッパでは
各国バラバラのアナログ方式から域内を渡り歩くビジネスマンや旅行者のためにヨーロッパ
全体で使える新しいデジタル方式として GSM という携帯電話システムがスタートした。
このGSMの規格を策定するときに参加した企業(携帯電話のインフラ設備を提供、
ユーザーが使用する端末ではない)は、エリクソン、シーメンス、ノキア、アルカテルなどの
ヨーロッパのメーカーがメイン。日本のメーカーは参加できず、アメリカのモトローラも後から
加わった。
インフラの規格を策定する団体に参加したヨーロッパの各企業は、その後に発売される
端末のセールスも有利に展開して日本メーカーの端末はヨーロッパではほとんどシェアが
取れなかった。20年以上たった今も日本企業は低調。
スマホの時代に入り、アップル、サムスンががんばってシェアを伸ばしたが日本の端末は
相変わらず売れてない。
GSMに参加したヨーロッパ企業は、当時、各社の特許を無償で公開したり、参加している
企業間で クロスライセンス を結んでインフラと端末の開発を行った。そして、GSMの規格は
陸続きの中国でも採用され、各社は大きくビジネスを伸ばしたのである。
トヨタは、燃料電池車の開発・生産とインフラである水素ステーションの立地まで考えたら、
他社を巻き込んでいった方が結果的には儲かると踏んだんだろうか。
GSM(Wikipedia)
※参考 赤門マネジメント・レビュー7-1「GSM携帯電話の標準形成過程と欧州企業の
競争力構築のメカニズムについて」2007.12.6
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