のびのびのぶログ

水彩画や好きな音楽について語ります。なんでも伸び伸びと書いていきます。でも忙しくて更新が延び延びになるかも。

極めようとすると遠ざかる

2017年04月30日 19時48分12秒 | 日記
 絵を描き始めた頃、学んだ多くの水彩画の技法書たち。
 読むと早速試してみたくなって描いた数々の絵。
 でも次第に絵は技法だけでは感動を与えることができないことを多くの美術館で学んだ。
 この世には絵がうまい画家なんて巨万といる。
 自分の目が肥えるにしたがって、自分の絵にも満足できなくなってきた。そして制作の前に多くの時間を費やし、ああでもない。こうでもないと悩むようになってきた。
 「この絵は仕上がるまでどのくらいかかるんですか。」
 よく聞かれるのだが、絵の製作時間の範疇をどこに設定するかによって答えは違う。製作に前に費やした時間を含めれば、とても長い時間をその絵に費やしたことになる。しかし、かかった時間で絵の良し悪しは決まらない。私はそんなことを聞いて何になるのかと心の中でいつも思う。
 水彩画は、作者と水との戦いだ。水を制した絵かどうかが私は水彩画の良し悪しだと思っている。中国の水彩画家柳毅Liu Yiは、水彩画の名人だ。彼の製作過程を見ると、自分の未熟さに愕然とする。水を自由自在に操る。

 また、古くは日本の水墨画にその技術と精神を見いだすことができる。長谷川等伯の松林図屏風は、日本水墨画の極致だ。先週、新日曜美術館で視た海北友松(かいほうゆうしょう)の空気感も見事だ。水墨画も水と墨を自由に操る。しかも、墨は粒子が細かいので一度紙の上に落とせば、染み込んであとで容易に動かすことはできない。まさに一発勝負だ。日本の美術と西洋の美術はそこが大きな違い。つまり、日本の美術は、1枚の絵を描くのに、何千枚という経験と多くの時間を要しているのだ

 物事は極めれば極めるほど目的地が遠ざかる。
 芸術家の目的地は、同じ処に留まらない。

Slip sliding away,
Slip sliding away
You know the nearer your destination,
The more you slip sliding away

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