1 あゆみ
FID(For players with an Intellectual Disability)バスケットボール競技は、以前から知的障害者のスポーツとして奨励され、各地で散発的に行われていたが、1992年(平成4年)に開催された「ゆうあいピック東京大会」で初めて全国レベルの競技会が行われた比較的新しい競技である。
1997年(平成9年)に、パラリンピックにおいて正式種目として取り上げられることが決定し、2000年(平成12年)のシドニー・パラリンピック大会には世界各地から選手が集まり大会を盛り上げた。
このような経緯の中で、日本においては、1997年(平成9年)に日本知的障害者バスケットボール連盟の設立準備会が設けられるとともに、世界大会等へ選手を派遣し、選手強化を図ってきた。そして、1999年(平成11年)3月21日に日本FIDバスケットボール連盟が設立され、本格的に競技の普及、選手強化を図り、パラリンピック等世界大会への選手派遣等に力を入れているところである。
山口県においては、以前から養護学校や福祉施設等において、知的障害者の体力の維持・増進を図るとともに、余暇活動の有効な活用の一環としてバスケットボールが取り入れられていたが、1999年(平成11年)車椅子バスケットボール大会会場において、養護学校の生徒による親睦試合としてはじめて試合が行われた。また、下関市では、知的障害者がチームを作り、北九州等近隣のチームとの親睦試合を行っていた。
このような中、全国障害者スポーツ大会知的障害者バスケットボールの部中国・四国地区予選大会への参加のための県内予選が2004年(平成16年)2月に宇部市で行われ、県内の3チームが参加し、優勝した宇部養護学校バスケットボールクラブは中国・四国ブロック予選会に参加した。同年11月には、第1回山口県FIDバスケットボール大会(兼、平成17年全国障害者スポーツ大会中国・四国ブロック予選会)を開催し、県内5チームが参加、62名の選手が熱戦を繰り広げた。なお、優勝した宇部養護学校バスケットボールクラブは中国・四国ブロック予選会に出場した。
このように、山口県内においても選手やチーム数が増えるとともに、競技としての普及や選手強化を図るため、2004年(平成16年)11月28日に指導者を中心として山口県FIDバスケットボール連盟を設立し、大会を開催するようになった。また、関係者の支援により山口県バスケットボール協会に加入することができ、大会を円滑に運営できるとともに、競技力の向上につながってきた。
2011年(平成23年)に山口県で国体が開催されることが決まり、全国障害者スポーツ大会も開催されることから、山口県障害者スポーツ協会の支援を受け、組織をあげて、選手の発掘、強化に乗り出した。
2011年(平成23年)10月、第11回全国障害者スポーツ大会「おいでませ!山口大会」が開催され、知的障害者のバスケットボール競技は下松市で行われた。山口県代表は、男子が大阪市と、女子が愛知県と対戦したが、健闘むなしく敗退した。その後行われた交流戦では、女子が沖縄県、岡山県に勝利し、会場に駆けつけた県民と一緒になって歓声をあげた。
おいでませ!山口大会バスケ競技・車椅子バスケ競技公式サイト
おいでませ!山口大会バスケ競技・車椅子バスケ競技写真集
2 現在の活動
現在、山口県FIDバスケットボール連盟は、年2回の理事会を開き活動計画等を協議し運営に当たっている。
活動内容としては、県内大会の開催及び全国障害者スポーツ大会中国・四国ブロック予選会等への選手の派遣を行うとともに、競技人口を増やし、選手強化を図るため各地区での合同練習を行っている。
〔主な県内大会〕
(1) 山口県FIDバスケットボール選手権大会
(2) 山口県FIDバスケットボール交流大会
(3) 萩FIDバスケットボール交流大会
(4) 岩国FIDバスケットボール交流大会
(5) 近隣地域(島根・岡山・福岡・北九州)とのバスケットボール交流戦
〔主な県外大会〕
(1) 全国障害者スポーツ大会中国・四国ブロック予選会
(2) 西日本地区バスケットボール競技(知的)交流大会
(3) 福岡障がい者バスケットボール交歓会
(4) その他の大会
〔合同練習会〕
山口県障害者スポーツ協会の協力を得、知的障害者のバスケットボール競技の普及・強化のため、合同練習会等を開催している。
3 県内のチーム(23年度)
下関ブルーハリケーン(監督 喜志永尚則 選手15人)
球人(たまんちゅ)(監督 内山之彦 選手10人)
スピードストリート(監督 三浦吉博 選手12人)
田布施アスレチッククラブ(監督 永田芳久 選手12人)
山口シューティングスターズ(監督 津田邦晴 選手13人)
萩総クラブ(監督 三好尉仁 選手10人)
県立岩国総合支援学校(監督 横山正人 選手10人)
県立田布施総合支援学校(監督 永田芳久 選手8人)
県立防府総合支援学校(監督 藤井秀治 選手12人)
県立宇部総合支援学校(監督 繁村琢也 選手10人)
合計10チーム 登録選手112人
4 今後の展望
山口県内の総合支援学校の生徒や卒業生、福祉施設を利用しているスポーツ好きの仲間を中心として、バスケットボール競技ができる環境づくりに取り組んできた。この間、関係機関の支援や協力者、支援者の輪を広げながら山口県FIDバスケットボール連盟は、今年で9年目を迎えた。
現在、チーム数は10チームとなり、選手も110人を越えるまでになっている。チームプレーが苦手といわれていた選手たちは、合同練習や大会の度にたくましくなり、親睦を深めながら楽しい時間を過ごしている。
山口県で昨年(2011年)開催された全国障害者スポーツ大会「おいでませ!山口大会」では、全国各地区を勝ち抜いてきた強豪チームに県民と一体となり対戦できたこと、このことを通して、山口県においても知的障害者がバスケットボール競技に汗を流していることなど広く知られるようになってきた。
山口大会を契機に、現在、県内に6チームのクラブチームが定期的に練習をしており、県内の総合支援学校のクラブチームも4チームとなり、その中から優秀な選手を見いだし、全国大会へ出場できるよう全員でがんばっていきたい。
山口県では、山口県障害者スポーツ協会が中心となり、障害者スポーツについて、総合的に強化育成を図ってきた。また、山口県バスケットボール協会の協力を得ながら組織づくりや選手の発掘、強化を図ってきた。今後とも、このような体制の中で知的障害者のバスケットボール競技を普及強化していきたい。