風力発電製造拠点を目指す室蘭~苦肉の策か?
北海道や東北で洋上風力発電の適地が多く、計画も多いことから、室蘭市では洋上風力発電の製造拠点を目指して地元経済界の動きが活発化しています。製鉄所の関連会社が多いことから、室蘭の経済活性化に意欲満々のようです。(北九州市も風力発電製造拠点を目指しているようですが)
風力発電製造拠点化に揺れる?室蘭市の動きに着目した北海道新聞社は、「室蘭・洋上風力の針路~先進地北九州の事例から④地域住民の理解」と題して、報道しました(6月23日付)。北九州市若松沖で建設工事が始まった洋上風力発電25基の事業に対して、野鳥の会北九州支部がどのように対応してきたのか、その課題などについて5月に取材を受けたところです。
その掲載記事としては、「北九州響灘洋上ウインドファーム」が鳥類に及ぼす影響を懸念、風車に衝突するバードストライクの予防策を求めてきたが聞き入れられず、工事は3月に始まった。事業者と誘致した北九州市の不誠実な対応に憤っている。また、「AI監視カメラ」で風力発電周辺を飛ぶ野鳥を検知し、風車の回転を制御することで野鳥の衝突を低減できる可能性があるが、事業者は先駆的な対策には消極的だ。そして、事後調査の見直しを求めている。野鳥の会室蘭支部によると、室蘭はオオタカやハイタカの渡りのルート上で、洋上風車が建設されれば生態系に影響する可能性がある。北海道内では陸上の風力発電計画が住民の反対で中止されたこともあり、幅広い「住民の理解」を得るための手探りが続く。などが掲載されました。
「室蘭は5年前に石油会社の製造所が撤退し、製鉄所も年々規模を縮小。室蘭の街は衰退の一途。洋上風力発電に活路を見い出そうとするのは、もうほかに手がないから。」との見方もあります。秋田県も人口100万人を割り込み、その危機感から、風力発電事業の誘致に力を入れています。陸上風力発電事業を積極的に誘致して、地域起こしを図る?自治体も多いようですが、地元住民の理解を得ないまま進めて紛糾してしまうケースも少なくありません。北九州市が進める風力発電製造拠点化は、環境先進都市を自認する北九州市らしいとも言えますが、一番の目的は地元経済の活性化でしょう。しかし、経済活性化の手段としての風力発電にも“光と影”があり、その“影”は鳥類を代表とする野生生物への悪影響です。さらに、住民の意見軽視や、自然環境の破壊です。洋上風力発電も今から新たな問題(漁業への影響など)が出て来るでしょうが、海の中だけに影響がわかりにくいことが問題です。風力発電事業を誘致することが安直だとは言わないまでも、経済活性化や地域おこしだけをアピールするのではなく、地域住民や自然との共生を考えた上での慎重な取り組みが不可欠です。そうしないと、風力発電施設が “無用の長物”(むようのちょうぶつ)どころか、やっかい者扱いになるかもです。
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