闇猫日記

夢を完璧に思い出すのに時間がかかります。
思い出せずに忘れてしまう事もあります。

大きすぎる”モノ”で (7)

2021-09-14 12:44:00 | 小説
「あなた、お腹空いてる?何か食べたい物ある?」
「食べられる物なら…。」
「フフッ、ちゃんと美味しい物を出すわよ。」
久しぶりの食事だ!胸が高鳴ると同時に空腹である事を強く感じた。
すると、マダムが、
「今から朝食を買ってくるわ。ちょっと待っててね、フフッ。」
そう言って出かけて行った。作るわけじゃなんだな。丁度いい、部屋のベッドで寝てみよう。今まで固く冷たい場所で寝ていた。よく眠れない日々だったが、これでおさらばだ。
…やっぱりベッドはいい。

何を失うんだ?
それは…

…すごいわぁ、フフッ。
ん?マダムの声がする…帰ってきたのか…。
目を覚ますとマダムがいた。
「すごく大きいわぁ!胸元まであるんだもの。ウフフッ。」
!? 慌てて飛び起きた。マダムはバスローブを捲り、”モノ”を見ていた。
「何してるんですか?!」
「何って、別にいいじゃない。こんないいモノ隠してもったいないわ。」
「…もったいないって、これのせいで今までどんな目に遭ったか!…すみません、嫌なんですよ、もう…。」
「…ごめんなさいね…コンプレックスなのね。…さあ、朝ごはんにしましょ!」

テーブルにはクロワッサンとカフェオレがあった。バターの香りが食欲をそそる。
「私の朝はいつもこれよ。お店の人が驚いていたわ。誰かいるの?ってね。」
まだ温かいクロワッサンが一番美味しい物だと感じた。温かなカフェオレも幸せだ。2つぐらい買ってくれればよかったのに。
「とても美味しかったです。」
「それはよかったわ。私より早く食べ終わるなんて、よっぽどお腹が減ってたのね。」
「…あの、助けていただいてありがとうございます。」
「どうしたの、急に。」
「こんなどこの誰だか分からない男を家に入れるなんて…。」
「私はただ、お手伝いさんが欲しかっただけよ。あと、まぁ寂しいっていうのもあるけどね、フフッ。」
「そんな理由で…。」
「もういいじゃない。決めた事だからね。」
「それで、手伝いってどんな事をすればいいんですか?」
「掃除とか洗濯とか買い物とかかな。疲れてるでしょ?今日はゆっくりしてね。お手伝いさんは明日からでいいからね。」
「ありがとうございます。…ところで新しい服は…。」
「あっ!すっかり忘れてた!…探したんだけど、この家には男物の服が無いのよ。…でも、あなたって初めて会った時、黒いワンピースみたいな服着てたじゃない?そういうドレスみたいのでもいい?でもなんであなたってワンピース着てたのよ?」
「自分でも分かりません。教えて欲しいくらいです。自分が誰で、ここがどこかさえ分からない。今まで何をしてきたのか何も分からないんです。」
「あなた、記憶喪失なの?!」
マダムは驚き戸惑っていた。


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