子どもの「大人になったらなりたい職業」というのが少し前に発表になった。会社員とパティシェが男女それぞれ一位を占めた。二位もユーチューバーと漫画家となる。以下にも、なるほどと思えるような職業が並ぶ。これらの一つ一つを思ってみて、日本は平和だなとつくづく感じざるをえない。
よその国に行って子どもと話すとその国の国情や基本になるものがおおよそつかめる。作家の小田実氏もその著書に書いているが、小さな子に「大きくなったら何になりたい?」と聞く。するとおおよその子が「軍人になりたい」とか答えれば、その国はかなり軍人が幅をきかせている国らしい。
日本では「兵隊さんになりたい」と男の子みんなが答えたような話はとうの昔であり、軍人になりたいななどと答える子は今はいないであろう。
きっと子どもからみたらいろんなかっこいいあこがれの職業が上位をこれからも占めることだと思う。そしてその職業もきっとバラバラにいろんなものが出てくると思う。映画俳優から歌手やアイドルへ芸能界の主役は変わっても、この部分はスポーツ選手とともに強い。科学者やお嫁さんや会社員もあまり激減はないような気がする。
反面、ほとんどの子が画一的な同じような答えを出すようであれば、価値観が一元化されていて自由がない国のようだ。まさにわが国の封建時代がそうだった。侍になりたい、お姫様になりたいなどがその時代はかなりのウエートを占めていたらしい。
価値観が一元化されていて、多様化がないところには自由も平等もない。
政治も社会も、どうか今の子どもたちのように価値観が多様化されることを望む。国会議員が全員同じ考えで、まったく同意見というのははたして日本の真の意味での得策であろうかと考えてしまう。
政治も世の中も「みんな違ってみんないい」とは言わないけれど、自分の意見をしっかり持って前へ進む人がこれから少しずつあらわれることを望む。
画一的な社会にできるだけならないであってほしいと思う。
まだ何もこの世のことはわからぬが生まれた孫の声の確かさ
令和4年1月 「NHK短歌」 2月号
「つれづれ(100)子どもたちの将来の夢」