つい先日、茨城県のとある田舎を仲間たちと走った。カーブ道から急に開けた一面の蕎麦畑。5人のうちの誰からともなく、蕎麦畑だと叫んだとほぼ同時くらいに私はブレーキを踏み、通行の妨げないような端に車を停めた。そして一行10人でしばしその蕎麦の畑を見いいった。丈は多少不揃いだが、花の季節はもう過ぎたのかと思いこんでいたので、窓から見える景色にびっくりとよろこびを感じた。
数年前に車で日光からの帰りに田園地帯を走った時も、ちょうど今頃の季節、蕎麦の花がきれいに咲いていた。
そういえばつい三週間前に会津を訪ねた時にも帰路にそれは見事な一面の蕎麦の花を感無量の思いで見つめたことを思い出した。
ここ茨城は一面に蕎麦畑が開ける信州のような本場ではないが、やはり今の時期のこの景色は蕎麦好きの私にはうれしい姿であった。
あったというのは、8年と少し前からの蕎麦アレルギー。訳わからずに、いつの間にかそうなっていた。それ以来蕎麦はイメージだけの食物になってしまった。まあ、食べるよりは花の方が楽しみだと思えば、それでいいのかもしれない。
蕎麦は種子からそば粉を作る。
縄文時代の遺跡からすでにソバの花粉が確認されている。が、現在のような蕎麦になったのは江戸時代かららしい。けっこうその歴史の重みに、先人たちの労苦に敬意を表する。
8~9月頃、枝の先に房状の花序を伸ばし、5~6mmほどの白い小花をいくつも付ける。高温地帯や北海道などで多く栽培されているようだ。
種を蒔いてから60~80日で収穫ができるという、まことに都合の良い生育の早さだ。
あと一ヶ月もすればさすがに畑も盛りを過ぎ、もう花も終わりになるけれど。
残しておきたい田園風景の一つである。
蕎麦はまだ花でもてなす山路かな 芭蕉
「季節の花(29)蕎麦の花」