昨日は古河市で渡良瀬遊水地名物のヨシ焼が行われた。春に先がけ、新しい芽を息吹かせるために、遊水地内の草や植物を一斉に焼いてしまうという行事なのだが、もう何年も続いているこの時期の恒例イベントだ。
ご存知の通り、この遊水地は北海道を除けば、わが国では一番広い平原。管理は国有地になっているので、中には民家などはまったくない。
古河市と書いたが、正しくは近隣の市や町とで合同に行う行事である。
昨日は生憎所用で行けなかったので、一日遅れの今日、仲間5人とその焼け跡を見てきた。一面に焼けたその姿を見て、みんな今度は焼いているところを見たいなどと言っていた。
あれは何年前だったろうか。
8時5分に着いた時には駐車場はすでに満杯だった。それでもやっと一台分のスペースを見つけたときには、さすがにラッキーと思って喜んだことを覚えている。そんな時間スレスレのことを思い出した。
無料の甘酒を飲み終えて間もなくすぐ目の前で火入れがはじまる。その規模といい、火の勢いといい、さすがに野焼きだなと思いながら見つめた。同行のひとりが脇で「きれいね~」とつぶやく。四つ足の動物らしきものが葦の中から逃げ出したときは、その面白さに誰もが見入っていた。
あまりの近さに身も暖かくなってくる。なんといっても駐車場からこうして游水地全部を見渡せるのがうれしかった。おそらく20箇所くらいで野焼きの煙があちこち上っていたが、駐車場から全部を見られるというのはおそらくここだけだったろう。
その日はそれから昼食後、五人の足先が今度は少し傾斜の小径に向かった。かたくりの花を見るためである。
それは駐車場に着き、車を降りてのすぐの時だった。案内板にはここから5分と書いてある。だが私は「10分くらいはかかると思うよ」と言ってみせる。
右手にまだ季節には早い水芭蕉が見えてくる。湿地の中にわずかだがたしかに花を咲かせているのも見える。一行の中の一人が瞬間早くもカメラを向けている。
そして「かたくりの里」の入口にさしかかった時、携帯電話の時刻は13時42分をさしていた。結局ここまでは正味12分かかったことになる。
かたくりの花は可憐だ。誰かが、花はなぜ下を向いて咲いているのかということを携帯のインターネットで調べていた。次には「花言葉は何ですか?」とその画面に言葉で聞いている。
こんなふうに盛り上がっていることが私にはとてもうれしい。ドライブ一コマに、参加者が興味を示してくれる。それが私にとっては何よりも心強い。
カメラ好きな別の彼女がかたくりの花がよほど気に入ったようだ。なかなかカメラのシャッターを離さずに、未練たっぷりにあれこれ撮影していた仕草は私の心にしっかりと焼き付いた。
きれいな景色や物を見るのもうれしいが、こういうシーンもとってもいいものだと思った。
「つれづれ(185)渡良瀬游水地のヨシ焼きとかたくりの花」