あなたのいない現世
あなたの声が聞こえた気がして
ふりむいてもいるはずはなく
それでもやはりあきらめられなくて
宵闇にまぎれて忍び込む潮騒に
あなたの声を捜してしまう
かかえきれないたくさんの夢が
波間(なみま)を漂っているような気がして
あなたのいない朝にめざめ
あなたのいない時に沈みこむ
あなたのいない現世になど
何(なん)の未練もあるはずはなく
それでもやはりあきらめきれなくて
朝の光にまぎれて迷い込む風の香(か)に
あなたの吐息を捜してしまう
あふれくるたくさんのやさしさが
光と踊っているような気がして
あなたがいない時に憂い
あなたがいない夜に沈みゆく
会いたくて
会いたくて
会いたくて
(第四十六回 羽島市文芸祭 入賞)
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