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1日1論点1論証

憲法はコツコツやらないと!

併給禁止規定の合憲性

2006年04月06日 | 法の下の平等
【問題提起】
 障害福祉年金と児童扶養手当との併給禁止規定は、障害福祉年金受給者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関し区別を設ける点で、14条1項の法の下の平等に反し、違憲ではないか。

【判例】
 併給禁止規定が適切か否かの判断は、社会保障制度全般、各制度の目的、役割、国民感情当を考慮して、立法府の裁量によって総合的になされるべきである。この広汎な立法裁量を前提とした場合、上記区別は不合理なものとはいえない(判決では、障害福祉年金と児童扶養手当の性格を同じとしている)。

【反対説】
 生存権は生きる権利そのものであるから、精神的自由の場合に準じて、「事実上の実質的な合理的関連性」の基準によって差別の合理性を厳格に審査すべきである。

【備考】
論点p46
芦部p127
堀木訴訟

所得税の不平等の合憲性

2006年04月05日 | 法の下の平等
【問題提起】
 給与所得者のみに必要経費の実額控除を認めない旧所得税法の規定は、源泉徴収制度によって所得の補足率が他の所得と比べて著しく高くなる点において、法の下の平等(憲法14条1項)に反しないか。

【通説】
 租税法の定立は立法府の政策的・技術的判断に委ねるほかないので、立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することはできない。
 まず、給与所得にかかる必要経費につき、実額控除に伴う弊害を防止するため概算控除の制度を設けた目的は正当である。
 次に、給与所得者が自ら負担する必要経費実額が、一般に概算控除額を明らかに上回ると認めることは困難であり、給与所得に実額控除を認めないことは、上記目的との関連で著しく不合理であるとはいえない。
 よって、本規定は合憲である。ただし、必要経費が概算控除額を著しく上回るような場合は、適用違憲になると解すべきである。

【備考】
論点p46
芦部p126

女子の再婚禁止期間規定(民733)の合憲性

2006年04月04日 | 法の下の平等
【問題提起】
 女子のみにつき再婚禁止期間を規定している民法733条は、憲法14条の法の下の平等に反しないか。

【判例】
 733条の趣旨は、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある。合理的な根拠に基づき各人の法的取り扱いに区別を設けられるところは、憲法14条に違反するものではない。

【通説】
 14条1項後段列挙事由による区別に関する違憲審査基準としては厳格な審査基準を適用すべきである。具体的には、立法目的が必要不可欠であり、かつ、手段がその目的を達成するために必要最小限度である場合に限り合憲となると解するべきである。
 これを民法733条について考えると、民法733条の目的は、女性が離婚・再婚等の過程で子を出産した場合に、子の父が前の夫、後の夫のいずれであるかが不確定となるという事態を防止し、もって子供の福祉の安定および家庭生活の安定を図る点にある。このような目的は、成長過程にある子供の養育にとって父が確定し、両親が協力していくことが必要であることや、現代の複雑な家庭状況および再婚数の増加等の現状に鑑み、必要不可欠といえる。
 次に、手段について考える。前提として、民法772条2項の規定によれば、子が離婚等から300日以内に生まれれば前の夫の子と推定され、また、再婚から200日以降に生まれれば後の夫の子を推定される。したがって、確かに、離婚直後に再婚したような場合には、再婚後200日以降300日までの100日間について推定が重複することになり、不都合が生じる。
 しかし、推定が重複するのは最大で100日間なのであるから、100日程度の再婚禁止期間があれば上記目的を達成できるのであり、これを約80日も長く上回る6ヶ月という期間にわたって再婚を禁止するのは過度の制約であるといえる。
 よって、民法733条に規定された、女性の再婚を6ヶ月禁止するという手段は、上記目的のための手段として必要最小限度のものとはいえない。したがって、民法733条の規定は、男女平等に反し、憲法14条の「法の下の平等」に反しているので、違憲である。

【備考】
論点p44
芦部p129

非嫡出子の相続分規定の合憲性

2006年04月03日 | 法の下の平等
【問題提起】
 非嫡出子の相続分を嫡出子の二分の一とする旨を定める民法900条4項但書は合憲か。非嫡出子と嫡出子を相続において差別しており、14条に違反するのではないかが問題となる。

【判例】
 相続制度をどのように定めるかは伝統、社会事情、国民感情、家族観等を総合的に考慮した立法府の合理的な裁量判断に委ねられている。民法900条4項但書の規定は、法律婚の尊重と非嫡出子の保護との調整を図った規定であり、遺言による相続分の指定等がない場合などにおいて補充的に機能する規定であることをも考慮すれば、本規定における嫡出子と非嫡出子の法定相続分の区別は、その立法理由に合理的な根拠があり、かつ、その区別が立法理由との関連で著しく不合理なものでなく、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められる限り、14条1項違反とはいえない。

【反対意見】
 嫡出子と非嫡出子との間の取り扱いの差異の合憲性が争われる場合、違憲審査基準としては「厳格な合理性」基準が適用されるべきである。
 出生について何の責任も負わない非嫡出子をそのことを理由として法律上差別することは、婚姻の尊重・保護という立法目的の枠を超えるものであり、立法目的と手段との実質的関連性は認められないから、本規定は14条1項に反し違憲である。

【備考】
高橋等p276
芦部p130

積極的差別解消措置と14条

2006年04月02日 | 法の下の平等
【問題提起】
 積極的差別解消措置の14条違反が問題になる場合、いかなる違憲審査基準が適用されるべきか。

【通説】
 積極的差別解消措置は、歴史的に差別を受けてきたグループに優先的処遇を与えることにより、機会の均等を回復し実態に応ずる合理的な平等を実現するものである。よって、人種による差別のような14条後段列挙事由による差別の合憲性が争われる場合には、逆差別の問題も考慮して、厳格な合理性の基準によるべきである。

【保留事項】
 芦部には「逆差別の問題も生じるので」という理由付けで厳格な合理性の基準を用いているが、どういう論理なのかいまいち不明確

【備考】
芦部p122

平等違反の違憲審査基準

2006年04月01日 | 法の下の平等
【問題提起】
 憲法14条違反にはいかなる違憲審査基準が適用されるか。

【通説】
 14条1項後段の規定は、前段の平等原則を例示的に説明したものであるが、後段列挙事由による差別は原則として不合理なものであるから、それによる差別の合憲性が争われた場合には、「厳格審査」基準または「厳格な合理性」基準を適用するべきである。
 14条1項後段列挙事由以外の事由による差別の合憲性が争われた場合には、二重の基準の考え方に基づき、立法目的と達成手段との二つの側面から合理性の有無を判断するべきである。具体的には、精神的自由に関する問題の場合には「厳格審査」基準を、経済的自由の消極目的規制の場合には「厳格な合理性」基準を、経済的自由の積極的規制の場合には合理的根拠の基準を適用すべきである。

【備考】
芦部p125
高橋等p269

法の下の平等は法内容の平等を含むか

2006年03月31日 | 法の下の平等
【問題提起】
 法の下の平等は、法の適用についての平等だけでなく、法の内容についての平等も含むか。14条からは明らかでないので問題となる。

【通説】
 この点につき、14条1項後段の差別の禁止は立法者をも拘束するが、前段は法適用の平等を意味し、立法者を拘束しないとする見解がある。
 しかし、法の内容自体に不平等があるときに、それを平等に適用しても平等の保障は実現されず、個人尊厳の原理が無意味に帰する。よって、法の下の平等は、法の適用についての平等だけでなく、法の内容についての平等も含むと解すべきである。

【備考】
高橋等p264