日本と韓国との「従軍慰安婦」・「植民地支配」・「強制連行」問題への対応について、「従軍慰安婦」については前回に述べたが、今度は日本と韓国との「植民地支配」・「強制連行」問題への対応について述べたい。
結局この件は、”過去の「植民地支配」をいかに清算するか”ということと思う。
現在(2021/5月)、日本国政府は日本と韓国との「植民地支配」・「強制連行」問題については1965年の”日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約 ”にて解決済みとの立場をとっている。これまでの韓国の「従軍慰安婦」問題への対応(韓国政府の度重なる謝罪要求とそれぞれの謝罪への一応の納得および蒸し返し、”超法規的”運動団体の存在)を鑑みれば、この立場をとらざるを得ないことは理解できる。また国際法的にもロジックはあっていると思われる。個人請求権については諸説あるようではあるが。
日本政府が日本人の元軍人・軍属とその遺族に支払った金額は累計で約33兆円である。日本政府が第2次世界大戦関連で対外的に支払った金額は約1兆円である。インフレがあるので単純な累計での比較は正確ではないが、この差はやはりいかにも大きい。過去日本政府が戦時賠償金額をアジア諸国と決めていった時は、日本が今のように繁栄するとは想像しなかったことがこの差を生んだとも言える。
今の日本の繁栄を見れば(勿論、終戦直後と比べてのことで現在はけっこう”陰り”も大きくなってはいる。)、今からこの差の部分を ”過去の「植民地支配」の清算”に使うことは選択としてはあると思う。しかし、実際に日本国政府・国民にとって過去の植民地支配の清算のために、再度(個人)賠償を支払うということは、これはほぼ日本国政府・国民に「聖人君子」になれということに等しいと思う。実際には不可能だ。
韓国の知識人には”日本人は本質的に不道徳である。”という認識がままあるそうではあるが、それが当たっているとは思えない。その一方、日本人が「聖人君子」になりえるとも思えない。要は世界中の人々と同様、俗人の集合である。
欧米各国の過去の植民地支配への対応について調べてみた。近年になって過去の植民地支配については不道徳な行いであったという反省が見られるようになってきているようだ。十分ではないが、過去の植民地支配への”謝罪”のようなものがヨーロッパの国家元首により出ることも散見される。(実際には「過去の植民地支配への謝罪」ではなく「植民地独立戦争時の植民地側への過度の暴力への謝罪」が表明されることが多いようだ。)
しかし欧米各国による「植民地支配への賠償」が行われたとのニュースを発見はできない。フランスはハイチの独立時に賠償を支払ったのでなく、支払わせている。唯一発見できるのは”イタリアが損害賠償金として50億ドル(約5400億円)をリビアのインフラ整備に還元した形で今後25年に渡り支払う。”という記事で、これもカダフィ大佐の失脚にて実際に今どうなっているかは不明。欧米各国の過去の植民地支配への金銭的「賠償」は基本的にこのイタリア・リビアのケース以外にはないとの理解である。
(もし、他に欧米諸国により植民地支配への「賠償」が支払われている事実があればご教示を乞う。)
このような欧米各国の過去の植民地支配への対応の中で、日本政府は韓国に対し、1965年の”日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約 ”にて「経済協力金」を支払っている。両者(欧米各国と日本の”過去の植民地支配への対応・賠償”)の比較が、日本政府・国民が再度(個人)賠償を支払うということが日本国政府・国民に世界でもまれな「聖人君子」になれということに等しいと考える理由である。
そこで日本と韓国との「植民地支配」・「強制連行」問題へどう対応するかの結論であるが、これは南アフリカでなされ、それなりの成功を収めたと言われる「真実和解委員会」の"植民地版"を世界的に作って(場所は国連?)、過去植民地支配を行った国と被支配国にて真実(その不正義の内容)解明と和解を図るしかないと考える。
欧米各国がそろって過去の植民地支配での不正義への対応を行っていく中で日本も同時に過去の植民地支配への賠償を再度支払うことは、日本のみ聖人君子になることではなくなり、可能と考えられる。
南アフリカの「真実和解委員会」は賠償にはこだわらず、アパルトヘイト制度での不正義への真実の究明と和解に重きを置いたと聞いている。この世界的”植民地版”「真実和解委員会」では同じことが言えるとは思う。
(この世界的”植民地版”「真実和解委員会」を作るという提案はとてつももない大ぶろしきであるな。
一市民の私が提案しても実現はしないであろうが、よい案ではあると思う.......。他に方法があるだろうか?
もちろん世界的”植民地版”「真実和解委員会」は実現せず、日韓は永遠にいがみ合いを続けるし、21世紀中ずっと、旧植民地とその旧宗主国は過去の植民地支配での不正義をめぐって争い続けるのだ。)