トランプが関税でいろいろと世間を騒がせているが、トランプの世界観にはアメリカが貿易赤字という形で世界からずっとカモにされてきているという被害者意識があるようだ。またバンス副大統領もその著書・ヒルビリーエレジーからも分かるように置き去りにされた白人貧困層の恨みがその行動・言説の根源にあるように見える。そしてまたトランプ政権で大きな力をふるっているイーロン・マスクも南アフリカで権力を失った白人の悲哀を見てきたことへの恨みがその行動の底にあると言われる。
つまりアメリカ大統領・副大統領そして大きな力を今は持っているイーロン・マスクの3人、つまり今のアメリカの権力の中枢は結局、彼らの被害者意識・まわりへの恨みにて動いているように見える。
トランプ関連のニュースは多々あれど、その中で特に気になるものがあった。一つは時事通信(4/11/2025)で「米最高裁、誤送還移民の帰還命じる トランプ政権が応じるか焦点」との記事。エルサルバドルへ誤送還された移民をアメリカに戻せという米最高裁の指示をトランプが無視するのでは?との内容。
もう一つはロイター(4/11/2025)で「JPモルガン幹部、関税について全てを語れず 黒塗りリポートも」という記事。JPモルガンの幹部が自分の発表したいことの関税についてのかなりの部分を黒塗りして発表したとの内容。
前者はつまりアメリカの最高裁の指示つまり司法の決定に対し行政が従うか?との疑問が出ているとのこと。後者はつまりJPモルガンの幹部でさえも自分の言いたいことをそのまま言うことが今のアメリカでははばかられるということ。
これらは結局今のアメリカではほんの数か月前まで当たり前であった民主主義の建前(あくまで建前ではあるが)が通用しなくなっているということではないのか?
プーチンはソビエト連邦を崩壊に追い込んだ西側を恨み、ロシア帝国の再興を夢見ているとの論評は多い。
習近平は清朝を半植民地状態にして苦しめた西欧や中国大陸に軍隊を入れた日本を恨み、中華帝国の再興を夢見ているという論評もまた多い。
トランプは民主主義より権威主義的国家へ親近感を持っていて、三権分立や言論の自由を憎んでいて、権威主義的方向へアメリカを持って行こうとしているのでは?とよく評されているが、上記の時事通信やロイターのニュースからはまさにその方向へアメリカが進んでいるような感触がある。そしてトランプはご存じ”MAGA”を叫んでいる。
米中ロがともに恨み・被害者意識を根底にした権威主義国家または権威主義国家へ向かう途中で、それぞれが覇権国家の再興を夢見ているということだとしたら、今後の世界は暗いとしか言いようがない。悲しいことに。(2025/4/12)
2025/4/20追記
4/15のテレ朝のニュースで「トランプ大統領 ”手違い”で強制送還された移民男性の帰還求めない意向 エルサルバドル大統領も帰還させない考え強調」という記事が出た。民主主義国では本音はともかくも司法の最終決定には従うふりをするものだ。このトランプとエルサルバドル大統領の会談では最低限、手違いで強制送還された男性をアメリカへ戻すようにエルサルバドル大統領に要請はすべきだった。最低限のそれさえもしなかったとのは三権分立の建前無視だ。
これからもトランプ政権による移民の移送や関税問題や大学への補助金とかで司法判断が多く出るだろう。それらをすべてトランプが無視するなら、もうアメリカは専制国家へ向かい走り始めていると考えるより他ない。アメリカの民主主義の草の根の強さというものを信じてきたが、もうそれも怪しくなってしまったのだろうか?