every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

Painted It Black 黒く塗りつぶされた

2013-02-01 | 雑記
話題にすること自体がまんまと運営側の術中にはまってしまうようだし、この騒動の根底にある動きに加担するようで嫌なんだけど…。

峯岸みなみ丸刈り騒動に物凄く暗澹とした思いを覚えさせられている。
予め名言しておくと自分はAKBどころかアイドル全般に興味がありません。友人/知人にアイドル好きな人は少なくないから彼らの話を聞いたり、宇多丸『マブ論』読んだりしてもピンと来ない。理屈じゃなくてアイドルを楽しむセンスが欠けているんだと思います。

そんな自分ですが(だからこそ?)今回の件は超えてはならない一線を越えてしまったと思いました。

“1.勝手に衝動的に剃ってあの散切りっぽさなら見栄えを気にしないはずなのであんなにちゃんとメイクしてるのはおかしい

2.やってしまったなら仕方が無いから…で、スタッフがメイクさんを用意して体裁整えたなら坊主も整ってないとおかしい

3.あの照明は完全にスタジオ

っていう3点はどうしても気になってしまう。”



これにつきるんですけど、これが受け入れられる若しくは話題になると判断するにいたった風潮に対して厭世感を覚えているんだと思うんです、自分は。


運営側が発表しているように坊主頭になったのは峯岸みなみさん自身の意思だと思います。また、このように話題になる事で"芸能人"として生き残ろうという計算もあったとは思います。

が、オレが嫌気を感じるのは二十歳の子にそこまで思いつめさせる構造とそれを受け入れる社会の風潮、まさにそこなんですよ。

芸能事務所というのはそうやって思いつめてしまうパフォーマーを守る、マネージメントする役割もあると思うんですよ。だからこそ、発生するギャランティの多くを取って行ける訳で。

それを止めないどころか、高画質動画でWEBにあげるというのがありえない。
彼女自身が今回の出来事にショックを覚えているのは明らかです。あの表情は演技ではないでしょう(逆に演技だとしたら物凄く名女優になると思うので、その時はまんまと騙されましたチャンチャンで終わりですが)。多くの人が経験するように、そういった心の傷は時間が治してくれます。しかし、このようにWEBで動画をあげられてことにより、半永久的にカサブタは剥がされ続けます。何回もカサブタ剥がされたら、それは痛々しい傷跡になるわけです。

「芸能人になる人なんて図太い人」とも言えますし、それはある側面では事実だと思います。しかし、一部の例外を除いて、予め図太くて強い人なんていないわけで。多くの人はカサブタの上にさらにカサブタが出来て面の皮が厚くなっていくわけです。その代わり内面はボロボロですよ。


一番嫌なのはこの背景にあるものがブラック企業の論理と同じところです。つまり"代わりなんていくらでもいる"し短期的に売上げを上げなくてはいけないから人材を使い捨てにするという風潮です。

長らく日本はデフレ社会ですが、何より人間の価値というものが下落していると感じます。つまり日本全体がブラック企業化されてしまっているんですよ。黒く塗りつぶされたわけです。


だから、つまりこれはAKBファンだとかアイドル・ファンとかに限った話ではなくて、多くの日本に住む人間に関わってくる問題だと考えずにいられないのですよ……。

追記:「言ったら負け」って言う風潮込みで運営側は計算してると思うのですよ。所謂炎上マーケティング的な。その閾値を超えないと何も変らないどころか状況はどんどん悪化するだけ。訳知り顔で過ごしてたら、どんどんエスカレートして次は切腹とかなりかねない。

あと、この事務所、華原朋美も所属していた事務所じゃんか! あの人に何が起きて、何故ああなったのか近くで見てきたはずだろ。何の反省も学習もないのかよ。





デフレ化するセックス (宝島社新書)
中村 淳彦宝島社 ( 2012-12-10 )ISBN: 9784800202932



更に追記(2013-02-02)
他のAKB措置とは違って本人の意思を感じる。つまり、そこまでひとりの人間を追い込んでいるところにこそ嫌悪感を覚える。文春の記事を含め演出だと考えるけれど、ここまで騒ぎになるのは計算違いだったんじゃないか。


"計算”ではベリーショートくらいに落ち着くはずだったんだけれど、本人が思いの他思いつめて丸坊主になったのではないか。…これはせめてそうであってくれという願いに近いけど。

本人の自由意志で選んだ心算で選ばされていた……っていうのはよくある話なので。

〈選択〉の神話――自由の国アメリカの不自由
ケント・グリーンフィールド
紀伊國屋書店 ( 2012-12-13 )
ISBN: 9784314011013



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