《落日菴執事の記》 会津八一の学芸の世界へ

和歌・書・東洋美術史研究と多方面に活躍した学藝人・ 会津八一(1881-1956)に関する情報等を発信。

會津八一を偲ぶ会2023

2023年11月30日 | 日記







 さる11月23日、墓所のある東京練馬の法融寺で、会津八一を偲ぶ会が四年ぶりに行われた。八一が他界した翌年、つまり、昭和32年から行われていた法要が、幾たびかの変遷を経て、発展的に現在の「會津八一を偲ぶ会」になった。

 かつては門弟が集まって先師を偲ぶ法要だったのだろうが、今では、誰もが参加できるミニ学会のようなイベントとなっている。

 ご住職の読経、焼香の後、次の研究発表があった。鈴木勉『会津八一門下生と早大書道会』松山薫『横山有策と会津八一』植竹雄太『会津八一と堀辰雄ー死者からのまなざし』中根広秋『喜多上氏の追悼文集』佐藤宗達『拓本の話』いずれも、歌、書、東洋美術、英文学と幅広く活躍した八一の多面的な魅力に切り込んだもので聞き応えがあった。また複製の八一の色紙や風呂敷などの記念品の抽選会もあり、大いに盛り上がった。参加者は40名弱。











小津安二郎の審美眼@茅ヶ崎市美術館

2023年11月04日 | 日記
茅ヶ崎市美術館に『小津安二郎の審美眼』展を見に出かけた。

小津安二郎の作品『秋刀魚の味』に八一の作品が小道具として用いられていることは、以前書いたが、それをまた見ることができた。

八一の書は、歌集『鹿鳴集』の「印象」の一首であった。印象は中国古代の詩を八一が和歌に翻案したもの。

耿湋作
返照入閭巷 憂来誰共語
古道少人行 秋風動禾黍
八一歌
いりひさすきびのうらはをひるがへしかぜこそわたれゆくひともなし

漢詩は秋のきび畑全体の印象を詠うが、八一は和歌に翻案するにあたり、一陣の風をクローズアップして、静物画的な漢詩を、映像化しており、見事な出来栄えである。


それにしても小津安二郎の本物志向には驚かされる。一瞬映るだけの絵にも大家のそれを使わないと気が済まない巨匠のこだわりはたいへんなものだ。

『小津安二郎全日記』の1953年3月8日の項には、『表具が来て会津八一の軸を持つてくる』との記述があり、小林正樹監督を通じて、八一の作品を手に入れたことがわかる。

茅ヶ崎にはかつて、小津が贔屓にした旅舎があり、その縁で本展覧会を開いたようだ。

かつての茅ヶ崎の海岸が映画のロケ地にも使わらているという。
この茅ヶ崎は、蓼科と並んで小津安二郎の留魂の地なのだろう。













美術館のそばにあるカトリック茅ヶ崎教会。この建物も小津好みだと思う。