作曲:千原英喜
世界史でキリスト教をやっていることもあって(?)
今回はこの曲。
名作ですね。男声にも編曲されています。
タイトルの「おらしょ」とは
ラテン語の「Oratio」(=祈り)が日本語に転訛したもの。
副題に隠れ切支丹の歌、とあるように
江戸時代、異端として迫害を受けながらも
密かにキリスト教の信仰を続けたカクレキリシタンたちの悲哀と祈りの歌。
彼らの伝承歌や中世・ルネサンスの聖歌などをベースに
千原作品ならではの独創的な音世界が広がっている。
間宮芳生に師事したこともあってか千原氏、
複数の音素材を融合させ一つの作品にしてしまう術に
とても長けていますよね。
ちなみに同じく千原英喜作曲の「どちりなきりしたん」は姉妹作。
こちらもいつか紹介できたら…
《Ⅰ》
―Alleluia
ひとつ唄いましょ はばかりながらヨ
唄のあやまりャ サーマ
エー ごめんなりよ
(中略)
泣いてくれるな 出舟のときはヨ
沖で櫓櫂の サーマ
エー 手につかぬよ
Alleluia ―
第一楽章。長崎平戸島の「五島ハイヤ節」が素材。
グレゴリオ聖歌の旋律も聞こえてくる。
キリシタン迫害の手から逃げるために
故郷を棄てた信者達の望郷の念が歌われる。
幻想的なハーモニーが聴く者を曲の世界にいざなう。
《Ⅱ》
―きりやれんず きりすてれんず きりやれんず
Kirye,eleison.Christe,eleison.Kirye,eleison.
(中略)
ばんじにかないたもう てんちをつくりたまいて
おんおやでうす(Deus)の そのおひとりご
われらがおんあるじ ぜずきりすと(Jesu Christo)
しんじたてまつる
(中略)
あんめいいえぞすまりや(Amen Jesus Maria)
Kirye,eleison.Christe,eleison.Kirye,eleison.―
作品の中心的楽章。
「みぜれめん」や「ぐるりよおざ」等の伝承歌が素材。
グレゴリオ聖歌の旋律もクロッシングしてくる。
祈りの歌はカクレキリシタンたちに歌い継がれていくうちに
日本語に転訛し旋律も日本的なものになっていった。
カクレキリシタンたちの神への熱い思いが力強く響く。
コンクールでも良く取り上げられる。
なかでも第59回全日本合唱コンクールでの
CANTUS ANIMAEの演奏が素晴らしい。
一音一音にドラマがあり、魂が込められている。
生で聴きたかったなあ。。
《Ⅲ》
―汐は半から満ちネ
月ャ八さがるヨ
こころぼそさヨ 鳥のこえ
(中略)
獅子の泣き唄よ 仏の前でね
ひとつ歌えば 供養になる
アー 参ロヤナ 参ロヤナァ
パライゾノ寺二ゾ 参ロヤナァ
パライゾノ寺トワ 申スルヤナァ
広イナア狭イワ ワガ胸二 アルゾヤナァ
(中略)
獅子はよいところよ 朝日を浴びてね
お山颪の そよそよと
Alleluia―
第三楽章。
平戸島の獅子の泣き唄といくつかの伝承歌が素材。
一番好きな楽章かも。
泣き唄の哀愁漂う節回しと伝承歌の勇壮な節回しと…
特に「参ロヤナァ」の部分から
「獅子はよいところよ」に回帰してくるのところがぐっとくる。。
こうして中世、隠れ切支丹たちの世界は遠ざかっていく…
《Ⅰ》
《Ⅱ》
《Ⅲ》
※権利関係がよく分からないため迷ったのですが
この音源のCD(大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団による)が
完売、絶版状態にあることを考えて掲載しました。
当ブログの著作権管理にご意見のある方はお手数ですがコメントお願いします。
楽譜は→おらしょ (カクレキリシタン3つの歌) [混声]
いや、嘘っすww
調べたら、伝承詞ということで
著作権消滅してるとJASRACが言ってたおw
ってか、許可なしに歌詞をまるまる転載しているサイトがあるくらいだから
中略を使いつつの一部転載なら許せる範囲だと思う。
権利のお話については
また後日改めて、別記事で書こうと思います。
基本的に作曲者や演奏者の利益を損なうこと、
創作意欲を害するようなことはしたくないので
これからもお気づきの点がありましたら
よろしくお願いします。
P.S.プレイヤーが変わってニコ動、良くなりましたね!
全曲歌いたいっす。
曲もいいですが、シュッツの演奏もすばらしいです。
少なくともピッチや和声感に関しては国内トップレベルの団体だと思います。