京都市伏見区久我東町2-22 「蕎麦工房 膳」 【1310】

京都盆地の南部に位置する、ちょうど桂川の西側に沿って南北に走る「府道123号線」の、「妙心寺」から1ブロック先路地を入った、狭い住宅地の一角に在る手打ち蕎麦の専門店です。
京都では名の知れたお蕎麦屋さんですが、この辺りの地理に詳しい方でなければ、おいそれとは訪れることは出来ませんので(特に路地に入る道は、車1台分の幅しかありません)ナビは必須と言えます。

残念ながら現在は★を失ったものの、2011年、12年と2年連続でミシュラン1つ星を獲得した超優良店であると同時に、営業日が金・土・日の3日間だけ、更に営業時間がお昼の3時間半のみ(売り切れの場合あり)と、ハードルの高さも並大抵ではありません。

玄関脇のメッセージボードには、その日の蕎麦の産地がさり気無くアナウンスされています。

厨房に面したカウンター席と、長テーブル席が1つと言うコンパクトな造りの店内は、約16名の収容能力しかありませんので、開店前に到着しないと行列必至です(勿論この日は10分前に来ましたよ)
また店内に流れるBGMはジャズで、コレはご主人の趣味だとか(一般的にお蕎麦屋さんで流れるのは、何故かクラッシックが多いですね)

お品書き。
「もりそば1本 1,000円!」と、正に自信が漲っていますね。

先ず直前に鮫肌で擂られたワサビとネギ、若干辛口のかえしの効いたツユが運ばれてきます。

此処のスタイルは「細挽き」と「荒挽き」の2種類が、ハーフハーフのセットとなっており、最初は挽きぐるみの「細挽き」が登場です。
淡い色の細麺仕立ての十割で、一口含むと舌触り、しなり、歯切れと、どれも一級品といえる食感であり、これだけ技術の高さがはっきりと分かる蕎麦は滅多にありません。

「荒挽き」の外皮ヌキ。
ここまで荒挽きだと「麺切れ」は仕方ないが、蕎麦本来の「ズズッと啜る」ことが出来ず「変化球の蕎麦」と言った方が良いかもね。 但しその荒挽きにより、啜らずとも十分香りが立ち、素材の力で補っているところは流石と言える。

その後出てきた、外皮を抜いた蕎麦の実。
頬張ると素朴で素直な味わいが、口中に広がります。

成程過去の栄光とは言え、流石にその技術の高さは想像以上のものでした。 大げさかもしれませんが、シンプルなれど、その奥に潜む「神業」をおぼろげに感じ取ることが出来ました。
神経を研ぎ澄まし、また出直して来ます。 ご馳走様でした。