ポケットとコーヒー

ポケットとコーヒー
あの日は秋晴れで日陰にはいると少し肌寒いちょうど今頃の季節だった。その日は商社の部長と２０００万円の印刷機械を売る為に同行訪問する事になっていた。待合場所は神戸の元町にある商社の事務所だった。待合時間は９：００だった。そこで、僕は少し早起きして、神戸の港の海岸を散策して清々しい気持ちで事務所にいった。事務所で挨拶してから早速、印刷会社にいく事になった。部長の足元からなんとなく異音がする。下駄を履いていた。（部長、下駄でいいんですか）と言うと部長は（かまへん。）と言った。人の営業スタイルを別に詮索してもしかたがないし、要は売れればいいんだからと自分に言い聞かして印刷会社に到着。部長はポケットに手を突っ込んだまま事務所に入ると、いきなり（おばはん、コーヒー２ついれてくれや）と言った。おばはんとよばれた女性は意に介すること無くコーヒーを持ってきてくれた。３人で雑談をしていると社長が入ってきて（おい、加奈子わしにも、茶いれてくれや）といった。なんと、おばはんは社長の奥さんだったのだ。それから、部長は契約書を取り出し社長に（わしも忙しいからすぐ契約書書いてや）といった。社長はいそいそと契約書を書き出した。契約書をもらって事務所でる時、部長は（おい、もうちょっとこの辺きれいに掃除しとけよ。）と言ってでた。本当に好き放題言う部長だった。それから、帰り際、部長は僕にボソリと言った。（なんで、あんな好き放題通ると思う。実はあそこにある機械買う時の保証人ワシやねん。今日の契約の分もな。あの社長とワシは一蓮托生や。それとあちこちの印刷会社と取引しているワシが保証人になると言う事はこの先印刷物がみこめると言う事であの社長にとっては、２重の意味で安心なわけや）

午前中で契約とれた事もあり、その日は六甲山山頂で昼食をとり大好きなユーミンのカセットを聞きながら昼寝をしてから夕方会社にもどった。のどかな午後だった。