車止めピロー:旧館

  理阿弥の 題詠blog投稿 および 選歌・鑑賞など

ほたるさんのうた

2009年11月25日 | 八首選 - 題詠2009
ほたるさんの歌から8首。


080:午後
溶けきった氷で二層になっている午後のカルピス薄まる母性

079:恥
恥ずかしい過去だけ舐める動物をペットショップで買い与えられ

071:痩
痩せていく猫の背中の鍵盤をなぞれば生命(いのち)のか細さ響く

062:坂
坂道で落としたリンゴ 手を離す赤い風船 あるいはあなた

055:式
ねじ巻き式オルゴールが鳴り終わるまで静かな静かなくちづけをして

041:越
越えられぬかなしい夜に抱いている灰色猫の残した重さ

028:透明
透明な傘のクラゲが寄り添って孤独分け合うマルキュー前で

009:ふわふわ
ふわふわの綿毛を飛ばすくちびるはほんの一瞬無防備になる



9番。
無防備になるのは、その唇か、こちらの心か。

62番。
取り返しのつかないこと、けして戻らないもの。そして人。
追いかけることでしか距離を縮められない悲しみ。

71番。
背中の鍵盤。
衰えた猫に触れたことがなくとも、その感触を読み手の掌に蘇らせる。
いつまでもそっと奏でてやりたくなるような、優しい歌。

2 コメント

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ありがとうございます! (ほたる)
2009-11-28 09:44:19
はじめまして!ご挨拶が遅くなりました。


ご丁寧に選歌してくださってありがとうございます。

41と71番は、大切にしていたうちの猫のクーのことを詠いました。
哀しくて切なくていまでも忘れることができません。
理阿弥さんのお心に響いたなら嬉しいです。


理阿弥さんのお歌、025:氷、048:逢、074:肩が印象に残りました。
どれも冷たくて寂しいお歌でした。

拙い私の歌を観賞してくださり、本当にありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします(^_-)-☆
おはようございます (理阿弥)
2009-11-28 10:47:05
はじめまして。
完走、お疲れ様でした

私も中学生のころに飼い犬を亡くしましたが、
彼の姿や声、触れ合った感触、匂いは未だに覚えていますよ。
ほたるさんのお歌に、私の心の奥にあったものを揺り動かされました。

それと、拙作も読んでいただいて、ありがとうございます。下手糞で恥ずかしいのですが・・・

たくさん、すばらしいお歌を読ませていただきました、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

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