私は随分前から栃を釣具の部品に使っていました。
栃は比較的柔らかく、軽い素材です。
そして木目がきれい。
ただ、ウレタンで仕上げていた当時は
加工に気を遣う(削り出すときに刃物をよく研いでおかないとささくれる)、
ウレタン塗料を多く吸い込み、経年によって塗料を含んだ木自体が黄色く変色する。
ウレタン塗装しても木自体が柔らかいので打ち傷を付けた際、
木がへこみ塗装との間に空間ができ白濁化する(硬化したウレレタン塗料の硬度と
木の硬度に差がある)。
などの理由で少し苦手な素材でした。
漆を使うようになって、随分栃への評価は変わりました。
まず、木自体漆をかなり吸い込むので、強度がぐっと上がります。
しっかり木固め(希釈した漆を含浸させる)すれば木の強度が漆の強度に近づく感じです。
厚めの素材を使えば、木の内側に空気の層を閉じ込めることが出来るので、
魔法瓶的な保温効果も期待できます。
打ち傷を付けた際も、表面の漆塗装が木と一緒に動くので白濁・剥がれも起こりにくい(拭漆仕上げの場合)。
拭漆で表面に現れる杢目も濃淡がきれいだと思います。
現在では椀・釣具部品(リールシート)ともに栃を中心に製作していますが、
素材の入手が困難になってきている(木の流通が少ないようです)のが悩みです。