
まだメロンがうちの子になって間もない頃のことだが、近くの
自然公園に行ったことがある。
そこは古墳や遺跡もあり、園内には博物館も併設されていて、
出土した縄文・弥生時代の埴輪や土器などが陳列されている。
観光客も訪れる人気のスポットでもあるが、広い自然公園の中を
散策する人はほとんどいないといってよい。
かつて小学生の一行が自由研究のため訪れて、出逢ったことがあった。
メロンの周りには女の子が数人集まって来て、「可愛い~、可愛い~~」
といつものように触りまくる始末だった。
メロンも迷惑そうなので、ボール遊びを見せてあげることにした。
テニスボールを広い芝生広場に投げると、追っかけて取りに行く
いつもの大好きなボール拾いだ。
それと、メロンにはもうひとつ特技がある。
テニスボールを地面にワンバウンドさせると、口でキャッチする技だ。
五回のうち3~4回は成功する、いわばメロンの十八番(おはこ)だ。
児童たちも大勢集まってきて、拍手喝采を浴びた。
メロンも子供たちもひとしきり遊んで愉しんだ。
暫くして園内を散策していると、背広を着た中年の職員らしい人に
声をかけられた。
「あのう、園内はペットをご遠慮願いたいのですが・・・」
と、申し訳なさそうに言うのである。
この公園は「ペット持込禁止」の表示はなかったので、
そのことを問い質すと、職員は「案内板が間に合わないので」
と奇妙な応答であった。
職員の言い方や印象が悪くなかったので、ことを荒げるつもりは
なかったが、ちゃんとした理由が聞きたかった。
「どうしてペット禁止になさるのですか?」と私。
「この自然園には小動物がたくさんいますので、犬は・・・」
と歯切れが悪い。
「うちの子は鑑札も付けてるし、予防注射もしてます」
「それに住民登録だって・・・」
「病気がうつるといけませんので」職員は困ったように言う。
「各種の予防注射をしてますから、その心配はありませんが」と私。
「いえ、キツネの病気がうつるといけませんから」
「はあ!?」
私たちは返答に困ってしまった。そして妻と顔を見合わせた。
「キツネやたぬきに予防注射が必要ですのね」
妻がやんわりと皮肉を言うと、
職員は「すみませんが、お願いします」と頭を下げた。
家族同然のペットを連れて入れる場所や施設が日本は少ない。
飼主のマナーに原因があるのだろうが、ペットは全て駄目!
というくくり方に納得がいかない。
鑑札や注射済みの証書、糞を始末する袋などを所持している者は
立入を許可するなど条件付きで認めるべきだと思う。