2019年に発表された論文によると、陰謀論にはまりやすい人は自分たちの理念に反する事実にあまり驚かないのだそう。
無知であると発生し、無知であり続けると厄介なことになる陰謀論、もしくはそれを崇拝する陰謀論者。
陰謀論者は陰謀論を強く信仰し、共有し、そして推し進める。その行為1つ1つが陰謀論を信仰する自分を正当化するものであり、それを共有する仲間とのコミュニティを保つ手段であるため、彼らは断行する。
他者から嫌がられても、嫌われても、批判されても断行する。他者からの嫌悪ですらも、自分たちの正当化に用いるぐらいにはしぶとく続ける。
だからこそ今日まで嫌がられてきたし、陰謀論が根強く在り続けている。
ただ、人間は1つのことを辛抱強く続けるのにはあまり向いていない構造だ。
人間は年単位でその好みが変わるぐらいには変化し続ける生物だ。私が知る人間は、ある日を境に突然囲碁を始めたりキャンプに出掛けたり筋トレし始めたり馬券買い始めたりと、目まぐるしくその趣味を変えている。
少々の情報と熱意で、この変わりようだ。挙げた人間は少々特殊だが。
だから信仰心が強い陰謀論者でも、真っ当な事実にさらされ続ければ信じる理念の矛盾に気づき、行動に変化が現れると思うのだが……。
どうやらそういう訳でもないらしい。
人間の脳には「自分の予想通りか」に反応し発生する信号がある。
端的に言うと、自分の予想通りの事象が発生したときは小さく反応し、自分の予想外の事象が発生したときは大きく反応し、学習に影響を与えるというもの。
信号の差分があることで、予想外の事象に反応できるという仕組みだ。
で、陰謀論への信仰はこの信号の差分が小さいほどに強くなっていった。
つまり彼らにとって予想外である真っ当な事実への反応が薄くなれば、突かれた矛盾を無視できてしまうということ。そしてこれは彼らがより陰謀論を信仰しやすくなる土台にもなってしまうのだ。
「科学的な根拠……? まぁ、そういう意見もありますわよねえ」
陰謀論者は情報に対して、悪い意味で鈍感なのかもしれない。
参考文献
Michael Kiang,Justice Cupid et al. (2019) Religiosity is associated with less prediction of the typical: An event-related brain potential study