基本的に、学業成績とやる気(意欲・関心・好奇心)には強固な関係があり、やる気の高さは学業成績の高さとしてあらわれる。
が、そのあらわれ方には少しクセがあり、少なくとも「できる、できる、君ならできる!」と鼓舞するだけではやる気も、やる気による向上も見込めない。
やる気は成績に対する即効かつ即応的な向上策ではなく、その育成と発現にはかなりの時間とコストを要する。
なぜ時間とコストがかかるのか。
それは、やる気が成績向上に関与するまでの経路に理由がある。
逆引きで答えよう。
まず、成績向上のためには継続的な学習が必要となる。
次に、継続的な学習は無から発生するわけではなく、何かしらの理由、それも対象が納得するような理由が必要となる。
また、対象が納得する理由は外部から与えるよりも、対象自身が見つけ出したほうがはるかに速い。
なので、対象が納得する理由を対象自身が導き出すために、やる気を引き出す必要があるのだ。
やる気は基本的に、対象の『自律意志の尊重』『能力の妥当な評価と対策』『拒絶の回避と敬意の表明』が満たされた場合に発生する。
外部から与えられる理由(他者からの提言など)、つまり統制的動機は基本的にやる気の効果を阻害する。が、外部に存在する理由(成績評価など)を必要なものだとして自身に取り込む、いわゆる内在化はやる気を補強する。
そうして発生したやる気は対象なりの学習するための理由を導き出し、継続的な学習を促すようになる。
結果として、継続的な学習が成績向上に結び付くのだ。
やる気は継続的な学習を促し、成績を向上させる。
その効果量は対象元来の能力がもたらすそれに負けず劣らずである。
やる気がもたらすものを、甘く見ないほうがいい。
参考文献
Richard M.Ryan and Edward L.Deci (2020) Intrinsic and extrinsic motivation from a self-determination theory perspective:Definitions, theory, practices, and future directions.
Pedro J Teixeira, Eliana V Carraça et al. (2012) Exercise, physical activity, and self-determination theory A systematic review.
Geneviève Taylor,Tomas Jungert et al. (2014) A self-determination theory approach to predicting school achievement over time the unique role of intrinsic motivation.
Sophie von Stumm(2011) The Hungry Mind Intellectual Curiosity Is the Third Pillar of Academic Performance.