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ばりん3g

サクナヒメと農業:ゲームを用いた学習と自己決定理論から導く稲作へのやる気

※画像は実際に私が携わった水田

私は地元で(まがいなりにも)稲作をしている。

また農業だ自然だと論議する場も経験したことがある。

その類の人々との交流も少なからず持っている。

ゆえに私のところには、時々「耕作放棄地の活用案を求む」といった問いや議論のお誘いが降ってくる。

農家でも農学専攻でもないのに、不思議な話である。

 

で、経緯はおいておくが、先日もその類の問いを投げかけられた。

「若者に稲作への興味を植え付けるにはどうすればいい?」

「稲作に興味を持っている人の、そのやる気の維持には何が必要だ?」

年代層問わず農業従事者が減少傾向にある現状、従事者を増やすための策についてはいつかは問われるだろうなと思っていた。

「……私に問うのは、いわゆる人選ミスというものでは?」と心うちで思いつつも、その問いに答えることにしよう。

 

なお今回は「やる気を出すためにはどうすれば」という純粋なものとして問いを定義する。農業関連の雇用とか教育とかは詳しくないので。

 

 

 

Q:若者に農業への興味を植え付けるにはどうすればいい?

A:天穂のサクナヒメを遊んでもらう。

いくらかの考察のうえ、私はそう返した。

 

なぜ私がそう返したのか。

私がおこなった考察とは。

ひとつひとつ、説明していこう。

 

 

 

『天穂のサクナヒメ』とは手作業での稲作を忠実に再現した和風アクションRPGのこと。

機械や化学肥料などが普及する前の、時代劇の背景になっているような昔ながらの稲作をシミュレートできる作品だ。

シミュレートの出来は「攻略wikiは農林水産省発行のお米のつくり方Q&A」とうたわれるほど。現実での試行が転用できるぐらいリアル志向なんだよこのゲーム。

その完成度と話題性から"令和の米騒動"とまで言われた代物だ。

 

 

 

言い忘れていたが、このブログ記事のプレイ画像はすべて私が遊んだ時のものである。一応、ゲームクリアもしている。

記事を書くぐらいなので、そこはしっかりやらせていただきました。

 

「とても良かった」ことを延々と垂れるのはまたの機会にして。

今回の策は、そのリアル志向の稲作のシミュレートに焦点をあてたものとなる。

 

今回の策で主張したいことは2つ。

「稲作とはなにをすることなのかをはっきりさせる」ことと、

「ゲームが持つやる気に訴える要素」だ。

 

 

 

目標を設定するということは、私たちがやる気を起こすうえで重要なものとなってくる。

基本的に、私たちは「なにをすればいいのか」がわかっている時にやる気が起きやすく、そうでないときはやる気が起きづらいのだ。

 

また、自分がどんな判断を下せばいいのか、自分の能力はそこで活きるのか、自分の活動で周りが揺さぶられるか、というやる気を起こすための3つの要素に対し、目標はそれぞれの判断基準としての役割を果たす。

目標がなければ、自分がどんな判断を下せばいいのかわからないし、

逆に目標があれば、自分の能力が生かせるかどうかの判別がつく、といった感じで。

 

主張の1つ目、稲作とはなにをすることなのかをはっきりさせる。

サクナヒメは「攻略wikiは農林水産省発行のお米のつくり方Q&A」とうたわれるほどにリアル志向であり、その進行は機械化された現代の稲作においてもおおむね通じるものである。

サクナヒメで稲作の大まかな道筋を覚え、現実の稲作における「なにをすればいいのか」への理解を増やすことで、やる気が起こりやすくなるのではないだろうか。

 

 

 

「なにをすればいいのか」への理解を増やすだけなら稲作に関する教育ビデオでも効力を発揮しそうだが、ここで少しひねりを入れる。

サクナヒメは手作業での稲作を忠実に再現した和風アクションRPGだ。

つまり、れっきとしたゲームであり、もしかすると「ゲームが持つやる気に訴える要素」が使えるかもしれないのだ。

 

ゲームはその構造上、私たちのやる気をこれでもかというぐらい煽る[参考]

ゲームにより煽られたやる気は、ゲーム内でシミュレートされる稲作にも伝播していく。

興が乗ることで、シミュレートされる稲作への理解はより深まりやすくなるはずである。

 

また、プレイ体験による現実での稲作との強い関連性を導き出す可能性も考えられる。

「種籾選別の次は育苗で、同じ時ぐらいに田起こしもするんだよね。サクナヒメでやったことある!」というような、プレイ体験を想起することで得られるやる気もあるのではと推測する。

 

 

 

この考察は「サクナヒメのプレイ体験が、実際の稲作に対するやる気につながるのか」が詰め切れなかったため、あくまでも推測の域を出ないものである。

また、サクナヒメはあくまでもゲームであり、ゲームと勉強ではその動機に多少の違いが確認されているという点からも、やる気につながるかどうかが不明瞭である。

さらに、サクナヒメでシミュレートされる稲作は最適化されたものであり、現実の稲作とは乖離している点も多く、それがどう影響するかもはかり切れていない。

 

以上の点を踏まえ、

リアル志向な稲作のシミュレートを遊ぶことで稲作の大筋を知り、またプレイ体験も持つことで、稲作へのやる気が起こりやすくなるのでは。

という考察を、今回の問いに対する返答とする。

 

 

参考文献

Christa Krijgsman,Tim Mainhard et al. (2019) Do goal clarification and process feedback positively affect students’ need-based experiences A quasi-experimental study grounded in Self-Determination Theory.

ChristaKrijgsman,TimMainhard et al. (2018) Where to go and how to get there Goal clarification, process feedback and students’ need satisfaction and frustration from lesson to lesson.

Eric Zhi FengLiu,Po-Kuang Chen (2013) The Effect of Game-Based Learning on Students’ Learning Performance in Science Learning – A Case of “Conveyance Go”.

İsmail HakkıErten (2014) Interaction between Academic Motivation and Student Teachers’ Academic Achievement.

Leen Haerens,Christa Krijgsman et al. (2018) How does knowledge about the criteria for an upcoming test relate to adolescents’ situational motivation in physical education A self-determination theory approach.

Luc G. Pelletier,Stéphanie Dion et al. (2006) Why Do People Fail to Adopt Environmental Protective Behaviors Toward a Taxonomy of Environmental Amotivation1.

Sarit Barzilai,Ina Blau (2013) Scaffolding game-based learning Impact on learning achievements, perceived learning, and game experiences.


論文を参考にいろいろ喋るブログです。

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