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ばりん3g

山本五十六「やってみせ」には心理学的な裏付けができる。

昔々、日本には山本五十六という人物がいたという。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E4%BA%94%E5%8D%81%E5%85%AD

私は歴史に疎いので詳細は知らないが、1918年からナショナルジオグラフィックを購買していた海軍大将って事だけ知っている。

 

で、この人はある有名な名言を残している。

「やってみせ 言って聞かせて させてみて 褒めてやらねば 人は動かじ

 話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず

 やっている 姿を感謝で 見守って 信頼せねば 人は実らず」

よく自己啓発系の記事でお目にかかるこの名言だが、実はここで語られている要素は心理学的に正しいことだったりする。

 

心理学には自律性支援という概念が存在する。平たく言えば指導対象の考えていることや思っていること、やりたいことを否定せず、合理的かつ寛容な受け答えを以て接する指導スタイルのことを指す。

指導対象から質問がきた時には「良い質問ですね!」と返したり、対象が行き詰っている時に「こうしたほうが楽に解けるよ」とさりげなくアドバイスを提供したり、対象が心折れそうなときは「頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるって(rya」って熱く応援したり。

まぁ、優しくて真摯で強かな教員、と言われてすぐに思いつくような姿でだいたいあってる。

 

自律性支援にもいろいろな定義や構成要素があるが、今回はオーソドックスなReeve & Jang (2006) を用いて名言を分析していく。

1文目の「褒めてやらねば 人は動かじ」は"Praise as informational feedback"に該当。指導対象の上達や習得に応じた誉め言葉は、彼らにとっての報われとして機能する。

2文目の「話し合い」は"time student talking"に該当。指導対象に対して一方的に話すのではなく、彼らに話の主導権を渡し話し合うことは、彼らの意思決定や効力感に正の効果を与える。

2文目の「耳を傾け」は"Time listening"に該当。なにか言いたいことがあるのだけれど口ごもるような、指導対象のちょっとした意思表示に応えることは、彼らに意思表示が難しくないことを証明すると同義である。

2文目の「任せてやらねば 人は育たず」と3文目の「やっている 姿を感謝で 見守って 信頼せねば 人は実らず」は"Time allowing student to work in own way"に該当。指導対象の「これやってみたい!」という意思表示に応え、実行を許可し、見守る姿勢は彼らの意思決定や効力感の向上に必須のプロセスである。

 

とまぁ、大雑把に分析してみたが、どうだろう。個人的には、自律性支援の項目を説明していると解釈できる部分が予想以上に多くてびっくりしている。

指導対象の考えや思いに耳を傾け、これを無下に否定することをせず。また彼らの「やってみたい」という意志に下手に口出しせず、これを見守る。そして、その成果や努力をしっかり誉める。

名言から自律性支援の要素を抽出するとこんな感じ。

わぁ、とってもいいこといってる(小並感)。 

これは伸びるね(確信)。

 

ちなみに、今回の分析では省略したが、一文目の「やってみせ」も正のロールモデル提示を意味し、これもとても重要である。Mayer (2003)の理屈で行けば、お手本の提示は口頭での指示よりも何倍も効率が良いんだ。

また、この名言は"Communicating perspective-taking statements"などの指導対象への支援に関連する項目への言及がない。どこか放任主義というか、彼らの自律さに委ねているところは否めない。この名言をこのまま受け取った場合、彼らが困り顔で助けを求めても、それに応えない状況が生まれかねないので注意してほしい。

 

この名言はいつ生まれたのだろうか。いつ生まれたとしても、山本五十六が存命中には自律性支援はおろか内発的動機付けという概念もなかったはず。だってまだこの時Skinner (1938) をはじめとした行動主義が主流だったんだもの。

そのことを考えた場合、この名言はかなり先進的だった可能性がある。

 

 

参考文献

Reeve, J., & Jang, H. (2006). What teachers say and do to support students' autonomy during a learning activity. Journal of Educational Psychology, 98(1), 209–218. https://doi.org/10.1037/0022-0663.98.1.209


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