マリの朗読と作詞作曲

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ぼろぼろな駝鳥(高村光太郎)

2021年11月16日 | 詩の朗読

 

昔の動物園は

動物にとって残酷で劣悪な場所だった。

最近の動物園の展示スペースは

広さも環境もよく整えられて、

動物たちのストレスも少なそうだ。

見ていてつらくない。

 

 

「ぼろぼろな駝鳥」は、

昭和初期に書かれた詩である。

光太郎が何を思って書いたかは知らない。

が、そこにあるのは、

思うように羽ばたけない焦りと苦しみであり、

自分を含めた全状況への

怒りと絶望ではなかったのか。

 

ぼろぼろな駝鳥(高村光太郎)

 

 

ぼろぼろな駝鳥   高村光太郎

何が面白くて駝鳥を飼うのだ。

動物園の四坪半のぬかるみの中では、

脚が大股過ぎるぢゃないか。

頸があんまり長過ぎるぢゃないか。

雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢゃないか。

腹がへるから堅パンも喰ふだらうが、

駝鳥の眼は遠くばかり見てゐるぢゃないか。

身も世もない様に燃えてゐるぢゃないか。

瑠璃色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまへてゐるぢゃないか。

あの小さな素朴な頭が無辺大の夢で逆まいてゐるぢゃないか。

これはもう駝鳥ぢゃないぢゃないか。

人間よ、

もう止せ、こんな事は。

 

 

 

高村光太郎(1883年~1956年)は、

東京生まれの詩人、歌人、彫刻家、画家。

詩集「智恵子抄」が有名。

父は高村光雲、妻は高村知恵子。

 

 



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