漆工芸・スクラッチボード画/前田浩利のブログです。

日本の線画―前田浩利の仕事/銅版画・スクラッチボード画のすべて。

《漆工芸/貝合わせ》前田浩利の漆芸・千年の伝統 平安女君の遊具。―(2)

2015年06月12日 | 前田伝統漆工房
       
    伝統漆工芸家/前田浩利・書 画
         《貝合わせ》
  千年の伝承/宮中文化の華・王朝女君の遊具

  
  山紫水明の京
  花鳥風月は王朝びとの心――

  桜を散らす一瞬の風の動きに、清渓に落ちる水の流れに 流麗な 「くずれる仮名の美」 を育んだ王朝女君の美意識は、
 典雅を第一義とした華麗なサロン遊宴から、情感あふれる和歌や優雅なやまと絵を生み、育てあげました。
 貝合わせは、平安独特の「合わせ」の趣向と美学から生まれた王朝びとの遊び心で、この小さな愛すべき美の誕生となり
 永遠に時代のシンボル、伝統的遊具として伝承され引き継がれてきました。桃山時代から江戸期の武家典礼では、
 これを婚礼調度の第一義と定められ、華麗な輿入れ行列の先端を飾ったといわれています。一寸余談になりますが
 徳川家、池田家の豪華な貝桶に保存されている貝合わせは別格にしても、昔は全国の由緒ある旧家の床の間には
 貝合わせの一対がさりげなく飾られており、大和絵の源氏絵がゆかしい風情をかもしだしていたものです。
  時代の流れには、あらゆる文物資料も劣化を免れません。それは“味”なのか風流なのか―、いずれにしても江戸期に
 描かれた貝合わせ作品は、ほとんど見ることができなくなりました。 現代では多くの人が自分流のテーマで
 斬新な作品をつくり楽しまれています。


  「風流貝合わせ」の誕生です。
「貝合わせ」が、千年の伝統だといっても私達がいま、平安時代の源氏絵をそっくり似せて描き残すことは不可能でしょう。
また、そのように無理して復元することもないと思います。私は私のオリジナルで挑戦しようと思えば、
風流貝合わせの誕生となりますね。私の室礼品(しつらい)は、私だけのもの―
千年前の時代の大先輩たちの伝承を敬愛しつつも、「わたしの貝合わせ作品を見てください」という気持ちです。
私は平安中期の藤原公任が選んだ歌集・三十六歌仙の歌聖の姿とその歌ごころを、この一対の貝の内面に表現したいと思いました。
  前田浩利制作〈貝合わせ・三十六歌仙〉の誕生です。
   
  





和紙が誘う極みの世界-------
  天女の舞さながらに、合わせる彩りはいにしえ人の世界です

   薄い手漉き和紙を継ぎ貼りし重ね貼りしながら歌聖の歌心をイメージします。
  花鳥風月 山紫水明は、たなびく霞の色にあり、織りなす色彩は平安王朝のすでに幻想の世界です。

  風景のイメージはすべて薄いちぎり和紙で構成します。時には色墨流しなども用います。流れる雲、
  四季の彩りのなかで渓流のながれ落ちる音の響きすらも醸成できるような気持ちです。絵筆で描く色つけは、
  最後の留めのイメージです。歌聖の肖像と和歌の制作は、世界のあらゆる画材の中から選び抜いた素材を
  使用しています。また、歌聖の歌の書は、読みづらい変体仮名はできるだけ使用せずに、平易な仮名文字
  のみで書きました。文字は黒漆を使用しますが歌詞によっては、色漆をも使用します。貝の内面は、和紙の継ぎ
  貼りや金銀砂子を散らしたりしていますから凹凸があり、本漆のねばりが細い仮名文字に適しています。

  手漉き和紙や民芸紙、特殊芸術紙等を継ぎ貼り、重ね貼りをして制作しますから接着には
  私は透明なウレタン樹脂を使用しています。本漆をはじめ各種素材を使用しますが、制作工程は、
  あらためてご説明します。
  


  
  
  


   
   



   
在原業平
   世の中にたえて桜のなかりせば春のこころはのどけからまし








   紀 貫 之
   桜ちる木の下風はさむからてそらにしられぬ雪そふりける





 







  前田浩利・書 画
E-mail:maeda8@ion.ocn.ne.jp
http://www.maeda-urushi.com
 《前田伝統漆工房》〒554-0002/大阪市此花区伝法2-1-54
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