漆工芸・スクラッチボード画/前田浩利のブログです。

日本の線画―前田浩利の仕事/銅版画・スクラッチボード画のすべて。

漆工芸/前田浩利 3・11大震災を刻画。―(7)

2015年07月18日 | 漆工芸/前田浩利
3・11宮城南三陸町―崩壊の7分間。

 
〈漆〉                       
宮城県本吉郡南三陸町―なだらかな傾陵に広がる美しい集落の
 あらゆる構造物は、海側から丘を乗り越えて来た津波によって、2分で崩壊が始まり7分で壊滅した。


 濁流の轟音、瓦礫の木っ端微塵に崩れる音、崩壊する民家の土煙りのなかで
 鳴り響くサイレン、人々の絶叫、悲鳴が--------なだらかな丘の集落は、一舜にして瓦礫の丘と化した。
   作品原版の大きさ(70×45㎝)・ 部分


  荒れ狂う小波は濁流となって―

  丘を越えた津波は、複雑な小波となって右に左に跳ね回り、はげしく構造物に直撃する。
  複雑に破壊された瓦礫は固まりとなって、さらなる瓦礫を砕く。
  (部分)
  


 



 
  
  
  私の漆工芸は「沈金」という技法です。
  大版の漆塗りの原版に、小刀を当て線を刻み、その刻みに生漆を擦り込んだ後、
  金銀粉や色彩粉を蒔き完成します。小刀は、世のあらゆる鉄ペンやナイフを応用し、自分流に研ぎ直し
  形を整えて使用しています。漆工芸1500年の歴史の中で考案された伝統の「沈金刀」は存在しますが
  私は使用していません。私の線刻画「沈金」は、一本の線にこだわり、その線の集積によってあらゆる対象、
  風景を描出し、三次元的な絵画空間を演出します。
  (部分拡大)
  
  
  
   


 
  早い!津波は早い!―
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  凄まじい早さで集落を崩壊してゆく映像を見て「私の出来ることをしょう―」
  皆がそう決意して立ち上がることでしょう。漆線刻画一筋の40年です。
  砂煙と瓦礫の中で死にゆく人びとを、私の技術が力量不足でも描かずにはいられない。
  「命がおわる、命が奪われる」 この真実をわたしなりの手段で伝え残そう。
  私の漆工芸・沈金の技法こそは、それにふさわしいと信じつつ。 前田浩利・記

 
 





 



 

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