作業所に行かないのかと問うと、今日は休みだと答えたので、ウダウダしてないで走って来いというと、意外にもあっさりと着替えて出て行ってしまった。
ちょっと拍子抜けしつつ、遅れてならじとこちらも着替えて小僧を追うが、すでに影形も見当たらない。
土手を10km走って帰ってきたが、まだ小僧は戻らず、電話も通じない。
まったく、かあちゃんと同じで鉄砲玉なんだからと諦めかけたら、昼過ぎにようやく電話があり、水元公園まで19.2kmを走ってきたと興奮気味で報告された。
ハイハイ、そりゃぁすごいねぇとおだてつつ、とっととシャワーを浴びて駅まで来ないとメシ抜きだぞ、と脅して急き立てた。
せっかく小僧が休みだから、両国の「江戸東京博物館」で開催されているハズの「龍馬伝」を見に行こうと考えたのだ。
べつに小僧なしでもいいのだが、小僧の「愛の手帳」で東京都の施設は付き添いまで無料になるので、こいつはひとつその恩恵に預かろうとスケベ心を出してしまったのだ。
見たいものがたくさんあるので、悠長に昼飯なんぞ食べていると時間がなくなるから、駅の立ち食いでさっさと済ませ両国駅へ。
駅から出て博物館のポスターを見ると、
が~ん !!
すでに「龍馬伝」は終わって、次の展示に変わっているやないけ !!!!!
唖然として小僧を振り返ると、さも当然のような顔で、
「とっくに終了です」
しゃあしゃあと答えたので、
「オマエ、知ってたのか」
と聞くと、
「知ってたよ。とぅ~ぜん」
知ってたらなんで、言わないんだよ。
わざわざ急いで両国まで来て、ちゃんこでも喰って帰れってかぁ・・・・・
仕方がない。
オヤジのチェックが甘かったのだ。
しかし、こうなったらタダで帰るものか。
その時、稲妻のようなひらめきで思いついた
そうだこの近くに、龍馬の師匠の「勝海舟」の生誕地があるじゃないか。
よし、そこへ行こう
途中、回向院で「鼠小僧」や初代「中村勘三郎」の墓、「猫に小判」のお話しの元になったと思われる猫塚などを見て、
(若い娘が熱心に石を削って袋につめていた。何の願い事があるのだろう )
「吉良上野介」の本所松坂町の屋敷跡を過ぎ、ちょうど本所警察署の裏手の公園にある「勝海舟」の生誕地に着いた。
そこでようやく満足して、表通りまで出たところで、昨日の事件に遭遇したのだ。
マヌケなオヤジの勘違いで、思わぬ発見をしたりして、人生何がおこるかわかりません。
「勝海舟」先生のべらんめいな啖呵が聞こえそうだ。
「へん、べらぼうめ。世の中ぁ思い通りにいかねぇもんさ。渡りに船でついつい~っと乗っかってる能天気な奴ぁ、船底に穴が開いてることも知らねぇのよ。せいぜいおめぇさん方、気をつけなよ」
ちゃん、ちゃん
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