お好み夜話-Ver2

調子コキ誕生秘話

月曜日の夜のカウンターでのことであった。


調子コキ2代目と認めてあげたかった「ハマちゃん」の、あまりにももの知らずな言動に、唖然としていたところへ、なんと、元祖調子コキの師匠ともいうべきチョキチョキの先輩が「シゲちゃん」とともに現れた。

ロンドンへ修行に行った調子コキ「バーバーくん」は、もともとの馬鹿野郎体質に、その先輩の調子コキエッセンスを取り入れ、さらにパワーアップして自家薬籠中の技として身につけたふしがあった。

その先輩が、壊れた落語家みたいな酔っぱらい口調で、「ハマちゃん」を評してこういった。

「まだまだ、ヤロウなんかションベンだ。あの馬鹿野郎たぁ比べもんになんねぇぜ」

注:この方々にションベンといわれたら、そうとうダメダメちゃんなのである。しかし、飲食店のカウンターでションベンを連発されたら、さすがにオヤジもだまっちゃいない。しばしば注意を促し、しまいにゃうるさい !!と言ってしまうのである。

ここにいない「バーバーくん」をさんざんこきおろしながらも、懐かしそうに、顔は笑っているのだ。

その模様を、ロンドンの「バーバーくん」へメールしたら、調子コキの返事が返ってきた。

「若造どもには 調子コキとはこうやるんだと 教えてあげますよv(>ω・*)  お楽しみに!!!

PS このところ ロンドン調子コキ通信(イケメン若旦那)が アップされていません
マラソンもいいのですが こちらもお忘れなく!」


ロンドンでますます調子コキぶりに磨きをかけているんだそうな。
そして、自分のことをもっとネタにしろと要求しているのだ。

なんでオヤジが、馬鹿野郎の調子コキを宣伝しなきゃならんのだ
フン、それほどネタにしてほしいのなら、おもろい写メでも送ってきやがれってんだ。

しかし、「ハマちゃん」や他のチームモグランボの若手は、「バーバーくん」がどんな馬鹿野郎か知らないので、旧ブログで2年前の今頃にアップした「さらばバーバーくん !! 」より、調子コキ誕生秘話を抜粋して再録します。
すこし長い話になりますが、ぜひお付き合いのほど・・・・・

【「バーバーくん」誕生秘話 或いは「バーバーくん」宇宙人説】





1978年(昭和53年)6月12日17時14分44秒、M7.4の地震が発生した。

日本海溝の大陸プレート側を震源とする地震で、過去に何度も繰り返し発生している。
いわゆる「宮城県沖地震」である。

当時人口およそ65万人の大都市・仙台が経験した、初めての都市型地震災害で、家屋倒壊被害が甚大であったため、この地震以降の建物は1981年に改正建築基準法が施行され、耐震強化などがなされた。
1995年の阪神・淡路大震災発生まで都市が経験した地震災害としては最も甚大なものであった。


「おれはそん時、山さ隠ってただ・・・・」

遠い目をして「帝王」が呟いた。

(注 : 帝王とは、「バーバーくん」のお父さ・・・お兄さんにして、国分町で知らぬものはない、つまり帝王ってこと)


宮城県と秋田県、さらに山形県の県境に近く、「鬼首峠」からさらに山奥へ分け入ったところに、地図にはのっていない集落がある。
ベテランのマタギか古寺の住職ぐらいしかその存在を知らない幻の村、誰がつけたかその名を「へっこり村」と呼ぶ。
30代の「帝王」は猟銃とゴルフクラブを担ぎ、道なき道を彷徨いこの村に辿り着いたのだった。

「おれはゴルフがうめぐなりてがったのさぁ。いづの日かゴルフの聖地せんと・あんどりゅーすでプレイしてみだくでさぁ、そんでこの山さ隠って修行しでだのさぁ」

「へっこり村」は知る人ぞ知る山岳ゴルフ発祥の地といわれ、かつて「ジャック・ニクラス」もこの地を目指したが、吹雪に阻まれついにこの村を発見できずに断念したという経緯がある。

「帝王」は炭焼き小屋にこもり、飯を食い、ボールを打ち、鹿を撃ち、また飯を食い、7日目のこ夕方、すなわち6月12日の17時14分、薄闇の西の空から轟音とともに落ちてくる火の玉を目撃した。

と同時に、大地をズンと揺るがす不気味な震動に見舞われ、とっさに手に取った猟銃を構えながら火の玉の落下地点へ走った。
木々をなぎ倒し山の斜面にめり込んだ飛来物は、サザエの殻のような形状をした犬小屋ほどの大きさで、まだ表面がブスブスといぶっていたが、平たい底面のフタが外れ内部が見えていた。
猟銃で狙いをつけながらそっと中をのぞいた「帝王」は、フワフワしたおがくずのようなものの上で蠢いている異様な生物を発見した。

「おら、ちょべっとたまげたけんども、よっぐ見たらなんだべこいず、めちゃこぐてめんこい感じでさぁ、そっからかかえで小屋さ戻ったのさ」

江戸時代の書物の中に、その時「帝王」が持ち帰ったのと同じ種類の生き物の絵がある。

落ちてきた奇獣「雷獣」
寛政8年(1796)6月15日の大雷の夜、肥後国熊本に落ちてきたという。
毛の長さは3寸五分(約11センチ)で黒かったと記されている。

その獣が長じてどうなったかまではその書物には記されていないが、「帝王」はそれをひっそりと自宅に持ち帰り、戸惑う「クリスチャン(帝王の奥様)」を説得して飼うことにしたのだたった。

そうして不思議なことにしばらくすると、四肢に生えていたハサミ状のものは抜け落ち、犬のような外見に変化した。

生き物は「茶々丸」と名付けられた。

さらにまたしばらくすると、犬のような外見の宇宙生物は、やがて人の言葉を話し始め、屁もするようになった。

「おがっつぁん、めし!!」
「おらいのおどっつぁん、さげのみでやんだぐなる」
「はらくっちくてもうくえねー」
「あーはらいでー、げりぴっぴだ」
「もぐけろ(タバコくれ)」
「おだずなよ!!(ざけんなよ)」

「うるせっこのっ ! しずがにしろっこのっ ! 」

さすがの「帝王」もこう怒鳴るほどよくしゃべるのである。
しゃべり出すとこんどは全身の毛が抜け落ちて、やがて人間の少年に変身した。

「帝王」夫妻はますますこの「やがましぃ」生き物を大切に育て、「帝王」の名を一字とって「敏感な人」の意味をもつ名をつけたのだが、思春期・反抗期を人並みに向かえ、酒もタバコも女も「ぺろんこ(タダでうまいことやっちゃう)」しちゃうような、

♪ 盗んだバイクで夜を行く ♪ 
ような「ほでなす」に成長してしまったのであった。

このままではやがて人類に仇なす宇宙生物になってしまうことを案じ、「帝王」はモロボシダンのような気持ちで、彼を寺の木に括り付け、座禅を組ませ、住職の説法をイヤというほど聞かせ、暗黒のフォースから彼を抜け出させたのである。

そうして「敏感な人」は立ち直り、正業につくため学校に通うのだが、選んだ仕事がハサミを使う「理髪師」とわかり、最初に出会ったときの姿を思い出し、「帝王」はまざまざと因果を感じたのであった。

それに「敏感な人」は海老・蟹などの甲殻類アレルギーでもあり、やはり宇宙生物でも同形態の生物は苦手なのだと、今さらながらに思ったのである。
しかし何はともあれ、真っ当な仕事に就くのは喜ばしいことだ。

理容専門学校で、彼の「おだつもっこ」はますます磨きがかかり、自信もつくが、

「こいなもぜーとこでは、もでねーな(こんなダサイ土地ではもてないな)」

という考えに至り、

「やっぱし、東京さいぐしかなかっぺさ」

となったのである。

「そんなごどあんめっちゃ、あですっぽなごとかだってんでねー(適当なこと言うんじゃない)って思ってるんだべ ? だども全部ほんどのこどだ。犬でも長げぇこと飼ってりゃ飼い主に似てくるっぺ。宇宙人だっておんなじだぁ。けんど、信じる信じねはあんたらのかってだっぺ。ガッ、ハッ、ハッ、ハッ !! 」

そう言って帝王は破顔一笑するのであった。

やはり「「バーバーくん」は宇宙人だったのだ。
またしてもオヤジの推測はあたったのである。

つまり彼は、「こいなもぜー国では、もでねーな。やっぱし、パツ金ねーちゃんのいるロンドンさいぐしかなかっぺさ」と考えたのだろう。

その証拠に昨年、彼が地球へ来て29年目にして初めて、800万画素のデジカメを購入し、悦にいっている姿は恐ろしいものだったのを記憶している。

しばらくカメ男と名乗っていたバーバー星人。

しかしこの宇宙人のおかげで楽しかった。
英国へ行ったら、またどんな変身をするのか見物だ。
彼のことだから、英国人ともきっとうまくやるに違いない。
まあ、遠い宇宙へ帰るわけじゃなし、また帰ったとしても、ウルトラマンやセブンが再び戻ってきたように、「バーバーくん」もいつの日にか元気な顔でモグランポのカウンターを訪ねてくれることと思う。

その日まで、さらば「バーバーくん」 !!



ということなのだが、この時点よりさらにロンドン行きは遅れ、それというのも、仙台に帰ってから手当り次第につまみ喰いをした結果、なんと嫁さんをもらってしまったからだ。

なんという無謀なことをする・・・・・
しかし、なんと大胆な嫁さんだ。
だが、彼女はやはり「日本天然党」に属していたのである。
調子コキの馬鹿野郎には、ほどよい天然の嫁さんが似合うのである。

今年、暖かくなってきた頃、ひょっこり彼が帰ってくるかもしれない。
その時は、地球防衛軍・モグランポ支部の全員が、バーバー星人を迎撃するであろう。

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