お好み夜話-Ver2

切れ目オヤジ

それはそれは、恐ろしいことでした。

今を去ること、20年ほど前のことでございます。

ワテクシはその頃、コンタクトレンズなんぞをしておりましたが、近視に乱視にロクデナシという状態で、

「オマエの目玉はラグビーボールみたいな形をしており、コンタクトレンズをしてもどこかに隙間やズレがでて、それで痛みや違和感が生じておるのだ。どうせたいしたご面相でもないのだから、牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけてボケをかましておれ」

目医者からそう言われ、毎日目玉を真っ赤にしてシクシク泣いておりました。


そんなある日、雑誌に載っていた記事を見て『これだっ ! 』と飛びついたのであります。

大正時代に日本で行なわれた画期的な「角膜屈折矯正治療」の改良型で、ロシアの(まだソ連と云う名称でありました)「フィヨドロフ」博士が、ミグ戦闘機のパイロットの近視矯正手術として行なった「アールケー」手術のことでした。

「フィヨドロフ」博士はこの手術で大金持ちになって、自身の手術室付きの豪華船で世界を回り、数多くの執刀をしたと聞きます。

その「フィヨドロフ」博士から直々に手ほどきを受けたお医者さんが五反田で開業していると知り、片目15万円、両目で30万円という大枚をはたいて、ついに目玉の改造手術を受けることを決意したのであります。

その当時、「アールケー」手術ができるところは日本に3ヶ所しかなかったといわれ、五反田のその医院も大変混んでいて、日本全国から患者が押し掛けておりました。

8割がたが女性で、中には明らかに「ヤー」の人と思われるパンチパーマの男性もおりましたが、待合室ではみなさんポロポロ涙を流していて、異様な光景でありました。

手術後、片目が終わって一週間後にもう片方という段取りになるのですが、その間やたら涙がポロポロとでてしまうのだそうです。


現在の「レーシック」と違って、「アールケー」ではメスをふるって角膜の表面に放射状の切開痕を入れるのです。

聞いただけでも恐ろしい手術ではありますが、15分ほどで終わり、手術後1週間もすれば視力は格段に上がり、アフリカの原住民のような視力が得られるといわれたものです。

覚悟を決めて手術にのぞんだワテクシではありますが、手術室には能天気な「ランバダ」がBGMで流れ、凹型の枕に頭部を固定され、クリップでまぶたをおっ広げられ、点眼麻酔を垂らされ、目玉に放射状のスタンプを
バッチン!!と押されたときには、思わず心の中で
やめろショッカー !!と叫んだものです。



意志の力で目玉をまっすぐ見開いていると、メスが徐々に迫ってきて、水中から水面を見上げているような感覚の中、メスが角膜に入り、視界が
グニャ~リと歪むこの気持ち悪さ

両拳を握りしめ、冷や汗をかき、ひたすら気持ち悪さに耐える15分間。

術後、眼帯をして水気と汚れに注意して一週間、ようやく眼帯を外すと、
おお~、世界はなんて明るいんだ !!

そして、すれ違う見知らぬ女性の肌がなんて荒れているんだ、おっさんの肌がなんて汚いんだ、ということが、よくも悪くもわかってしまう。

視力は2.0以上 !!


約1ヶ月後、視力は1.7くらいに落ちてきて安定いたします。

それで一生過ごせたらよかったのですが、目のいい人は早く老眼になるなどと申しますが、ワテクシの場合はド老眼になってしまいました。

つい昨年までは免許証も眼鏡使用ではなかったのに・・・・・・


この間ラジオで、老眼の「レーシック」があると聞きました。

はてさて、切れ目の入ったワテクシが、眼筋も衰えてきているのに、またまた手術を受けられるのでしょうか


それはともかく、メスとエキシマレーザーの違いはありますが、気の弱い方にはこの手術はお勧めしません。

手術室にランバダが流れていたら、この恐怖は倍加されます。

眼鏡でいいじゃない コンタクトでいいじゃない

ド老眼でも、まっ、いっか

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「迷想雑記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事