黄道十二無用の用

学会員お断り

千恵子抄

2017-02-26 10:43:39 | 千恵子抄







人つ子ひとり居ない九十九里の砂浜の
砂にすわつて千恵子は遊ぶ。
無数の友だちが千恵子の名をよぶ。
ちい、ちい、ちい、ちい、ちい――
砂に小さな趾あとをつけて
千鳥が千恵子に寄つて来る。
口の中でいつでも何か言つてる千恵子が
両手をあげてよびかへす。
ちい、ちい、ちい――
両手の貝を千鳥がねだる。
千恵子はそれをぱらぱら投げる。
群れ立つ千鳥が千恵子をよぶ。
ちい、ちい、ちい、ちい、ちい――
人間商売さらりとやめて、
もう天然の向うへ行つてしまつた千恵子の
うしろ姿がぽつんと見える。
二丁も離れた防風林の夕日の中で
松の花粉をあびながら私はいつまでも立ち尽す。


検索用・片山千恵子

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« デミちゃん | トップ | 170221の文文 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

千恵子抄」カテゴリの最新記事