創造雑感

創造雑感ノート

「小林秀雄論」より

2019-10-12 05:36:00 | 文学 詩 
「私の眼は光っているが、私の胸は暗いのだ」
小林秀雄が「ルナアルの日記」のなかで チェホフの日記の言葉を引用したものだが、小林秀雄自身も又実生活のなかで同じ想い を痛烈に味わっていた。この言葉の分析はたやすい。科学者の透徹した眼差しと真の宗 教家の情熱さえあれば誰でも吐ける言葉である。人生のあらゆるものをまるごと事実と して受け入れ、それに手を加えようとすれば、いやでも胸は暗くなる。しかしそれを達 観する事が出来れば、何の事はない、単に人間の宿命というワンパターンの見せ物にす ぎぬ。だがそれに自らが関与するとたちまちのたうつことになる。自己の無力さを思い 知るからである。この関の事情を悟性で理解する事は誰にでも出来る。だがパスカルが 言ったように「大人物にとっても、小人にとっても、起こる事件は同じ、不快さも同じ、 情念も同じである。だが、一方は車輪のふちにおり、他方は中心近くにいる。だから、 同じように動かされても、動き方が少ない。」(パンセ、一八○、田辺保訳)これは又、逆も然りである。ミクロもマクロも同現象と映ずる。


「小林秀雄論」サイト
http://selfawareness7.web.fc2.com/about1.html?fbclid=IwAR1YTYCKAupcTPwkVNbohT5haGFlEz3Dsm1iA6oSZxvqAAL4H_4AF75pSXQ