ご存知の通り新司法試験には選択科目があります。
この選択科目で何を選ぶかによって有利不利があるのではないかというまことしやかな噂が受験生の間にあります。そこで、法務省により公表されている
データを見て検討してみました。
A.受験者数
倒産法 1860人
租税法 344人
経済法 684人
知的財産法 1123人
労働法 2326人
環境法 409人
国際公法 109人
国際私法 498人
B.短答合格者数
倒産法 1414人
租税法 236人
経済法 458人
知的財産法 757人
労働法 1591人
環境法 239人
国際公法 57人
国際私法 303人
C.最終合格者数
倒産法 596人
租税法 97人
経済法 179人
知的財産法 307人
労働法 643人
環境法 84人
国際公法 22人
国際私法 115人
D.対受験者短答合格率(小数第3位以下切り捨て) B/A
倒産法 76.02%
租税法 68.60%
経済法 66.95%
知的財産法 67.40%
労働法 68.40%
環境法 58.43%
国際公法 52.22%
国際私法 60.84%
E.対受験者最終合格率(小数第3位以下切り捨て C/A
倒産法 32.04%
租税法 28.19%
経済法 26.16%
知的財産法 27.33%
労働法 27.64%
環境法 20.53%
国際公法 20.18%
国際私法 23.09%
F.対短答合格者最終合格率(少数第3位以下切り捨て) C/B
倒産法 42.14%
租税法 41.10%
経済法 39.08%
知的財産法 40.55%
労働法 40.41%
環境法 35.14%
国際公法 38.59%
国際私法 37.95%
まず短答合格率についてみると、租税・経済・知財・労働は全体の短答合格率(68.38%)と大きな差はありません。
他方、環境法・国際公法・国際私法の3科目は短答合格率が平均より大幅に低く、短答合格率最高の倒産法と最低の国際公法の間では約14ポイントもの大幅な開きがあります。
これら下位3科目の受験者層と倒産法の受験者層の間には大きな実力の差があるのではないかと推測されます。
もっとも、これだけでは「環境法・国際公法・国際私法の選択者には短答で落ちるものが多いだけで短答通過者の論文選択科目の実力は他の科目の受験者と遜色がない」ということもかんがえられないではありません。
しかし、F.対短答合格者最終合格率を見ても、倒産法の合格率が高く、環境法・国際公法・国際私法が低いという傾向が認められます。つまり、短答合格者の最終合格に影響する成績(短答の成績と論文必修科目の成績)にも差があるということになります。
短答の成績は最終合格に影響する割合が小さいので度外視すると、各科目受験者の間に論文必修科目の成績に差があるということになります(全体的に見て倒産法選択者の論文の出来がよく、環境・国際公法・国際私法選択者の論文の出来が悪い)。論文必修科目の実力に差があるということは、当然論文選択科目の実力にも差があるのではないかということを強く推認させます。
以上の推測が正しいとすれば、各科目の成績は相対評価でつけられますから(受験者の真ん中くらいの出来だと45点となる)、全体的にレベルの高い受験者の多い倒産法を選択した場合、選択科目で高得点を得るのが難しくなり、逆に環境法・国際公法・国際私法を選択した場合には選択科目で高得点を得やすいということになります。
以上から、環境法・国際私法・国際公法を選択すると有利になり、倒産法を選択すると不利になる、ということがいえます。
もっとも、人によって向き不向きや好みもありますから、一概に有利不利だけで決めるわけにもいかないでしょうが。選択科目選びは難しいですね。
ちなみに私は知財から倒産に乗換えて倒産で受験。試験では平凡な成績でした。