宇宙人は柴犬と

SFコメディー小説です。

第39:各話タイトルって必要無いのかもしれない 3/3

2011-01-30 22:12:49 | 日記
【命をかける理由】
ディZ2ーランド。
犬の障害物レースXXX(トリプルエックス)の放送のための大型移動中継車。
この中には、(ほんのわずかではあるが)未来を変えることができる爆弾が隠されている。
その爆弾を最も効果的に用いるには、車内に狼頭皇がいる必要がある。
今、狼は外にいて、力づくで車内に押し込むためヂェットを先頭に戦っている。
爆弾で変えられる未来、それに紐付いて変えられる過去は本当に微量。
また、この様な方法で世界を変えるなど史上始めて。
理論のみで実績は無い。
考えうる最善でのぞみたい。
”これでだめなら、何をやってもだめ”と言って諦めが付く、これ以上無いやりかた。

狼頭王は宇宙警備隊最強の戦士ヂェットに翻弄されている。
拳を突き出せばヂェットの腕に巻き取られ、膝で胃を蹴り上げられる。
蹴りを繰り出せば、避けざまに軸足を蹴り刈られる。
捕まえんと手を伸ばせば裏拳で払い落とされ、逆の拳を鼻面に入れられる。
体制を崩したところに、”じぃ”ことギュンター・エールラーの強烈なパンチ。
狼の体が宙を舞う。
明らかに劣勢なのだが、テー家の騎士たちは黙って見ているのみ。
慌てて助けに来る様子は無い。
かといって狼の不甲斐なさに落胆する表情も無い。
逆に焦りの表情が見えるのはヂェット。
ヂェット「く・・」
狼の体から立ち昇る湯気。
狼頭王「待たせたな。」
ヂェット「待ってなどいるものか。こうなる前に仕留めたかった。」
狼頭王は特殊体質であり、その体は異常な高温に耐える。
オーバーヒートすること無く、無双の力を出力する。
狼頭王「この体は温まるのに時間がかかっていかぬ。」
そう言って拳を握るとその衝撃で空気が震え、像が揺らいで見えた。
ヂェット「エールラー。ちょっと厄介になったぞ。」
無造作に拳を突き出す狼。
ヂェットが腕を伸ばし、狼の拳を巻き取ろうとする。
バチイッ!!!!
ヂェット「ぬあああっっ!!」
拳の周囲で荒れ狂う衝撃波に弾き飛ばされた。
狼頭王「もらったぞ。」
絶対なる力を秘めた拳がヂェットを襲う。
じぃ「ちっ!」
ヂェットを守るため、狼の拳を全力のパンチで迎撃。
バギン!!
じぃ「ぬうっ」
軽く弾き返された。
しかし、これは想定の範囲内。
諦めずに2発、3発と狼の拳を殴りつづけるエールラー。
努力の甲斐あり、狼の拳を止めることこそかなわなかったが、ヂェットが体勢を立て直し逃げる時間は作り出せた。
ヂェット「助かった。ありがとう。」
じぃ「・・・」
複雑な気持ちだ。
一撃必殺、パワー自慢のブルファイターが拳の数で勝負。
首尾良く助けたはいいが、プライドはズタズタだ。

そこにぴろウきがやってくる。
じぃに代われという。
作戦は既に聞いている。
その内容に納得して頷いたのだから従う。
ああ、ヂェットのサポート役はぴろウきに任せて、中継車に行くさ。
自分の役目を果たしにね。
だが、狼に背を向けると後ろ髪をひかれる。

奴とまだ戦いたい。
いや・・違うんだ・・手なんか抜いていない・・全力で戦っていたさ。
そして・・歯が立たなかったさ。
そうさ。
でも、まだ・・
でも、まだそれでも、自分の全てを見せていない気がする。
自分でも知らない”何か”を。
きっとこの体のどこかにあって、引き出されるのを待っている。
そしてその”何か”を始めて見たとき俺は驚くが、なぜかそれをどうすれば良いのか知っていて、当たり前のように使いこなす。
そうだ。
そのはずだ。
確かな予感がする。
狼との戦いは、可能性に満ちている。
もっと、狼に向かってこの拳を打ち込みたかった。

ぴろウきを出迎えるヂェット。
ヂェット「悪いタイミングで交代したな。」
げ!と顔をしかめるCEO。
狼の全身からしゅうしゅうと湯気が立ち昇り、その姿は陽炎の中に揺らいで見える。
ぴろウき「なんだありゃあ!」
見るからにただごとではない。
力の限り指差す気持ち、よく判る。
ぴろウき「おい!」
ヂェット「なんだ?」
ぴろウき「勝つとか負けるとかよ!それ以前に、触って大丈夫なんかあれ!?シューシューいってるぞ!?シューシュー!!」
ヂェット「試してみればよかろう。」
ぴろウき「ちなにゃい?(死なない)」
ヂェット「暗黒星雲人の血を引くお前が、簡単に死ねるのか?」
ぴろウき「暗黒星雲人はな、強くて脆い生き物なんだぞぅ。」
ヂェット「この体が動く時間はあと30秒弱。バカを言っている暇は無いぞ。」
彼の本体はゲル状の寄生生物。
戦うときは専用のパフォーマンスボディーを使う。
それは高い戦闘力を有するが、非常に短い時間しか稼働できない。
シュルシュル・・
空中を何か飛んでくる。
棒だ。
文月なな愛用の超合金68B09製の棒。
空気を読み、ななが投げてよこした。
受け取るヂェット。
ぴろウき「お前、(棒術を)使えるのか?」
ヂェット「ななに棒を教えたのは私だ。」
構えると一部の隙もない。
その姿に、ぬぅとうなる狼。
いよいよ歩を進め、拳を振り上げる狼頭王。
ぽんとCEOの背を押すヂェット。
ぴろウき「な、ななな、なんだ?」
ヂェット「この一撃だけ受けてくれ。」
ぴろウき「んだとおぉぉっっ!!」
狼の拳はすぐ目の前。
唸りを上げ、荒れ狂う衝撃波をまとう見た目からして凶悪な拳。
拳より先に攻撃目標であるCEOに到着した衝撃波がバリバリと血肉を引き裂く。
ぴろウき「いっでぇええっっ!!」
まともに受けてはいられない。
何とか・・この威力に逆らわずにできるだけ受け流そう。
ヂェット「その拳を受けきってくれ!」
ぴろウき「んだとぉ~っ!?」
こんなもんまともに食らったら、即戦闘不能、下手したら死ぬだろう?
・・いや、百戦錬磨の戦士が言うのだ。
何か策があるのだろう。
しかし、この恐ろしい様子の拳の前に立ちつづけるのは、ちと勇気がいる。
ぴろウき「・・・」
奥歯を噛み締める。
暗黒星雲人は悪党の一族だった。
特に地球に対する蛮行は筆舌に尽くし難い。
宇宙警備隊が常駐する前の地球は、ワクチンソフトをインストールしていないパソコンのようなものだった。
地球外からの攻撃には無力。
暗黒星雲人にやりたい放題をされていたのだが、結局は暗黒星雲人がその罪を償うことになる。
宇宙警備隊最強の戦士、ヂェットが赴任してきたのだ。
ぴろウきはその過去を変えたい。
人にひどいことをし、自らもひどい目にあった、暗黒星雲人の最低な過去を無かったことにしたい。
しかし、やっと見出した過去を変える方法では全ての暗黒星雲人を救うことは不可能だ。
それならば、できるだけ多くの暗黒星雲人を救いたい。
暗黒星雲人は多くの星々で悪事を働いたが、地球での悪行が最も多い。
地球が有する問題の多くを解決し、過去にあった不幸の多くを無かったことにすれば、暗黒星雲人の悪行も多くが無かったことになる。
暗黒星雲人と地球人が手を取り合い、共に繁栄する歴史に作り替えることができるかもしれない。
地球人の血と暗黒星雲人の血で生かされている自分のように、地球人と暗黒星雲人の友情の歴史を・・
ぴろウきCEOは地球人を救うことで、この地球に暗黒星雲人のよき歴史を作るつもりなのだ。
激しい戦闘により暗黒星雲はいまや存在しないが、地球に暗黒星雲人の住める土地と正しき生き方があれば、宇宙に散らばり嫌われながら命をつないでいる同胞を受け入れることができる。
彼らに嫌われない生き方を教えてあげられる。
そのためならこの命、惜しいはずが無い。
心を決めた。
ぴろウき「この命惜しくは無いが、無駄にはすんじゃねぇぞ。」
狼の拳に立ち向かう。


第39:各話タイトルって必要無いのかもしれない 2/3

2011-01-30 22:12:40 | 日記
【ランチミーティング】
コメディー枠です。
2週間前。
渋谷、モンゴリアンタワービル49階。
チャンネル√4役員エリア。
49A会議室。
CEOのぴろウきを筆頭に、部長以上の中から9人が集まり、ランチミーティング。
ぴろウきの昼飯はカロリーメイト(ブロック ポテト味)、SOYJOYオレンジ葉酸+、スニッカーズ、ポッキー アーモンドクラッシュ、カゴメ野菜生活100青りんご&ライム。
ぴろウき「おや?CMO、愛妻弁当かい?」
CMOは空色のギンガム・チェックのクロスに包まれた弁当箱持参の新婚さん。
いやー、お恥ずかしいとテレながら包を開き、蓋を開ける。
弁当はおかずの箱とご飯の箱に分かれている。
おかずはミートボールやウィンナーが入っており、高校生の弁当のようで若々しい。
ご飯は・・
CMO「いや~、まいったなぁ~。」
ご飯の上に敷き詰められた肉そぼろ。
でも、全部が肉そぼろじゃなくて卵そぼろもまじってるのん。
そうなのん。
卵そぼろで黄色い文字が書いてあるのん。
”がんばって(ハート)”
ギラリ!CEOの目の色がかわる。
ぴろウき「おい。」
CMO「wwはい?」
ぴろウき「うんと年下の奥さんは可愛いか?」
CMO「www!やっ、可愛いってゆーかww。この間まで大学生だったから、学生気分が抜けてないってゆーかww。」
ぴろウき「正直に言えよ!オイ!」
ニタニタと肘で脇を突っつく。
CMO「えーとぉ・・可愛いですww」
ぴろウき「必殺!アーモンドクラッシャーっっ!!」
ポッキーを数本握り、CMOの口内へ全力で突き込んだ。
CMO「むごがあっっ!!」
ぴろウき「歳の離れた若奥さんと愛妻弁当の書き文字括弧ハートマーク有括弧閉じは、数え役満だからな。渋谷区のわがまちルール・・たしか代官山ルールあたりに抵触していたはずだ。」
COO「今のはどちらかというと”わがままルール”なのでは?」
ぴろウき「あ゛あ゛っっ!?」
COO「いえ、何も言っておりません。」
ぴろウき「じゃあいつも通りアイディアを出し合うぞ。我が社はチャンネル√4、ぬっほぬほ動画と双方向ネットワーク上の動画コンテンツ事業において世界をリードする存在だ。また、XXX(トリプルエックス)というスポーツイベントの主催でも大成功を収めつつある。さて諸君、次は何をやりたい?」
CCO「はい!」
挙手。
ぴろウき「CCOくん。」
指さし指名。
CCO「お風呂でチャンネル√4が見たいです。」
ぴろウき「見れば?」
CAO「俺は、お風呂でぬっほぬほ動画が見たいなぁ。」
ぴろウき「だから見りゃいいだろ?パナソニックのタフブックあたりならよぉ、水没させなきゃ風呂でも動くだろう?買えよ。」
COO「僕はXXXを風呂で観戦したいな~。」
ぴろウき「もぉうるせぇよ!!お前らの風呂への愛しか伝わってこねーよ!!」
CTO「私は次に睡眠をしたいです。」
ぴろウき「なめてんのか!?お腹いっぱいの次はお眠って赤ちゃんかよ!!今夜は寝かせねーよ!バ~カ!!」
CFO「夢であなたに会いたい。」
ぴろウき「分かった、寝ろ。夢を見つづけろ。そして2度と起きるな。」
CLO「CEOぉ・・テレビつけてタモさん見ませんか?」
ぴろウき「わかった。3秒だけ見ることを許す。3秒を1ミリ秒でも過ぎたら、お前の網膜に医療用レーザーでタモリの肖像画を刻印するから、心して見ろよ。」
COO「今、風呂場に向いている視点をダイナミックに変えて、トイレに注目してはどうでしょう?」
ぴろウき「うんこするときトイレにノーパソ(ノートパソコン)持っていけ。以上。」
CAO「いや、うんこそのものがチャンネル√4なんですよ。きっと。」
CFO「あ!それじゃないかな?」
ぴろウき「どれだよ・・どれなんだよ?もぉ・・っほっほぉぉ・・・・会話がクソバカ中学生なんだよ・・バーカ・・」
CAO「うんこ、チャンネル√4、うんこ、チャンネル√4、うんこ、チャンネル√4・・いや・・なんか・・何かすぐそこまででかかってるのですがね。」
ぴろウき「うんこだろ?便意をもよおしているだけだろ?トイレ行けよ。」
COO「皆さん。僕達は格式あるチャンネル√4ですよ。そこにどんな財宝があるにしても、うんこに手を突っ込んではいけません。」
CFO「そうだ。そうだ。」
CAO「うむ。」
CTO「ここはウォシュレットあたりに目を向けてみようじゃありませんか。」
CFO「賛成。」
ぴろウき「賛成っじゃねーよ!トイレそのものから離れろよ!!」
CCO「俺、ウォシュレットの水の強さは最弱派なんですよね。」
ぴろウき「しらねーよ。」
CCO「トイレ入る度に強さ調節するのウザくって。たまに忘れて強い水に肛門攻撃されてうわってなるし。」
CFO「あー、解るわー。なんか背徳の快楽に目覚めかけるよねぇ~。」
CTO「なんかさー、あれじゃねーの?」
COO「何?」
CTO「ウォシュレットの強さくらい、自動で調節されるべきなんじゃね?」
CFO「おおお。それは助かる。でもどうやって?」

ぴろウきは呆れて、そして飽きてPSPで美少女ゲームをやり始めた。
CTO「自分にとって快適なエアコンの設定とか、毎週欠かさず見ている番組とかさ・・」
CFO「うん、うん。」
CTO「スマホ(スマートフォン)とかが記憶してくれていて、勝手にエアコンの設定したり、テレビのチャンネルや音量変えたりしてくれたらいーんじゃね?」
COO「部屋にたくさん人がいたらさ、人の位置とかも考慮してエアコンの風向きや風量を高度に調節したらかっこいいね。」
CTO「RFIDなら距離を測れたはず。スマホがアクティブRFIDになれば良いんじゃね?」
CLO「うーん、かっこいいね。」
ぴろウき「・・・」
COO「・・・」
ぴろウき「じゃあ、そんな感じで。CMO、お前の宿題にするから検討しておくよーに。若奥さんと乳繰り合う時間はくれてやらねーぞ。CTO、フォローと監視よろしく。」


第39:各話タイトルって必要無いのかもしれない 1/3

2011-01-30 22:12:32 | 日記
宇宙人は柴犬と



第39:各話タイトルって必要無いのかもしれない

【パパド対チャイ】
ディZ2ーランド。
天井に穴の開いた大型中継車。
屋根の上では音雨と三四六、シベリアンハスキーの獣皇丸がにらみ合う。
社内では少女のチャイを前に、四本足走り用のグローブを手にはめるパパド。
パパドを守らんと、彼の前で前足を大の字に踏ん張る豆芝のたまきち。
チャイの隣でにょろっと長い胴体をくねらせ、いやらしい目でたまきちを睨むミニチュアダックスのシュリケン。

たまきちはパパドが居候する部屋の主もり香の飼い犬。
シュリケンはチャイの飼い犬。
シュリケンの涎が一滴床に落ちる。
同時に、パパドが手袋をはめ終わった。
パパド「ふんっ」
手を床に突いたと思った瞬間、パパドの姿が消えた。
背後にいたご主人の突然の激しい動きに、思わず身を縮めるたまきち。
蟷螂のように構え、腰を沈めるチャイ。
いやらしい視線でパパドの影を追うシュリケン。
楽しそうに戦いに見入るワタシちゃんの目に映るのは、近々の未来にありえる可能性が連続する5次元空間。
壁に床に天井に、四方八方縦横無尽に広い車内を飛び交うパパド。
手と足を同時に用いる、その瞬発力。
かろうじてその影は目で終えても、その姿を正確にとらえることは困難。
すさまじいスピードで激しく動き回る。
対照的に微動だにしないチャイ。
パパド「ぎゃあっはははは!どうだ!ぼくの動きを追いきれまい。」
そのパパドを補足せんと一歩足を踏み出したシュリケンの全身が一瞬こわばる。
巨大な殺気を感じた。
小さなたまきちの体から。
たまきちは”主人に手を出すなら黙ってはいない”と目で申す。
シュリケンは自分の遊び相手をたまきちに決めた。
にょろにょろと体をくねらせて相手を惑わし、少しずつ近づいてゆくシュリケン。
小さい体に闘志をみなぎらせ、ただまっすぐに歩いてゆくたまきち。
本当に似ている。
パパドはたまきちに父狼頭王の姿を見ていた。

一方、屋根の上では張り詰めた空気の中、達人同士睨み合う。
片や異常者ではあるが世界で最も強い拳法家の内の一人、音雨。
片や血統書付きの体に、よちよち歩きの時から技をたたき込まれた少年、三四六。
三四六「ww。久々に、気合入れちゃおうっかな?」
自分のトレードマークであるサンバイザーを親指で弾き飛ばす。
音雨「!?」
少年が服の下に巻いていた柔道の帯を取り出し、鉢巻のごとく額に巻く。
それは紅色の帯。
音雨「おやおや、その歳で・・ちょっと信じ難いですねぇ~。」
赤帯は9段から10段のあかし。
つまりは柔の道の頂きにある証明。
本来、強いだけではもらえない。
この少年はただならぬ才能が故、早々に彼に教えることができるものがいなくなった。
彼を少なくとも9段にしなければ、周りがやりにくくなってしまったのだ。
三四六「ごめんな、おっさんww。俺、百億兆年に一人の天才なんだわww。しかも・・」
ずいっと前に出たのは巨漢のシベリアンハスキー獣皇丸。
柔道着に黒帯。
戦闘を前に鋼鉄のヘルメットを振り落とした。
三四六「そいつの黒帯、伊達じゃないからww。俺がその実力ありと認め、俺が使っていた黒帯をくれてやった。獣皇丸なら獅子の相手だって軽い。」
音雨「口数が多いですねぇ。行きますよ・・」
三四六の手の届く範囲を嫌い、遠間から鋭い蹴りを繰り出す音雨。
流石の三四六もこれは近付けない。
しかし、表情は余裕。
三四六「そうくると思ったww。獣皇丸っ!」
音雨が蹴りを繰り出した瞬間、軸足を狙い牙を向く獣皇丸。
獅子の首すらへし折るその顎。
音雨「ちっ!」
やむなく後方へ飛びのく。
三四六「ww勝利優先でいくからさwww。俺に投げられるか、獣皇丸に噛み砕かれるか、選びな。」

再び車内。
右かと思えば左、下かと思えば上へと目でとらえ難いパパドの動き。
ついにチャイも姿を見失った。
チャンスだ。
攻撃するなら今しかない。
パパド「チャイ!ぼくを敵に回したことを後悔する暇も無く!死ねぇえええっっ!!」
チャイ「!?」
覚悟した一撃がいつまでたっても来ない。
ふと背後を振り返り、そして呆れた。
車内の隅っこで椅子にしがみつき、肩で息をしているパパド。
パパド「ぜー、ぜーっ。ちょ、ちょっと待って。すごく疲れた・・うげぇー、やっべ吐きそう。」
無駄に飛び跳ねすぎだっつーの。
てくてくとパパドに歩み寄るチャイ。
しゅっ
手首を曲げ、パパドに向けて打ち込むチャイ。
チャイの体は華奢で、拳は小さく華奢すぎて打撃には使えない。
手首や肘、肩を使う。
ぱしっ!
打ち込まれた手を白刃取りするパパド。
パパド「まじで待って。1分でいいから。お願いするから。」
困り顔で手を引き抜こうとがんばるチャイ。
パパド「??」
全力で抵抗しているようだが・・よ、弱ぇ~、力弱ぇ~。
チャイは筋量も少なく力が無い。
肩で息をしながらもにやけるパパド。
パパド「ひょっとして、チャンスじゃね?」
チャイの体勢を崩すため、ぐいっと引き寄せる。
パパド「ぎょわははは!!死ねコノヤロぉ!!」
かっぱ~ん!
パパド「ごふっ!」
目の玉が飛び出すかと思った。
体勢を崩しながら放った、チャイの踵落とし。
頭突きをかますため突き出されたパパドの脳天に見事カウンターが決まった。
びたーんと床に打ち付けられ、のびるパパド。
パパド「はう・・あうう・・」
ぴくぴくと痙攣。
すぐにたまきちがやってきて顔をなめる。
パパドを守るため、チャイやシュリケンに向かってわんわんと吠える。
びょうっ
天井から何か降ってきた。
チャイがパパドの側から飛び退く。
三四六だ。
パパドを担ぎ上げる。
三四六「www。状況悪化につき、撤収ww。」
入り口を蹴破り、車外に駆け出す。
三四六「おっさん!勝負は預けたわww!獣皇丸!チビちゃん2人を頼むぜ!!」
獣皇丸はワタシちゃんを背に乗せ、たまきちを呼び、一緒に三四六の後を追う。
音雨の方を見るチャイ。
彼がすぐに追うと思ったのだが、その様子が無い。
見れば駆け寄ってくるぴろウきを待っていた。
天井に上がるチャイ。
まもなくぴろウきが到着。
ヂェットが考えた奇策を二人に伝えた。
音雨とチャイは自分の目で戦況を確認する。
中継車があるこの位置から30mほど離れた場所。
ヂェットとじぃが、やや狼頭王を押している。
ななは怪人軍団を操り、なんとかテー家騎士の精鋭9人+馬鹿1人(バクテー)を抑えているが、長くは持ちそうに無い。
怪人軍団が壊滅すれば劣勢は必至。
1分後ヂェットが戦列から離れれば、敗北は決定的。
その奇策で早めに決着をつけるべきだ。
二人はうなづいた。
ぴろウき「じゃあ、こっちは頼んだぜ。俺はじぃと交代してくる。」
狼頭王のほうへと走ってゆく。


第38:まだまだ余裕で正月ボケです。 2/2

2011-01-16 22:30:32 | 日記

【テー家の女の秘密】
たんなる知的好奇心から、世界を大きさの無い点にしてしまおうと考えている男。
結果、世界を滅ぼすことになっても気にしない男。
瀬瀬やすひろ博士は、今終わったばかりの文月ななとの電話を思い出していた。
気になる。
気になる。
気にしてもしょうがないし、やることは決まっている。
気をとられてこれからの作業でミスをするくらいなら、むしろ忘れてしまったほうがよい。
”やっちゃったもの勝ち”などと思い切ってみたが、どうしても気になる。
精神衛生上の理由から、1回だけ思い出して気持ちを整理し、後はすっぱり忘れることに決めた。
ぼくはガパオを操っているのが自分だと白状した。
もし”わからない”と答えていたら”では調べてほしい”と依頼されるだろう。
より複雑な言い訳を用意しなければいけなくなる。
だから、白状してよかった。
次にぼくがななちゃんに疑われているかどうかだが、最後の質問から考えて、間違いなく疑われているだろう。
”意外と人情の厚いお方だったのだな”などと心の動揺を誘ってきた。
いつものぼくならちょっと皮肉交じりの口調で返すのだが、あれは押し黙るしかなかった。
少し上ずった声を聞かれるよりはましだった。
やっさん「ふふ、さすがななちゃん。宇宙警備隊付きのエージェントだよねぇ。」
ぴろウきが疑っているかどうかは不明だが、疑っていると考えたほうがよいだろう。
もしそうでなくても、彼の信頼が厚い文月ななが自分を疑っているのだ。
なながぼくへの不信感を口にすれば、ぴろウきはぼくを疑う。
瀬瀬博士は単独犯、相手は巨大組織。
誰にも知られないことが、彼の野望達成の絶対条件だ。
修羅場に慣れていない卓上の研究者。
頭の中に不安が渦巻く。
やっさん「ぼくのいたいけな心臓をいじめないで欲しいよねぇ。」
こんな奴が、世界をおもちゃにしようとしている男なのだ。
ブラックベリーを操作し、水槽のチャイに宇宙の大きさを示す天文台の観測データを送る。
人が認識する世界はX軸、Y軸、Z軸からなる3次元の空間だ。
水槽のチャイはさらに時間、可能性を含めた5次元空間を認識できる。
これこそが瀬瀬博士が、パラレルワールドは離散的に点在せず、線形的に連続して存在すると信じる理由だ。
チャイは可能性方向に観測データを見る。
そしてもっとも宇宙が小さい可能性への世界の遷移方法(チャンネル√4が作った特殊な爆弾のセット位置と爆破のタイミング)を検討する。
5次元を認識できるといってもわずか数秒先であったり、ほんのいくつかの可能性であったりと、遠くまで全てを見渡せるわけではない。
爆弾で世界を動かせる量もわずかだ。
何度も何度も繰り返す必要がある。
5次元空間を認識する能力は水槽のチャイだけのものではない。
テー家ですら広く知られていない事実だが、テー家の女性が潜在的に持つ能力で、一部の者だけが発揮出来る。
水槽のチャイは巨大な脳だけの存在で、全ての感覚をいったん失ったがゆえ、5次元の空間に気づいた。
実はこの物語には他に2人、その能力を持つものがいる。
お馬鹿騎士バクテーとパパドの妹ワタシちゃんだ。
バクテーは戦闘中、極度の緊張からハイ状態になると、自覚は無いが5次元を認識できるようになる。
そして、見えた未来の可能性の中から最適なものを選んでゆく。
当の本人には、勘が冴えていたとかヤマが当たった程度の認識しかない。
馬鹿は自分に特殊な能力があるだなんて思っていないのだ。
バクテー(馬鹿)が比較的にか弱い女性の体で超人的な精鋭部隊と同等の働き・・例えば巨大怪獣と互角に戦った・・をなしえたのには、そんな理由があった。
このことに気づいていたのは、狼頭王と騎士団長ナンプラーだけ。
(25話でアロイとバクテーが銚子から帰還した後の会話が伏線です)
二人はテー家人造生物の秘密の多くを知り、バクテーとも親しかったので勘付いた。
ワタシちゃんはおにいちゃんが大好きである。
おもちゃとして。
エキセントリックな性格の彼女は、お兄ちゃんがギャグ漫画のやられ役のような目にあうとき、至上の喜びを感じる。
ワタシちゃんは兄といるときは常に、彼が死なない程度にそのような目に会うよう誘導しているのだ。
お兄ちゃんは自分専用のおもちゃなので、他の者に傷をつけられる(遊ばれる)ことは嫌う。
(21話で激しい戦闘の中無傷だったくだりが伏線です)


【試射】
宇宙。
鋼管に帯状に巻き付けたプラスチック爆弾が爆発する。
空中要塞とBXS1の切離し作業だ。
加速は止めているので、鋼管が後ろのBXS1に当たることはない。
2本の鋼管はゆっくりと寄って行き、接触した。
方向をかえ、交換を避けて去って行くBXS1。
続けて加速し離れて行く空中要塞。
残されたのは寄り添う2本の鋼管。

間もなくBXS1から空中要塞に通信が入る。
ソロ「herculean beam(怪力線)を試し撃ちする、適当な目標は無いか?」
布和「試し撃ちだと?」
ソロ「ハルにtype ku weapon(く号兵器)の補助システムをプログラミングしてもらったんだが、その初期画面に補正値ってパラメータがあるんだよ。ハルに聞いたら試射して誤差を入力するのだそうだ。」
布和「試し撃ちをしないで0を入力したらどうなる?」
ソロ「怪力線がどこに飛んで行くか保証できない。最悪、地球を直撃だ。」
布和「判った。試射しよう。」
ソロ「すまない。こんなことがあるなら早めにハルに検討させておくのだった。」
布和「あのドタバタで、そこまで頭は回らないさ。それに急な話で任せちまったのはこっちだ。兎に角、話は判った。こっちで検討して折り返し連絡する。」
一旦通信を切った。
布和隊長が申し訳なさそうに話を切り出そうとすると、ユリコ隊員が早口で提案。
ユリコ「遊動カタパルトは使えないでしょうか?」
皆通信は聞いていた。
問題は把握している。
アチハ「位置は判るのか?」
ユリコ「どうかしら?ここから19万kmほど離れたところを飛んでいるはずだけど。」
19万kmという数値はざっと計算した予測値。
空中要塞の航海ログから、最後に遊動カタパルトと連結して飛んでいたときの相対方向と相対速度を得て、そのまま飛びつづけたとして単純に時間をかけた。
タイゾウ「補正値用の値として、距離は十分なのかな?」
布和「19万kmで勘弁してもらうしかないだろう。」
タイゾウ「判りました。ユリコ、オレも多少レーダーを見れるから、探すの手伝うよ。」
布和「アチハ、手が開いているならソルトフラットの連中と打ち合わせを始めてくれ。こちらの連絡を待っているはずだ。遊動カタパルトと最後までいたのはBXS1だ。ソロ船長に頼んで探してもらった方が早いかもしれない。」
レーダーを見るユリコの目が、軽く釣り上がっている。
自分のスタッフを軽く見るような発言に聞こえてしまったか?
怒らせちまったか?
布和「すまん。そういう意味じゃないんだ。あてにしてるぜ我らが水測兵。」
ユリコ「水測兵?」
布和「しまった、つい潜水艦のつもりで。こういう上司は嫌われるな。悪かった。」
基本的に女性は苦手で下手に出がちなもよお。
だが、部下を軽く思っていない気持ちは伝わった。
ユリコはクスクスと笑う。
ユリコ「見つけましたよ。」
タイゾウ「流石!早いな。」
ユリコが転送してきた画像とデータを自席のモニタで確認する布和隊長。
布和「よくやった。」
ユリコ「早速ソルトフラットに送ります。彼らの衛生の巨大パラボラなら問題ないとは思いますが、十分な精度で補足できるかは判りませんから。」
布和「そうだな。ソルトフラットとの打ち合わせはアチハと交代してくれ。タイゾウはアチハとく号兵器の準備を始めろ。」
ソルトフラット(地球上、米国の地球防衛軍拠点)に空中要塞の飛行スケジュールを送る。
もり香の仕事はく号兵器を発射する瞬間、飛行スケジュールとの誤差を0にすることだ。
”発射する瞬間”と限定したのは、常にそうすることが困難だからではない。
もり香の技術をもってすれば十分可能だ。
常にそうできない理由がある。
敵からの攻撃があった場合、回避しなければいけないからだ。
その時は流石にスケジュール通りには飛べない。
いったん飛行スケジュールから外れて攻撃をかわし、またもどるという手順を行う。
ソルトフラットから送られてくる照準(引力などの影響を考慮した、テー家の戦艦に当てるための発射方向)は、この飛行スケジュールを信じてスーパーコンピューターが計算する。
実際にはこの照準を布和隊長の”(敵戦艦の動きの)読み”で補正し、怪力線を発射するのだが、この照準が間違っているとそもそも当たらない。
何度も書くが、最悪地球に直撃する。
発射する瞬間の誤差は0で無ければならない。
完璧パイロットもり香を有するからこそ、成立する作戦だ。
布和「出力20%で照準の通り撃て。」
タイゾウ「了解。」
ソルトレイクのスーパーコンピューターが計算した照準がモニタに表示される。
微調整用のダイヤルを息を殺して回す。
タイゾウ「試射1回目発射します。」
トリガーを引く。
発射された怪力線は、目標(遊動カタパルト)を大きくそれた。
レーダーによると、その誤差200m以上。
アチハ「だいぶそれたな。」
タイゾウ「距離が距離だから、これでもほとんど狂っていないはずだぜ。」
2回目の照準がソルトレイクから指示されてきた。
これは1回目の計測値を元に補正済みの照準だ。
怪力線は目標に命中。
遊動カタパルトは爆発しながら蒸発し、レーダーから消えた。
布和「流石ハルのプログラム、ソルトレイクのレーダー、そして仏蘭西原くんの腕ってところだな。1回で決めた。」
タイゾウ「ぼくも自信がもてました。」
布和「お前は(微調整用のダイヤルで照準を合わせて)引き金を引くだけだろ?(だれでもできる)」
タイゾウ「誉めて下さってもいいじゃないですか。」
もり香「おめぇをほめる言葉なんかねぇ。」(お前に食わせるタンメンはねぇの口調で)
ユリコはくすくすと笑っている。
アチハ「俺的にはく号兵器の製造精度と剛性を賞賛したいね。」
成功の可能性がきわめて低かった質量兵器迎撃作戦の後、絶望と緊張の連続の後、はっきりと見えたこの勝利の可能性に明るい。
浮き足立つ隊員をたしなめる言葉を飲み込む布和隊長。
自分が今預かっているのは小学生ではない。
配属が他の部署なら指揮官を務めるべき、実践経験の有るエリート士官だ。
自分が今言おうとしていることなど、百も承知だ。
皆、これをいい機会に緊張をほぐしているのだ。
こんなときでも指揮官である自分は万が一の事態を考え、まったく気を抜けない。
部下どもは自分が気を抜いていないことを見抜き、それに安心してはしゃいでいるのだろう。
自分まで気を抜くそぶりを見せたら、逆に部下どもは”自分が警戒しなければ”と使命感を感じ、気を引き締めるだろう。
作戦の成功を考えれば、今、部下のガス抜きをしておくべきだ。
正直に言えば自分も気を抜きたい。
女性隊員がいるとちょっと言葉も選ばなければいけないし、今回の作戦コミュニケーションは英語だ。
小さなストレスが胃に溜まり、その鋭い棘でちくちくとやってくる。
白髪が増えるぜ・・部下の笑顔を見てため息が出てきた。
ちるばぁちゃんが隣にやってきた。
ちる「ここ(地球防衛軍さいたまブランチ)の隊長は皆、今のあんたみたいな情けない顔が得意だったよ。」
布和「ははは、そうですか。」
テー家の戦艦は空中要塞の試射成功をレーダーで観測していた。
戦艦4隻を預かる指揮官カンヤーヨンが静かに闘志を燃やす。
カンヤーヨン「狼からの命令が待ち遠しいぞ。”敵を殲滅せよ”と言う命令がな。」
全長5kmの戦艦内にあるこのCICは縦横50m以上あり広い。
そして空中要塞ことシルバーイーグル1号は、この部屋に入ってしまうほど小さいのだ。
カンヤーヨン「豆粒ほどの船が要塞を名乗っていると聞き、初めは正直鼻で笑った。しかし、実際はどうだ?その勇気と破壊力は尊敬に値する。非礼を詫びる機会が欲しいものだ。我が全力で叩き潰す、それで許せ空中要塞。」


※次回こそ、狼頭王とヂェットの決着を書かないと。もう出来なかったら割腹する覚悟で。

※イカちゃんはもうちょっと、いやさ完璧に似せてくれよ。
1/2が長いから一部2/2に来ると思って、最後の”CVは金元寿子”に合わせたらしいが、すまんね。


第38:まだまだ余裕で正月ボケです。 1/2

2011-01-16 22:30:21 | 日記
宇宙人は柴犬と



第38:まだまだ余裕で正月ボケです。

※すいません、ちょっと短めで・・。えっしーも調子が出ないそうで、アニメの模写っぽくなっています。脳の画調シンセサイザーの稼働率が低く、似なかったと沈んでいた。ぼくらも深夜アニメ、ぼちぼち見てるんです。あまりネタに使ってないだけで。

【軍事機密】
物語の時計は10日ほど戻ります・・
・・・
・・
それは比較的に言って、どうでもよい話・・と、いうか。
少なくとも、物語も佳境に入り、その進行まったなしである今、書くべき話ではないでしょう。
だが、書かせていただこうかなと、思っております。
私はコメディーはいくらでも書けるのですが、まじめな話はかなり苦手としております。
その原因は私の生真面目な性格にあります。
私は道行く人全てが無視する赤信号も、じっと青に変わるのを待つタイプです。
さて、日ごろ特に意識することなく真面目な行動を行っている人間が、あえて脳内に真面目な何かを思い浮かべる必要がありましょうか?
答えはNO(脳)です。
あ、ちなみにここ、否定のNOと前の行の一説”脳内に”の脳とかかっています・・よろしいでしょうか?
ご理解いただけると幸いです。
そうそう、”幸い”にかけまして・・話のついでですが・・
”この辺り”は?
”界隈”です。
さいわい≒かいわい、”さ”と”か”の違いwwwwありがとうございました。
兎に角
日ごろ考えたこともなく、特に興味もないこと(真面目ネタ)を文章にする作業は、苦痛以外の何ものでもありません。
ここ数話連続している真面目展開。
苦行です。
荒行です。
自分を見つめなおした挙句、悟りを開きそうです。
それってどうなんでしょう?
人は迷い続けてナンボではないでしょうか?
迷わなかったり、天命を知ったり、そのようなことは死期を悟ってからで良いです。
死に望んだら、さすがにちょっと天理をアレして、魂安らぎたいです。
死ぬときは、じたばたしたくないですよね?
私は日ごろコメディーのネタを考えております。
脳の一角にはそれが積みゲー的に垂直方向に堆積。
気持ち的にその高さはスカイツリーといい勝負をしております。
我が家のリビングにある液晶アクオス。
亀山工場のすばらしい品質管理。
画像、綺麗です。
そこにスカイツリーが表示されればリアルに高さを感じます。
そして思うのです。
ぼくの脳内の積ネタ、この高さを超えたくない。
”宇宙人は柴犬と”は残り話数少のうございますが、今後コメディー枠を設けて、コメディーネタを消化してゆこうかなと考えているのですが、実際は気分しだい的な側面もあると白状せざるを得ません。

それでは、話を戻しまして・・・・


10日ほど前のお話。
平和な日常の一コマ。
もり香の安アパート。
時間は夜8時を過ぎた。

食卓。
パパドが椅子に座っている。
もり香の所有する旧式パソコンでインターネットに接続。
ブラウザでメールを読む宇宙人の少年、パパド・ビリヤーニ・マサラ。
盛大に文字化け。
いけないいけない、アオ・アン・ニーのホームページからテー語のフォントをダウンロード。
今度は正しく表示された。
膝の上には小さな妹のワタシ・ビリヤーニ・サグマトン。
パソコンに興味を持ち、キーをたたきたがる。
伸ばす小さな手をそっと握り、左右に振ってあやしごまかす兄。
今日は”お兄ちゃんのことがぜんぜん大好きなんだからね”なワタシちゃんに一日中付き合っていた。
父に妹の面倒を見るように言われたからだ。
パパドは妹といると、通常は運気が悪化する。

※設定的には運気が悪化しているように見えるだけです。実は怪我はするが、どんな目にあっても死なない(後ほど説明)。
  文字家「ところでえっしぃー、お兄いちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!はどう思われますか。」
  えっしー「原作読んでいたから、ずっとまえから知っていた。面白いね。」
  文字家「あんた、萌えない絵で軽く下品な脱力漫画大好きだもんね。」
  えっしー「製作ZEXCSだから話のテンポが悪化しぐだぐだになる恐れがあり、ハラハラするところもたまりません。なんであんなに流れつくるの下手なんだろうあそこわ。」

車に轢かれ、電車に撥ねられ、河に落ち、動物園で像に踏まれ、動物園でキリンにかじられ、落ちてきたガラス片に切り刻まれ、通り雨に濡れたついでに雷の直撃を受けた。
全身包帯を巻き、ミイラのようだ。
メールに添付されているファイルを開く。
パパド「ふぅ・・」
そこに風呂上りのもり香。
もり香「おおお!ワタシちゃーん!会いたかったよーっ。」
バスタオルで頭を拭きながらやってくる。
ワタシちゃんの頭をなでる。
パパドはパソコンが使えず邪魔に思っている。
もり香「ところであんた何よ、ため息なんかついて。」
パパド「いえ、話せば長く・・」
もり香は期待に目を輝かせている。
パパド「・・なりますのでって、ああ、もり香さん暇なんですね。わかりました。」
パソコンのモニタをもり香に向ける。
もり香は椅子を引いてきて、パパドの真横にぴっとりと座る。
CAD図面が表示されている。
もり香「ん~?これって、あれでしょ?あんたがよく見ているアニメのロボット。」
パパド「ええ、土曜日午後6時絶賛放映中の”ザブレィカゾバオゥテメテケリを早口で”の主役ロボット”パラメリオン”です。」
もり香「え?何?これってそんなタイトルだったの?」
テレビ台に乗っているパラメリオンのプラモデルを、ひょいっと持ち上げて驚いて見せた。
パパド「えっ・・て、そんなタイトルですよ。」(ちょっとむっとして)
もり香「で、何この設計図。プラモデル?」
紙パックにストローを刺し、トマトジュースを口に含んだ。
パパド「いえ、テー家騎士団への配備に向け、このたび開発することに決まりまして。」
もり香「ぶぷふうううっっ!!」
吹出したトマトジュースパソコンのモニタを濡らした。
ティシュを数枚取り、それを拭くパパド。
ワタシちゃんは霧状のトマトジュースに浮かんだ小さな虹に大喜び。
パパド「もー。今日中にメールを返信しないといけないのですから、壊さないでくださいよ。」
もり香「配備ってさ。」
パパド「はい?」
もり香「1分の1で作るの?」
パパド「1分の1は分数にする意味ないですよ。」
もり香「うるさいわ! で、本物作る気なの?動くの?」
パパド「・・なんか、起案したら通っちゃって。」
もり香「起案?」
パパド「ぼくは’かたちだけ’とはいえ爵位を持っているので、テー家では法案を自分の名で出せるのです。」
もり香「・・ほほう。」
パパド「で、その、ほんの出来心だったのですが・・」
もり香「アニメ見て、かっちょ良さについカッとなってやってしまったと。」
パパド「番組のホームページから画像をもらってきまして、ちょこちょこっと書き添えまして。」
もり香「なんじゃそりゃ?通すほうも何を考えているのだ?」
パパド「それが好評で。」
もり香「アニメのロボットだぞ!?即却下でいいだろう?」
パパド「テー家には立体ホルダーという騎士を象徴する兵装があるのですが、戦車、戦闘機そして戦艦に対抗する大型の立体ホルダーとして、高く評価されました。」
もり香「その・・立体ホルダー?・・の技術の応用で作れちゃうわけか。高い技術力も考え物ね。でも、なんでため息ついていたの?待ってればあんたの願いがかなうんでしょう?」
トマトジュースを再び口に含んだ。
パパド「それが、プロジェクトの責任者になっちゃいまして。」
もり香「ぶぷふうううっっ!!」
吹出したトマトジュースはパソコンのモニタを濡らした。
ティシュを数枚取り、それを拭くパパド。
ワタシちゃんは霧状のトマトジュースに浮かんだ小さな虹に大喜び。
パパド「だから、やめてくださいよ。壊れちゃうでしょう。」
もり香「あんた小学生よね?」
パパド「地球ではそうですね。」
もり香「実はあんたの星では大会社の社長だったりするの?」
パパド「普通の子供ですよ。オトーサンの子育ての方針でして。贅沢はしてません。」
もり香「あるぇ?」
と、眉間にしわを寄せて首をかしげる。
パパド「はい?」
ダメ女はそのダメな脳をフル回転させ、話のつじつまが合う解答をさがす。
もり香「あ!そうか。簡単なプロジェクトなんだ。1週間くらいでロボット1コ作れちゃうとか?」
メールを読み上げるパパド。
パパド「スケジュールは設計完了まで3年、実践投入可能なプロトタイプ建造まで4年、量産型完成まで5年、年間200機製造可能な生産ラインの稼動まで6年。投入される予算は概算で・・ええと、日本円だと・・」
もり香「6・・年・・」
ごくりと生唾を飲み込む。
パパド「・・1兆円を少し超える感じですね。」
もり香「ふざけるぅなああああっっ!!」
ワタシ「きゃっ!きゃっ!」
荒れるもり香を見て大喜びでじたばた暴れるワタシちゃんが、膝から落ちないように抱きかかえるパパド。
パパド「ぼくが作業できないので、ワタシを楽しませるのはやめてください。」
もり香「そんなビッグプロジェクトの責任者が何で、あんたみたいな年端もいかぬ子供なんだ。」
パパド「ああ~、テー家は徹底した能力主義だから、年齢は関係ないんですよねぇ。」
もり香「年齢関係ないにしても、限度があるだろ。」
パパド「まぁそれが、テー家のいいところでもあり。」
もり香「いいところでもあり。」
パパド「悪いところでもある。」
もり香「ほんとだよ!ばかやろぉ!!」
と、突き出された拳に握られている、トマトジュースの紙パック。
それを目で追うパパド。
パパド「ええーと、ちょっと本題から外れてもいいですか?」
もり香「何?」
パパド「ぼくわ・・」
もり香「ぼくわ?」
パパド「リコピンと」
自分の握っているトメィトォジュースの紙パックを見る。
”リコピンたっぷり”って書いてある、これのことか。
もり香「リコピンと?」
パパド「デコピンの違いが判りません。」
もり香「wwww」
そんなわけねーだろ。
パパドのおでこを人差し指でにぢにぢする。
パパド「wwwきゃっ、きゃっ!」
もり香「wwwwwwww」
っとに可愛いんだよ!この犬耳ちびすけ。
なにやら大変満足した状態でぼすっとクッションに尻を沈め、トマトジュースを飲み干すもり香。
長いメールを読み進めるパパド。
パパド「えー・・」
と、かるくがっかり顔。
もり香「どうした?」
パパド「送ったイラストの飛行形態だと揚力が足らないから、形状を変えたいって課題があがってまして。えーっ(不満)。」
もり香「変えればいいじゃん。」
パパド「オリジナルのかっこいいプロポーションを崩したくないなぁ。大剣型の足を折って主翼にしたあの姿が良いのに。」
もり香「あんた、絶対、プラモデル感覚だろ?」
パパド「ちなみに本件は高度な軍事機密ですので、他言無用でお願いしますよ。口の軽いもり香さん。」
もり香「(不服そうに)こんなもん私の認識では1分の1プラモデルだ。」
テレビ台のプラモを指で突っつく。
兵器開発を趣味の一種などと言われ、むっとする少年。
パパド「だから、1分の1って頭の悪い分数表現はやめてください。頼みますよ。」
まぁたすぐ喧嘩する、おめぇら2人わ。
メールを最後まで読み終わり、スクロールさせ、文章の先頭に戻す。
パパド「はぁ・・」
もり香「さっきもそこいらへんを読んで、ため息をついていたな。」
パパド「ええ。プロジェクトのトップであるが故、スタッフの任命をしなければいけないのですが、人生経験の少ない悲しさで、人脈がなくって。」
マウスカーソルで必要書類の”体制表”(テー語)と書かれた辺りをぐりぐりと示す。
もり香「じゃあ辞退すればいいだろう?のほほーんと待っていれば、6年後には出来上がるんだろう?」
パパド「いやあ、ぼくがいないと。」
もり香「ってゆーか、あんたに何ができるんだ?ちびすけ。」
パパド「起案段階で形状変更の課題が挙がっているようでは、何ができてくるかわかったものではありませんよ。だれかこだわりのある者が、キッと睨みを利かせていないと。かっこいいパラメリオンにはならない。」
もり香「本当にプラモデル感覚だな。版権を考えると、似せないほうがいいだろう?」
パパド「え?版権?げ、」
目、まん丸。
もり香「考えていなかったのか?版権。」
パパド「い、色が違うから別物アル。」
もり香「おめーな、あの国の人たちが全員そんな奴だと思ったら、大間違いの大失礼だからな。」
すると、どこからともなく声が聞こえてくる。
「話は全部、聞かせてもらいました。」
パパド「げ、この声は。」
もり香「まぁた、潜んでいたのか。」(ため息)
文月なな。
音も無く二人の後ろに忍び寄り、襟首あたりに向かってささやく。
なな「私にお任せください。」
もり香・パパド「ぎょぇあああっっ!!」
意表をつかれ、二人同時に飛びのいた。
パパドはワタシちゃんを前にかざす(妹シールド)。
もり香「パッパパパ、パパドっ!ぐ、軍事機密!きっ、ききき聞かれたわよっ!!」
パパド「テッテテテ、テー家では、変態は地球の人口69億人の一人に数えていませんからっっ!!」
取り乱して、たまたま頭にあった言葉をそのまま口走ってしまっている。
なな「二人とも、まずは落ち着いてください。どうぞ粗茶ですが。」
テーブルの反対側に座り、お茶を入れて二人に差し出した。
自身のお茶もいれて一口飲んだ。
そしてじとっとお茶の水面を見る。
なな「次に来る時、我が家のお茶をお持ちします。よかったら、飲んでください。」
もり香「安物でも、自分の稼いだ金で買ったお茶が、一番うまいんだよ。わかったか小娘。」
パパド「ところで変態、何か用か?用が無いなら帰れ。用があっても帰れ。」
なな「パパドさんはスタッフ任命の件でお悩みなのでしょう?」
パパド「ええ。ただ、変態には関係ないことですけどね。」
なな「私に任せてください。組織作りのノウハウでしたら、私を頼ってください。」
もり香「プッシュしてくるわね。」
パパド「相変わらず人の話無視して進行するな・・関係無いつったろう?そんなにやりたいのか?」
なな「え?”じゃあ任せた”?わかりました。大船に乗ったつもりでいてください。版権の問題も解決しましょう。」
パパド「誰が言った?何故、勝手に話を進める?正直、藁をも掴む気持ちではある。しかし、変態の差し出した手を掴むとなると勇気がいるな。どうしようかな・・」
ななが椅子を引きずりながら、パパドの横にやってくる。
なな「ところで。」
パパド「な、なんだ。変態は離れていてくれませんかね?怖いんですけど。」
パパドの目の前に携帯電話のストラップをぶらぶらさせる。
なな「テー家の技術で、これは動かせるのでしょうか?」
彼女が愛するキャラクター、PASMOのピンク色のロボット。
もり香「・・・」
パパド「・・・」
なな「技術を提供いただければ、資金は文月家が出します。」
パパド「なるほど。そういうことか・・」
なな「え?できる!そうですか。では大きさは愛で易い50cm、重量は4kgでお願いします。外装はジュラルミン・・継ぎ目は段差無しで。話し言葉は語尾に”mo”をつけてください。CVは金元寿子。性格は好奇心旺盛で物怖じせず、なんにでも首を突っ込むのだけど・・」
もり香「溜め込んでるなぁ・・」