宇宙人は柴犬と

SFコメディー小説です。

第37:正月はちょっと太りそうです 3/3

2011-01-02 23:40:36 | 日記
【疑惑】
チャンネル√4 銚子倉庫 最下階 チャイの部屋。
ななからの電話にどう答えるべきか、思いを巡らす瀬瀬やすひろ博士。
そこにドアをノックする音。
ウルト「瀬瀬博士!」
これは好都合。
返答を考える時間が稼げる。
やっさん「ななちゃん、ちょっと待ってくれるかな?外で誰かが呼んでいるみたいなんだぁ。」
なな「ええ、ご用事済むまでお待ち申し上げます。」
やっさん「悪いね。」
スマートフォンのブラックベリーを耳から離す。
続けてドアに向かって叫ぶ。
やっさん「どなたですかぁー。」
ウルト「宇宙警備隊のウルトです。」
やっさん「宇宙警備隊・・ってことは味方でいいんだね?」
ウルト「そうです。今から他の場所に残っている敵を攻撃しに行きます。」
この場で敵を迎え撃つのは、ウルトにとって不利だ。
破壊力の有る光線技を使いにくい。
チャイの部屋を破壊してしまう恐れがあるからだ。
体術ではテー家騎士のほうが一枚上手だと認めざるを得ない。
阿仁木がいない今、手に獲物を持った彼等が3人もくればお手上げだ。
チャイの部屋から離れた場所で戦いたい。
勝機は光線技にしかない。
やっさん「ふーん、じゃあ、そこにいた敵は全部やっつけたんだ。」
ウルト「はい。阿仁木さんが・・」
”命と引換に”と言う言葉を言えなかった。
やっさん「この部屋の前には阿仁木さんが残るんだろう?」
ウルト「いえ阿仁木さんはいません。」
やっさん「いない?」
ウルト「はい。部屋の前がガラ空きになるので、天井と床を破壊して侵入経路を潰してゆきます。それを伝えたかったのです。」
つまりは生き埋めかよ。
やっさん「wwwちゃんと回収しに戻ってきてね。」
ウルト「万が一の時はチャンネル√4の仲間に電話をしてください。」
やっさん「えええ、おいおい。」
どぉん!!
ガガガン!キンッ
ウルトは早速やってしまったようだ。
天井から落ちてきた瓦礫が外側からドアに当り、内側にベコリと凹んだ。
やっさん「あーぁwww」
ブラックベリーを耳に当てた。
文月ななを待たせている。
電話の続きだ。
やっさん「お待たせ。」
なな「大きな音がしたようですが。何かあったのですか?」
やっさん「ウルトって奴が天井を壊して、入り口を封鎖したww」
宇宙警備隊関係者の文月ななはウルトをよく知っている。
なな「おやおや、援軍が必要ですか?」(棒読み)
やっさん「いや、部屋の前の敵をやっつけて攻勢に出るって言っていたから、順調なのでわぁ~?」
なな「ほうほう、それはなにより。」(棒読み)
やっさん「・・で・・ガパオの件で質問されていたよね?」
なな「そうですね。」
やっさん「ガパオはねぇ、ぼくがその行動をコントロールしているのです。」
なな「なんとなんと。これは驚きました。理由を教えていただけますか?」(棒読み)
やっさん「ガパオは自分で体を変えたんだけど、ちょっとミスったようでねww。彼が使ったのはこの施設の設備で、ぼくのいる部屋のPCからもシステムに入れたんだ。で、ログを見たら大量のエラーがさww。」
なな「あらあら、それは大変。」(棒読み)
やっさん「まぁ。脳の情報は膨大だからそれでも、おおむね大丈夫なんだけど・・」
さぁて、ここから嘘を言う。
怪しまれぬようにしないと。
声の調子も話の流れも、変えずに自然に・・
やっさん「・・一時的にちょっと不安定でね。発作・・のような感じになっちゃったんだようww。で、ぼくが彼・・今は彼女かな?・・の脳にリモートで入って修復しつつ作戦を遂行させているのさ。」
なな「・・・」
やっさん「・・・」
さて、納得してもらえただろうか?
なな「もう2つ、質問しても良いですか?」
やっさん「なにww。」
なな「ガパオさんをコントロール中とおっしゃいましたが、ひょっとして私の電話はお邪魔でしたか?」
やっさん「いーやぁ、緊急の作業はとっくに済んでいるからね。様子を見ながらぼちぼちと残りの作業を始末していたところさ。」
なな「安心しました。では最後に・・」
やっさん「・・」
なな「・・ガパオさんの脳の回復作業が完了してから、作戦に参加していただいても良かったのでは?」
やっさん「それでは作戦に間に合わないかもしれないだろ?彼は作戦に参加するために銚子から戻ってきたからね。役立たずで終わるのもかわいそうだし・・まぁ・・ちょっと手を貸してあげたって、ところかな。」
なな「なるほど。」
のてっと、何かひっかかる口調の”なるほど”だな。
やっさん「どうかしたかい?」
なな「いいえ、瀬瀬博士は意外と人情の厚いお方だったのだなと思いまして。有難うございました。それでは失礼します。」
電話は切れた。
やっさん「ふうっ」
文月なな・・あの頭の切れ、本当に中学生か?
いやな質問をズバリ聞いてきた。
特に二つ目は、ぼくがガパオを私用で使っているかを見極めるものだ。
ぼくの説明・・スジは通っているはずだが、ごまかしきれたか自身は無いな。
やっさん「まぁ・・やっちゃったもの勝ちって感じかな?」
気がつかれる前に、目的を達成しよう。
世界を変えてしまおう。

ディZ2ーランド。
一般人の避難を完了したテー家騎士の精鋭たちが戦列に復帰した。
狼頭王と8人の騎士が並ぶ姿は圧巻。
プレッシャーが突風のように殴りつけてくる。
チャンネル√4陣営に焦りの色。
そして騎士団の横にちょこんと並んじゃっている、馬鹿バクテーのうっかりちゃっかりした立ち姿。
同じテー家騎士団のはずなのだが、どう見ても別物。
両者の間には種族的な壁が存在するように感じる。
ぴろウき「向こうも、色々な人間がいるってことだな。」
ここでヂェットがぴろウきに耳打ち。
ぴろウき「奇策だな。面白い、それでいこう。」
ヂェットの戦闘用ボディーの稼働時間は後1分少々。


※このロボット、なに?

第37:正月はちょっと太りそうです 1/3

2011-01-02 23:40:17 | 日記
宇宙人は柴犬と



第37:正月はちょっと太りそうです

【1点】
千葉県 チャンネル√4 銚子倉庫。
地下65m 最下階 チャイの部屋。
巨大な水槽に浮かぶ、1辺が1mほどの豆腐のごとき立方体。
人造生物、水槽のチャイだ。
人間の4倍の質量の脳を持つ。
脳に時間軸方向に透過性を与える機関を持つ・・平たく言うと、ほんの少しだが未来や過去を見聞きすることができる。
しかし、水槽のチャイに目や耳は無い。
その役目は少女のチャイが担う。
パソコンに例えるなら、水槽のチャイが本体で、少女のチャイがキーボードやマウス、モニターだ。
二人は一つ。
ガパオはチャイと同じサンプルから造られた人造生物で、チャイの弟にあたる。
今、水槽のチャイとガパオは精神と肉体を乗っ取られている。
脳に感染する高度なプログラムによって。
プログラムの作者は瀬瀬やすひろ博士。
この男だ。
やっさん「うぉえ、この部屋ゲロの匂いでたまらないなぁ。」
ゲロをかぶったソファーと瀕死の騎士を部屋の隅に寄せた。
ゲロの落ちた床のパネルも剥ぎ取って部屋の隅に投げた。
OA対応の2重床なので、簡単に剥ぎ取れる。
棚にビニールシートがあったので、広げて匂いの元にかぶせた。
これでちょっとはましになった。
スマートフォンのブラックベリーを手に取り難しい顔。
彼の遊びがうまくゆくか、これからの2分間にかかっている。
遊び?
彼は世界を創り変えるつもりなのだ。
創り変える?
彼の(おそらく高尚な)理想どおりに?
いーや。
ある意味理想と言えなくもないが違う。
ちょっと思いついてしまっただけだ、その世界を。
彼はある日、様々な矛盾を存在させ得る世界を思いついた。
その世界が良いとか悪いとか、彼には興味の無いこと。
その世界に対して、面白い数式を適応できる。
だから、ちょっとその世界をつくってみたかっただけ。
チャンネル√4の計画に偶然かかわり、世界を創り変える方法が存在することを知った。
彼は軽い気持ちで、その計画を利用することを思いついた。
彼は世界をかなりダイナミックに変えるつもりだ。
結果、失敗して世界を破壊してしまうかもしれない。
そんなことは気にしない。
彼には独特の世界観がある。
現在注目している世界も、パラレルワールドも同じ世界の塊の一部・・断片だと思っている。
世界の塊とは全ての可能性そのものであり、破壊された世界も当然すでに存在する。
そう、すべては既に存在するのだ。
彼は運命を信じてはいない。
しかし、いかなる結果も彼にとっては既に存在する必然なのだ。
彼は世界を作りかえる過程で、枝分かれさせパラレルワールドを作り出すことを考えている。
ある世界が破滅しても、別の世界で成功すればよい。
ちなみにここで言う成功とは、自分自身を己れが目指す世界の状態に存在させることを言う。
さて、今彼が目指す(創ってみたい)世界とは何か?
それは点だ。
大きさの無い1つの点。
無いのだが、無として存在する。
無限に分割でき、世界のどこにでも存在し、どこにも存在しない。
そのような世界は成立しうるのか?
自分の世界観が正しければ、言葉にできた以上、必ず存在するはずだ。
見てみたい。
歪んだ科学者の好奇心がうずく。
世界を創り変えることは無論、個人の力のみでは不可能な巨大事業だ。
ぴろウきはそれを理解し、実現のためにチャンネル√4を興した。
瀬瀬博士の計画はそれに感染し、発病するタイミングをうかがってる。
プロジェクトのウィルスだ。
そして恐ろしいことに、だれも瀬瀬博士の狂気を知らない。
少なくとも現状で、チャンネル√4の計画が成功した場合、瀬瀬博士の計画は必ず成功するだろう。
瀬瀬博士を止めるものは一人もいないのだ。

ディZ2ーランドではテー家騎士団とチャンネル√4が戦闘中。
狼頭王とヂェットが息が詰まるような緊張感でつばぜり合いを続けている。
流れるように構えを変え、相手を惑わせる技のヂェット。
一瞬の隙に拳を突き、あるいは脚を振り敵を粉砕する力の狼。
いかなる力もスピードも封じ込める技。
いかなる技もスピードも粉砕する力。
技の頂点と力の頂点の戦いだ。
ヂェットは宇宙警備隊の戦士。
文月ななとの潜入捜査でチャンネル√4の計画を暴いたが、地球の主要国政府との協議の末、その計画にのることに決定した。
計画-”未来を変えることで紐付く過去を変え、できるだけ多くの問題を無かった事にする”
驚いたのはチャンネル√4。
たしかに善意からの計画ではあったが、何をどう問題に感じるかは人によって異なり、問題を解決した結果”存在しなかったことになる人間”もでる。
地球連合の真意を疑ったが、宇宙船ドサ号乗組員誘拐事件などいくつかの大きな犯罪を行ってきた身では、その申し出を受け入れざるを得ない。
犯罪を見逃す交換条件のようなものだった。
いっそテー家にも計画を伝え狼頭王の協力を求める案も出たが、テー家を良く知る宇宙警備隊とチャンネル√4が否定した。
テー家は重要な技術を有し、非常に閉鎖的だ。
元はテー王国という国であったがクローン技術を捲る事件で国王一族が国を追われ、未開の惑星に逃げ落ちた。
国王を失った国はシーアムと名を変え、他国の援助をえて民主主義への改革を始めた。
テー家はシーアムから超ド級輸送船散歩する惑星を奪ったとして、シーアムとその支援国から攻撃されることになる。
しかしそれは表向きの理由で、真の狙いはテー家の有するクローン技術だ。
この技術の一部はチャンネル√4に盗み出され、天才瀬瀬博士により実用化された。
クローン技術を守るために国すら捨てる。
しかも、今回はドサ号事件や水槽のチャイ拉致など、テー家に対し重大な犯罪行為をはたらいている。
このうえで協力を求めるのは不可能なのだ。
そしてさらに・・これはクローン技術の真意に勘付いたぴろウきだけが知ることだが・・テー家の理想は独特であり、地球側のそれとは折り合いがつかない。
瀬瀬博士に操られているガパオはヂェットに加勢。
両手に持ったお斧を狼めがけて振り下ろす。
これを見たぴろウきCEOは違和感を覚える。
ガパオは正気を失っているはずだ。
見れば確かに、いつものガパオの表情ではない。
だのに、なぜ?チャンネル√4の作戦通りの正しい行動をする?
理由があるはずだ。
ぴろウき「なな坊、やっさんにガパオのことを相談してみてくれ。」
なな「申し訳ありませんが、怪人の操作で手がいっぱいです。電話をする余裕はありません。」
ぴろウき「頼む。(ガパオが)正気を失った理由を知りたい。体を変えたときの何らかの問題でなければ・・」
なな「ひょっとして、瀬瀬博士を疑っているのですか?」
ち、あいっかわらず鋭いな。
ぴろウき「俺は理由を知りたいだけだ。やっさんがガパオの脳に細工をする必要が無いことはわかっている。」
なな「そう。では怪人操作の優先度をやや下げ、電話をしてみましょう。」

再びチャンネル√4銚子倉庫最下階チャイの部屋。
瀬瀬博士のブラックベリーに着信。
ななからだ。
やっさん「・・・」
ガパオをリモコン操作するソフトを閉じたくないのだが、この電話に出ないわけにはいかない。
切ってしまっても、後で上手く言い訳すれば怪しまれはしないだろうが、この電話の用件が気になる。
やむなくソフトを閉じ通話。
やっさん「もしもし、ななちゃんだね?」
なな「はい、お忙しいところすいません。ちょっと聞きたいことがあるのですが、今、大丈夫でしょうか?」
やっさん「いいとも。で、聞きたいことって、なんだい?」
なな「実はガパオさんが正気を失っているようなのですが、原因もわからず対応をしかねています。体を変えたようなので、その影響でしょうか?」
瀬瀬博士は一つだけ、ななに聞きたいことがある。
”その質問は、CEOの命令で聞いているのかい?それとも君の独断かい?”
あのぴろウきが勘付いたのか確認したい。
しかし、この質問を口にすることはできない。
勘ぐられている事を気にするような質問をすれば、確実に怪しまれる。
判らないと言って切るか、上手い言葉でごまかすか。


※えっしーはその右腕にどれだけの画調を内臓しているのだ?オーダー毎に画調変えてくる絵描きは珍しいよ。