今日のセミナー

2008-02-16 12:27:11 | セミナー

Mangale, V. S., Hirokawa, K. E., Satyaki, P. R., Gokulchandran, N., Chikbire, S., Subramanian, L., Shetty, A. S., Martynoga, B., Paul, J., Mai, M. V., Li, Y., Flanagan, L. A., Tole, S. and Monuki, E. S. : Lhx2 selector activity specifies cortical identity and suppresses hippocampal organizer fate. Science, Vol.319, No.5861, 304-309, 2008
Abstract

海馬は記憶形成に重要な役割を担っていると考えられ、最も研究されている脳領域の一つであるが、その発生については未解明な点が多い。今回紹介した論文において著者らは、転写因子Lhx2が海馬を含む皮質の特異化 (specification) を細胞自律的 (cell-autonomous) に制御している事を示した。またLhx2 mutantにおいては、cortical hem類似組織の異所的出現に伴って海馬の異所的形成が認められた事からcortical hemが海馬発生におけるオーガナイザーorganizerであると考えられた。

著者らは以前にLhx2 KOの終脳形成におけるphenotypeを報告している。cortexの著名な縮小と皮質に隣接する組織、すなわちcortical hemとanti hem領域の拡大であった。その表現型はLhx2発現領域における前駆細胞の増殖、cortexのspecification defectといったcell aoutonomousな影響以外にも、cortexのspecificationを制御するcell non-autonomousな影響の可能性を示唆していた。今回著者らは、2つのLhx2 mutant mouseを用いる事によって、Lhx2のcell aoutonomousな機能と、Lhx2 mutantにおけるcell non-autonomousな影響を検証した。まず著者らはcortical hem fateの抑制制御には、E10.5までにLhx2が必要である事を、conditional KOを用いて示した。続いて著者らはLhx2 KOとwtとのchimeraを用いる事を用いた。Lhx2 KO由来の細胞はGFPおよびβ-Galによりlineageをtraceした。このmutantにおいてLhx2 KO由来の細胞はcortical hem, anti hemのマーカー発現を認めた事により、Lhx2はcell autonomousに、cortical hem およびanti hem fateの抑制制御をしていると考えられた。またLhx2 KO由来の細胞はclusterを形成する傾向が強いと考えられ、この性質はLhx2発現領域とcortical hemとの明瞭な境界形成に関わっていると考えられた。さらに驚いた事に、著者らは異所的cortical hem の形成に伴い、異所的海馬類似組織の形成を認めた。このことはcortical hemが海馬発生におけるorganizerであると結論付けている。

今回の研究により、今後検証されるであろう質問が生じる。
1)  organizerの機能を担っている分子は何であるか。おそらくWntやFGFなど様々な分子が候補にあげられるであろうが、これらの異所的発現によっって海馬が誘導されるかどうかは、非常に興味のあるところである。
2) 異所的に出現した海馬回路はどのようなものか?通常の海馬として機能しうるのだろうか?

今回の論文は、終脳とくに海馬の発生研究を進める上で重要なmilestoneになると思われた。
 


基礎配

2008-02-12 12:20:44 | 徒然
基礎配属の医学部3年生がやってきました。今年は6人(男4人,女2人)です。

自分たちの研究室は,定員よりもちょっと多い人が希望する程度には,人気があるらしいです。
これも,教授や准教授の人徳のたまものです。


……本心ですよ?

(北村)

今日のセミナー

2008-02-02 14:59:16 | セミナー

Bruel-Jungerman, E., Davis, S., Rampon, C. and Laroche, S. : Long-term potentiation enhances neurogenesis in the adult dentate gyrus. J. Neurosci., Vol.26, No.22, 5888-5893, 2006
Abstract

活動依存的なシナプス可塑性とニューロン新生は脳の可塑性の二つの形式である、それらは記憶の形成の間の神経ネットワークを再構築している機能に関与する。記憶形成において決定的な役割を演じると信じられているシナプス可塑性の形式としてよく特徴付けられている、興奮性シナプス伝達の長期増強(LTP)がin vivoの成体ラットの歯状回でneurogenesisの割合を調節しうるかどうかをわれわれは検討した。最初に、内側貫通線維-顆粒細胞シナプスでのLTPの誘発は歯状回の前駆細胞の増殖を刺激し、結果として、大多数の生存している新生細胞の長期の持続をもたらすことを示す。次に、 LTPが生存にもたらす効果を検討するための手順を用いると、LTPの誘発は1-2week-oldの歯状回の細胞の生存を促進することを示す。LTPがneuronalな分化に影響を及ぼしたという事例は見られなかった。最後に、1-week-oldニューロンではなく、2-week-oldニューロンのかなりの割合で可塑性に関係する転写因子Zif268の発現をLTPは誘発することを示す、このことはLTPの生存促進の効果が新生細胞においてZif268を媒介したLTPの誘発の非存在下で観察されたことを示唆する。われわれの結果は、以下のことを示している、in vivoの歯状回で電気的に誘導されたLTPは細胞的/分子的な環境を与えるということである、この環境は増殖と成体で発生したニューロンの生存の両方を支持する。


adult neurogenesisで、ニューロンの数が増えるときの原因として①ニューロンを作る前駆体細胞の増加、②ニューロンへの分化の促進、③生き残る細胞数の増加、④ ①-③の複合、が考えられ、LTPを誘導したところ①と③がみられました、という論文でした。

ニューロンの数が増えると行動上の変化として何が見える、何か見えるのかなーと、その後のことに関してもおもしろそうです。

知識ほぼゼロの状態から読んだので、この論文から多くの知識を得ることができました。この得た知識をちゃんと記憶として残しておきたいと思います。
記憶…、記憶…、がんばれ自分のLTP。