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モーツァルトの音楽1( W. A. Mozart - Laudate Dominum, KV 339 - Patricia Janečková - Sopran)

2021年05月16日 | 音楽
以前にモーツアルトの音楽でアヴェベルムコルプスより美しいと思った曲を共有の為に紹介しておきます。
コロナ騒動で少しでも気持ちが明るくなれますよう願っております。

LVHF 2017: W. A. Mozart - Laudate Dominum, KV 339 - Patricia Janečková - Sopran



小説「Obralmの風」



「進君から聞いたけど、今の教育現場って大変みたいやね」
明子の顔が急に曇り始めたのを見て、岳は彼女が今まで明るく接しようと無理していたのだと感じた。
「そうね・・・、でも私のことはいいけど岳君の方が大変やないの?」
「ああ、こちらの話も進君から耳に入ってるんやね」
「進から病気が末期やと聞いて、どんな顔してお会いしたらええのか悩んでたのよ」
「そんなことで余計に悩まんといて、これでも自分なりに運命を受け止めて気楽にやっているつもりやから」
「のんきなところは昔と変わっていないわね」
「そうかな・・・」
曇りかけていた彼女の表情が少し和らいだように思える。
「僕はねえ、年齢もさることながら病気の告知を受けてから何か全ての物に夕日が当たっているように見えるんや」
「全てのものに夕日?いったいどういうこと?」
「人生の旺盛な頃には気が付きもせんかったことが終焉を近くに感じると、色々な物が浮きだって見えてその物自体の存在感が理解出来るっていうのかなあ。うまく説明出来んけど」
子供の頃から勘が鋭かった彼女は岳の言葉をかみ締めるかのように何度も頷いた。
「何か辛いわね」
岳は重くなりかけた空気に耐えかねて明るく笑って見せた。
「アハハ、二人とも何十年ぶりに再会したのに暗い問題を抱え込んで大変やなあ」
「岳君たらまるで人事ね・・・」
「話を戻すけど、そんな感じで世の中が見えるような気がするんで怖い物がなくなって来たよ。何やったら僕がクレームを言う輩(やから)に会って諭してやろうか」
「あ、ありがとう。その気持ちだけで嬉しいわ」
彼女は慌てて岳を制した。
「学校も用心棒ではないけど、世の中の筋を説いて父兄の甘えた根性を正す人材がいるんやない?昔から教育現場は聖職とされていたんやから、顧客相手の商売のように父兄の顔色を窺うような姿勢はよくないと思うよ」
少なからずとも彼女の思わんとすることを岳が代弁したのか、相槌打つ明子の表情に活気が現れた。
「ありがとう岳くん、少し元気が出てきたわ」
窓から流れ入る緑風に少し冷ややかさが加わり、明子は窓を閉めに立った。
「ああ、長居をしてしもうた。今日は楽しかったよ、またお邪魔してもええかな」
岳は彼女宅を辞することにした。
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